2017年2月21日火曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 52日目


                                                                                                                            
        全てのコミュケーションには〈内容〉と〈関係〉の側面があり、

    〈関係〉は〈内容〉を定義に従い分類する。

 したがって、〈関係〉はメタ・コミュケーションである。

 
 ・・・・・・・・・・・・・・・コミュケーションの5つの公理より

 <ひとりごと>



はじめに

 備忘録として、

 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 今日は、52日目について書いておきたい。


2つのレベルのコミュニケーション

 今日は、「Two-Level Communication and the Microdynamics of Trance and Suggestion(1976)」の続きから。

 エリクソンは1980年に亡くなるので、かなり晩年の論文。

 この論文はかなり面白い。ここでは、2つのレベルのコミュニケーションについて書かれているが、2つのレベルとは、一つは意識される通常のコミュニケーション、そしてもう一つは無意識で行われる、あるいは意識に登っていないメタ・コミュニケーションということになる。以前、ベイトソンからの引用で、メタ言語的とメタ・コミュニケーション的の区別がある話について、このあたりで書いた。

 実際にはエリクソンが催眠にかかったことがないという精神科医や心理学者相手にトランス誘導を行った様子を、エリクソンとロッシで解説する、というのがここでの構図となる。ここで面白いのは、誘導される人は頭がよい、ということだ。つまり、意識で行うクリティカル・シンキングがきちんと出来ている。だが、エリクソンの言語パターンはこういった人でも時に「????」と混乱し、気がつくとトランス現象が引き出されているということになる。

 もちろん、意識の世界では、何も難しいことを行っているわけではない。例えば、エリクソンはダブル・バインドを含む以下のような言葉を使う。



And the only question is, when will you do it?

Will you do it expectedly or unexpectedly?

You are interested in experiments.

You in your own mind can set up the experiment.


この4行を唱えただけで、治療的ダブル・バインドが完成するという具合。もちろん、被験者とはラポールが築かれており、抵抗を受けていない、相手が受け入れる体制になっているという前提はあるのだろうが・・・・

 それで、この四行には色々「含み」がある。

例えば、「ただ、問題になることはそれをいつやるかということです」→できるかどうかは問題ではない、だってできるのだから、というメタ・メッセージを含んでいる。あるいは、「あなたは実験に興味がある」→実験だから失敗するのはあたりまえ、実験だから気軽にやってみる。といった具合だ。

 これで想い出すのは、松本道弘氏の著作「新・give と get」[2]だ。このコンセプトは英語は基本的 give と get の2つの動詞で話せるということなのだが、要はそれを話す時にコンテクストを意識しメタ・コミュニケーションしろというかなりの高等テクニックの話をしていることになる。要は英語の会話に限った話ではないが、会話や対話が上手くなるというのは、メタ・コミュニケーションが上手くなる、ということでもある。逆に言うと、メタ・コミュケーションが上手くならないとコミュケーションはうまくならないということでもある。だから、本当は単語や熟語だけ覚えてもまったく意味がない。

 その意味では、ミルトン・エリクソンはとてもメタ・コミュニケーションが上手い。もちろん、ロッシと一緒に2つのレベルのコミュニケーションという解説をやっているくらいだから、本人は意図してやっていたことになる。
 
考察 

 ミルトン・エリクソンをコミュケーション研究の素材と見るととても面白い。「ネットに載っている催眠は気持ち悪い」これは、まともな人ならそういう感覚を持つだろう。私もそうだ(笑)。ただ、やはり人類学者のグレゴリー・ベイトソンはここに別の何かを見た。一つはコミュケーションのやり方。細かい話をするとこれは自己間と対人間の話になる。もう一つは、戦略性。これは現状から理想にどう到達するのか?という話。

 それで、現在、エリクソンは家族療法や短期療法の元になっているところがあるが、もちろん、コミュケーションについては、自己間や対人間コミュケーションをどう上手く行うのか?はたまた自分の習慣を変えたり、自分や組織の目標達成に、と応用範囲は広い。
 
 もちろん、これは、エリクソンとベイトソンが単なる催眠ではなく、コミュケーションと戦略性という具合にもっと広く考えていたからに他ならない。
 
2月21日の進捗、416ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 15.8%) 

Volume 1  : The Nature of Hypnosis and Suggestion

Varieties of Double Bind 
Milton H. Erickson and Ernest L. Rossi Reprinted with permission  fromThe American Journal of Clinical Hypnosis, January 1975, 17, 143-157.

Two-Level Communication and the Microdynamics of Trance and Suggestion 
Milton H. Erickson and Ernest L. Rossi Reprinted with permission fromThe American Journal of Clinical Hypnosis, January, 1976, 18, 153-171. 



(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html
[2]https://www.amazon.co.jp/dp/4255000050/


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