2016年10月31日月曜日

ファシリテーションの技法:ミラノ派家族療法を応用する(番外編4)


                                                                                                                    
 自己啓発とかしょぼいコーチングって、

 あなたが頑張ればなんとかなります!
     この方法だけ身に付ければ成功します!

 って、直線的因果関係だけで考えているのだよなぁ〜(笑)。

 <ひとりごと>



直線的因果 vs.円環的因果

  備忘録として書いておく。

家族療法マニュアル

 英国リーズ大学のサイトに「Systemic Family Therapy Manual」[1]がリンクされていた。家族療法の要点がまとめてあるマニュアルだ。。 

ちょっとパラパラ読んでみた。

 対象範囲となっている技法は、ミラノ派、それとミラノ派以降の技法(ナラティブ療法を含む)となっている。B.C./ A.D. ではないが、これはミラノ派それ以降に技法的な飛躍があった、という含みなのだろう

 最初に気がつくのは、仮に対象となるクライアントが一人だったとしても、問題はこの人を取り巻く人間関係で起きているわけであり、対象を人間関係を含めた組織におく、とかなり広く取られていることだ。

問題の捉え方自体が問題

   仕事でも家庭でも、悩みあるいは問題のほとんどは人間関係からもたらされる。これはある意味正しい。また、システム思考[2]が出来ない人は物事を《直線的因果関係》で捉えてしまう。つまり、ほとんどの問題は、人間関係を直線的因果関係で捉えていることから起きているように思えてくる。

 例えば、責任感が強い人は、原因を自分に求める「自分がしっかりしなければ」とか「もっと能力を身につけなければ」と、一人で頑張るといった具合だ。あるいは、個人技の能力開発に走る。自己啓発に走る「意識高い系」の人も大体こんな感じだ。コーチングでももっぱら自分の能力だけを高めることだけが目的となる。

 逆に、原因を外に求める人は、「あいつのせいだ!」「あいつさえいなければ!」と、いつも不平不満を表明するか、心に秘めてある日突然爆発する、あるいは別の場所で羽目を外してストレス発散、という感じになるだろう。もちろん、これが芸術とかに向けば凄い作品が出来るのかもしれないが。

 さて、前者は、そう悪くない感じだが、やり方が壁にまともにぶつかっていくような方向のように思える。もちろん、後者も悪くはないが破滅的な感じがする。

 結局、低い視点であなたはどちらのタイプ?とタイプ分けのようなことを尋ねても意味がないのだろう。理由は、繰り返しになるが、どちらも物事を《直線的因果関係》で捉えているからだ。つまり、五十歩百歩ということだ。

 で、「一人で頑張らない」でも「まわりに当たり散らさない」でもない、第三の選択肢はないのか?

問題の捉え方自体を変える

 この一つの答えが、《円環的因果関係: Circular Causation》に問題の捉え方を変えることのように思える。人類学者グレゴリー・ベイトソンの受け売りだが(笑)。[3]ベイトソン風に言うと《認識論:Epistemology》を変えろ、ということになるのだろう。

 仮にクライアントが一人だったとしても、この人を取り巻く関係を扱う。

 「一人で頑張る人」は、組織としてどうやって能力を高めるのか?組織としてどう問題を解決するのか?単純に無生物的な機能と役割に還元しない方法を考えることになるだろう。また「まわりに当たり散らす人」は、こういった気持ちを受け止めて、これをどう変化や創造の源泉とするのか?と物事の関係性を考えることから始めるだろう。

 で、具体的なツールは何か?というと円環的質問ということになる。もちろん、何か困った時はクライアントが自分で自分に質問できるような感じにしてあげるとよいだろう。

 冒頭で紹介したマニュアルには以下のような円環的質問が紹介されている、(質問は適当に改編)

 
①相手の視点に立って、振る舞い、心身状態を推測する質問

 ・上司はどのような気持ちなのだろうか?
 ・顧客にどのような提案をしたら驚かせることができるのだろうか?
 ・顧客があなたにクレームを言っている時、どのような気持ちなのだろうか?
 ・◯◯さんは、これについてどのような考えを持っているのだろうか?

②別の視点、切り口を提供する質問
 
 ・同僚は、あなたの仕事っぷりをどう考えているだろうか?
 ・社長に直訴したら、同僚は何というだろうか?
 ・あなたの出世を同期入社の社員たちはどう思っているだろうか?

③関係についての質問(直接的、間接的)

 ・同僚の◯◯と折り合いがよくないのか?
 ・同僚の◯◯と口論していたのを見た上司はどう思うと思うか?
 ・同僚の△△と仲良く仕事をしているのを同僚はどう思うと思うか?

④円環的な定義

 ・同僚の◯◯と言い争いになって△△が止めに入って怒りはじめたら◯◯は
  どうすると思うか?

⑤可能性のある未来

 ・五年後はどうなっていると思うか?
 ・朝起きて奇跡が起きて問題がなくなっているとするとどう感じるか?
 ・奇跡が起きた状態で会社にいったら◯◯さんとの関係はどう変わっている 
  か?

⑥ランク付け

 ・顧客からうちのチーム感謝のコトバをもらった時に一番喜んでいるのは誰
  か?
  次は?
 ・顧客とのトラブルが起こった時に一番うろたえているのは誰かか?
  次は?
 ・営業と技術担当が言い争いをしている時、その関係と1〜10の段階のいく
  つか?



 もっとも、これは普通にやられていること、なのかもしれない。逆にいうと、直線的因果関係の視点にたって「これだけやっておけば大丈夫」とか「これ以外に特効薬はない」のようなことを言い始めたら要注意なのだろう。社会科学的なことは、自然科学と違って因果関係がどこにあるか?はっきりしないことが多い。

 つまり、人間関係はビルから鉄球を落とせば運動方程式に即して自由落下する、というように直線的因果関係では上手くいかない。

 逆に登場人物の人間関係をいつも観察して、色々やってみる。上手くいっていることをもっとやる、ということになるのだろう。少なくとも、登場人物の人間関係をシステムとして考える。これはニクラス・ルーマンが社会システム論でコミュニケーションをオートポイエーシスの構成素と規定して考えたことと同じような感じもするが、これがまず出発点となる、ということだろう。

(つづく)

文献
[1]https://medhealth.leeds.ac.uk/download/665/leeds_systemic_family_therapy_manual
[2]http://ori-japan.blogspot.jp/2013/10/blog-post_16.html

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