2017年2月13日月曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 44日目


                                                                                                                            
 催眠にかかったふりをする

  偽の被験者も被験者のうち(笑)。

 差異を比較することで何らかの情報は得られる。


 <ひとりごと>



はじめに

  備忘録として書いておく。


 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1]を読んでいる。読み方のルールはここ。それで、44日目の進捗などを書いておきたい。

 それで、今日は2つのメモ書き。
 

間接的トランス誘導
 
 今日は、「Indirect Induction of Trance」から。

 これはメモ書きなのだが、最後まで書くとネタバレになるので途中まで書いておく。

 1923年にエリクソンがウィスコンシン大の学生だったころに行った催眠実証実験についてのスピンアウトのようなお話のメモ書き。

 エリクソンが実験中に、催眠に異常に興味を示す、実験心理学を専攻する学生が近づいてくる。彼は、一緒に特別な研究をしないかと提案する。内容は、トレーニングによって催眠現象を示すことの分かった被験者の夢遊病的な振る舞いを比較研究するというもの。エリクソンには被験者のトランス誘導をお願いし、エリクソンもこれを受けた。

 エリクソンの元に、被験者の大学がやってくる、彼は大学3年で文学専攻だと紹介される。非常に賢く感受性の高い学生であることが分かっている。この時、先に一緒に実験をしようと提案した学生がエリクソンに封のされた封筒を渡す。

 実験が開始される。被験者が非常に有能で、すべての実験を完了する。先の学生からのリクエストで、被験者をトランス状態にし、自動書記による子どもの頃の印象を3文ほど書く実験というのを行う。ここでは、書いた後に健忘の催眠現象を引き出し、書いたことは忘れてもらうことを想定している。

 実験が終了し。被験者に催眠状態として、一般的な催眠現象の感想と特定の振る舞いについて質問される。これは先の健忘(記憶喪失)の現象によって、(予定されたとおりに)失敗する。
 
 また、エリクソンは被験者が催眠にかかったふりをしていないかどうかの質問を行う。ここで、学生から封筒を開けるように指示される。封筒を開けると、被験者のサインと自動書記で書いた内容の3つの文が書かれており。実は被験者は演劇専攻の学生で、単に催眠にかかったふりをしていたと告白される。

 エリクソンは学生と被験者にまんまと騙されたことになったが、ある意味これに非常に冷静に対応する。ここで、この学生の提案で、施術をする実験者は騙せたので、他の被験者を騙すことができるか?を検証しませんか?と提案される。

 エリクソンはこの提案にのって、役者としてもう一人を探し、学生と2名の役者という陣容で他の6名の被験者を催眠にかかったふりをすることで欺くことができるのか?を検証することを始める。ざっとこんな感じのあらすじだ。

 そこで実験を始めることになるのだが・・・・・・・・・

 とこれを膨らませてラノベくらい書けるような内容になっている。・・・・オチはあるのだがここでは書かない(笑)。

 ただ、面白いのはエリクソンはこの時の模様を淡々と非常に論理的に記録している点だろう。ある意味、エリクソンは自分の事もメタの視点で眺めている。


声の調子と記憶
 
 二本目は、「Notes on Minimal Cues in Vocal Dynamics and Memory」のさわり。これは、正式な論文ではなく、単なる注意書き。

 内容は、エリクソンの中西部なまり(Flat-A sound)の話し方についての話題。

 メモはいつか役立つ?

   エリクソンは、大学時代の教官であるクラーク・ハル博士に従い、実践・観察したことをメモに残す、と書いている。また、これはいつ役に立つのか分からないけれども、とりあえず残しておく、とも。つまり、エリクソンは「すぐに何かに役立つ」という小さな目的を保留して、観察し気づいたことを取り敢えずメモしているスタイルのように思われる。これはスティーブ・ジョブズの「Connecting dots」ではないが、やがて、点がつながって線になり、そして面を構成し、そして立体になることが将来振り返った時に分かる、という指向で仕事をしているように思われる。

 それで、エリクソンはキャビネットから白と黄色それぞれ、メモの書かれた紙を取り出す。ここで、エリクソンは色盲で白と黄色が見分けられたのだろうか?とか、見分けられなかったにしても、この白と黄色というのが何かのメタファーになっているのではないか?だとすると白と黄色はそれぞれ何を示唆しているのか?と個人的には思いを巡らせる。

 子どもの頃のメタファーは何を意味する?

 エリクソンは、時折、自分が子どもの頃の話をする。だからその内容については、誰でも理解できる。しかし、このメタファーが何を示唆しているのか?を考えると非常に興味深い。ここでも子どもの頃の話をしている。エリクソンは納屋でアイディアを思いついた。それは、ハンマーと斧が必要なアイディアだった。これを取りにバックボーチに行った。しかし、エリクソンは一体何のアイディアを思いついたのか忘れてしまった。再度、納屋に戻った。そうしたらそれがドアに関連したものだったと思い出した。4コマ漫画のネタのような話だが、エリクソンは読者に何かに気づいてもらいたくてこれを持ってきているのだろう。

 1930-34年のメモ

 1930-34年 にエリクソンはマサチューセッツ州のウォーセスター州立病院のリサーチ部門に勤務した。ここでの話題は方言、ハーヴァード、MITのあるケンブリッジあたりにやって来たエリクソンは中西部なまり話で話す。日本でいったら関西人が就職で東京にやってきて、ちょっと妙な標準語を話すようになる、のような話だ。

 同僚で催眠の被験者でもある同僚の女性がいる。彼女は言語学者の娘で自分でも今博論を書いている。彼女は、エリクソンのなまりが気になると言っていたが途中からエリクソンのしゃべり方を面白がるようになる。ただし、彼女の信念は被験者の指示は「明確で多重にならない一意の解釈」であることが大切だと考えている。例えば、かならず Yes, No,分からないで答えられるような質問だ。余談だが、後年、一つの用語に多重の意味を持たせるように話すスタイルになるが、ここではまず学術的な正確さという視点から議論されていることになる。

 エリクソンは1937年の学会ではまた中西部なまりに戻っていたことを指摘されるが、その後は録音で聞いてもあまり気にならないような状態になっている。

・・・・・・・・・・

考察
 
 エリクソンの論文の中には、エリクソン個人のエピソードが語られていることが多い。たまに文脈に関係なく違う話が出てきたりもする。普段だと他愛もない話として読み飛ばしてしまいそうだが、おそらく、これがなんらかのメタファーになっているのだろうと推測される。

 とても重要なことを伝えたい時は、子どもの頃のエピソードとして話せ。ということなのかもしれない。


2月13日の進捗、352ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 13.3%) 

Volume 1  : The Nature of Hypnosis and Suggestion

Indirect Induction of Trance: Simulation and the Role of Indirect Suggestion and Minimal Cues Milton H. Erickson Unpublished paper written in the 1960s. 

Notes on Minimal Cues in Vocal Dynamics and Memory Milton H. Erickson



(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html


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