2017年2月12日日曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 43日目


                                                                                                                            
 あ・うんの呼吸、

 「あ」は始まりを合わせ「うん」は終わりを合わせる。

  そして、エリクソン独特のグルーヴ感にのせる(笑)。

 <ひとりごと>



はじめに

  備忘録として書いておく。


 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1]を読んでいる。読み方のルールはここ。それで、43日目の進捗などを書いておきたい。

エリクソンはメモ魔だった?

 論文を読んでいて推測されることだ。エリクソンは心理学者には人類学を、反対に人類学者には心理学を学ぶように勧めていた。[2] つまり、エリクソンは、日常的に人を観察しメモし、また、人類学者がつくる分類カードのようなものをつくっていたのではないか?と推測される。このおかげで現在でも膨大なメモや論文を読むことができる。個人的に、手書き用のメモをポケットを常備しているが、ヒラメキを取り逃がさないため、また考察を深めるためにはメモは重要だと考えている。

エリクソンは録音マニアだった?

 時代を考慮してもエリクソンの録音が多く残っている。1960年代以前だと機材はオープンリール式のデッキで映像の場合は16mmフィルムになるだろう。現在と比較して機材が高額で取り回しが面倒なのは言うまでもない。この機材で、講演の内容やデモンストレーションを記録している。おかげで、エリクソンの暗黙知の一部を聞きながら観察できる。 現在だと、スマホなどを使って簡単に録音、録画することが可能だ。だが当時の状況を考慮すると何らかの意図があって録音していると思う。

エリクソンはメタ認知していた?

 個人的には、メモや録音(録画)の目的はメタ認知だと思っている。[3]  つまり、エリクソンも自分の講演やデモンストレーションの内容をメタ認知して振り返っていたのではないか?と推測される。自分の言動を録音や録画を視聴することはメタ認知を鍛え、技法を洗練する訓練にはなると考える。

トランス誘導における呼吸のリズム
 
 今日は、「Respiratory Rhythm in Trance Induction」から。要はトランス誘導における呼吸のリズムという話だ。また、これは正式な論文ではなく、エリクソンのメモ書きをまとめた文章だ。だからまだ帰納されていない素の文章だ。

 これについて、エリクソンの5つのトピックが登場する。まず、ここから感じられることは、「我以外皆我師」つまり自分以外は誰でも、あるいは何事も学ぶための先生であるという姿勢が感じられるのが面白いところだ。権威のある先生からも学ぶ、年端の行かない子どもからも学ぶ。兎に角学ぶ、これがエリクソンのスタイルなのだろう。

 エリクソンは子どもの頃からの疑問をずっと継続的に研究している。まさに、三つ子の魂百までも、というわけだ。ここでの興味とは「呼吸とリズム」ということになる。もちろん、これは相手がある話であり。これは、心ー体ー場の相互作用からコミュケーションとメタ・コミュケーションの話に広がっていくことになる。

#1 ウィスコンシン大時代

  1920年代のウィスコンシン大入学直後の話。心理学を教えていたジョセフ・ジャストロゥ教授の話。エリクソンに「音楽とリズム」の重要性を気づかせてくれた。また、エリクソンの可聴範囲の測定を行った。

#2ウォーセスター病院時代

  1930年代の病院勤務の時代。エドワード・スピアーという名前の言語学者、イェール大の最上級教授と出会う。彼は、バイオリンが趣味でレコードコレクターでもある。エリクソンに不整脈と難聴を自覚しているかと尋ねる。エリクソンは自覚している。また、エリクソンのしゃべり方のリズムがアフリカのある部族の民族音楽のリズムに似ていることを指摘する。また、1950年代に2人の人類学者をクライアントにする。それぞれの別々に、エリクソンのしゃべり方のリズムがブラジルのインディオ、もうひとりはペルーのインディアの民族音楽のリズムに似ていると指摘する。

#3子どものクライアントから

 5歳の子どものおねしょを治療する。彼が8歳になった時に、母の子守唄は Sleepのリズムだが、エリクソンのしゃべりは Sweep (掃く)リズムだと指摘される。

#4 娘のベティー・アリス・エリクソンから

   エリクソンには4人の娘がいるが前妻との間に生まれた次女のベティー・アリスからの指摘。バーミンガム・ミシガン医療協会で催眠のデモを行った時、聴衆はエリクソンによって引き出される腕カタレプシーの現象のみ注目が当たっていた。しかし、ベティー・アリスは、抵抗の強いデモの被験者と暗黙的に「呼吸合わせ」をしていたことを指摘する。

#5 2人の内科医とそれぞれの娘

 要点は、大人には見えないものが子どもには見えるという話だ。エリクソンのトランス誘導のデモを録音した2人の内科医が居る。彼らはこの録音を繰り返し聞いてエリクソンの秘密を探ろうとするがイマイチよくわからない。そこで、それを娘が聞いているとそれぞれの娘は、エリクソンの声のリズム突然変わってゆっくりになっていることを指摘する。要は、大人が分からなかったものが子どもには分かったという「王様は裸だ」のような興味深い事例だ。これから、その内科医らは呼吸やリズムに注目するようになる。

考察
 
 筆者の考察を少し書いておきたい。

   音楽の要素は、①メロディー②ハーモニー③リズム④ダイナミクスだと言われている。[4] もちろん、ここで特にリズムを気にすることもあるだろう。ただし、このリズムの裏にある要素として呼吸を気にするのは、ボーカリストか管楽器奏者くらいかもしれない。

 メトロノームとシンクロさせながら、Saxのロングローンとスケール練習をすると心身状態が変わってくるのもそのとおりだ。また、演奏で他のメンバーと呼吸が合って、キメが決まると、メンバーがひとつの有機体であるかのようななんとも言えない気持ちになる。

 その意味で、呼吸というのは重要な要素のように思われる。また、相手が居る場合、呼吸を合わせるというようなことが重要になるのだろう。結局、色々なことは相手あっての話というサイバネティクなことになるからだ。米国のある学者が1980年代、日本の製造業の強みの秘密は朝一緒にラジオ体操することだという話があった。これは案外バカに出来ないことなのかもしれない。

 余談だが、現在、日本のトップドラマーのひとりとなっている某氏が中学の頃から剣道や空手も文脈をひいて呼吸の重要性についてのウンチクを垂れていたことを思い出した(笑)。


2月12日の進捗、344ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 13.0%) 

Volume 1  : The Nature of Hypnosis and Suggestion

Respiratory Rhythm in Trance Induction: The Role of Minimal Sensory Cues in Normal and Trance Behavior Milton H. Erickson Unpublished fragment, circa 1960’s. 




(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html
[2]http://ori-japan.blogspot.jp/2016/08/blog-post_8.html
[3]http://ori-japan.blogspot.jp/2011/10/blog-post_04.html
[4]http://ori-japan.blogspot.jp/2011/11/blog-post_08.html

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