2017年2月22日水曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 53日目


                                                                                                                            
   東風吹かば匂いおこせよ梅の花
 
   主なしとて 春な忘れそ 

   ・・・・・・・・・・・・・・・・・

 人工知能あたりまで導入した天神さまのプロジェクトから随分経ったなぁ・・(笑)

 <ひとりごと>



はじめに

 備忘録として、

 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 今日は、53日目について書いておきたい。


2つのレベルのコミュニケーション

 今日は、「Two-Level Communication and the Microdynamics of Trance and Suggestion(1976)」の続きから。

 エリクソンは1980年に亡くなるので、かなり晩年の論文。

 この論文はかなり面白い。ここでは、2つのレベルのコミュニケーションについて書かれているが、2つのレベルとは、一つは意識される通常のコミュニケーション、そしてもう一つは無意識で行われる、あるいは意識に登っていないメタ・コミュニケーションということになる。以前、ベイトソンからの引用で、メタ言語的とメタ・コミュニケーション的の区別がある話について、このあたりで書いた。

今日は、具体的な言葉のパターンからまとめに入っていく。


It is important during the initial stages of learning to experience trance that the therapist prevent the rationally oriented individual from building associative bridges between the nascent and autonomous aspects of trance phenomena and their usual everyday awareness. 
トランスの経験を学ぶ初期段階で重要なことは、合理的指向の個人が、発生と自律の側面からのトランス現象を彼らの日常の意識レベルの覚醒と結びつけようとすることを、セラピストが妨げることである。

Talking about trance immediately after experiencing it builds associative connections between trance and everyday awareness that destroys the dissociation between them. 
トランスを経験した直後にそれについて話すことで、トランス状態と日常の意識レベルの覚醒との関連性がつくられる、これによりこの2つがまったく違うものだという考えが否定される。

Talking amalgamates the nascent and autonomous qualities of trance phenomena into the individuals usual, normal state of awareness to the point where many researchers (Barber, Spanos, and Chaves, 1974) have come to believe that trance, as an altered state of consciousness, does not exist (Erickson and Rossi, 1974). 
 発生と自律の質についてトランス現象を多くの研究者が信じている変性意識は存在意識は存在しないとして日常の覚醒レベルの意識に融合して話す。


 少し複雑なレトリックだ。本当のところはどうなのか分からない。しかし、エリクソンはトランス状態を日常だけれでも経験する意識状態の延長だとしてクライアントとコミュケーションを行う。おそらく、これで心理療法の効果があるのだから敢えてその状態が脳神経科学的にどうか?などは一旦保留していた、ということなのだろう。要は、学術的に正確なことと、現場で使える技法は違うということなのだろう。

《コンテクストの理論》

 超訳でまとめておくと、こんなこと。言葉でどのようなコンテクストをつくるのか?という話。クライアントは問題を抱えており、アレも無理コレも無理、アレもできないコレもできないという状況でエリクソンの元にやってくる。それで、ここでアレをやってみれば、コレをやってみれば、と言葉で直接言っても。クライアントから返ってくるのは「そんな簡単に出来るのだったら苦労しないです」というような抵抗。それで、意識に登らない形式で、「何やりたいの?」「出来るんじゃないの?」をどのように状況設定してあげることができるのか?というのがここでの考察。要は、大切なのは「問題を解決できそうな雰囲気」「そのために何かやれそうな雰囲気」これを暗にどのように演出していくのか?という話になる。

《暗示をどう使うのか?も細かい視点からの動力学》

 このあたりは、間接暗示の要件で書いた。真面目にやっていくと、バリエーションが多い。

 また、要点は以下だ。

It is important to recognize that while Erickson does think of trance as a special state (of reduced foci of attention), he does not believe hypersuggestibility is a necessary characteristic of trance (Erickson, 1932).
エリクソンは(知覚の注意が低減されるという意味では)トランス状態が特別な状態と考えていた、しかし、暗示性が極度に高まることがトランスの必須の特徴だとは信じていなかった。

 That is, just because a patient is experiencing trance, it does not mean that patient is going to accept and act upon the therapists direct suggestions. 
この理由は単に、患者はトランスを経験しているだけで、患者がセラピストの直接暗示を受け入れたり、その指示通りに振る舞ったりするだろうことを意味していない。

 面白いのは、トランス状態にあるか、ないかは問題ではなく。クライアント自身が受け入れようと思うことは受け入れ、受けれたくないことは受け入れないということだ。ただ、クライアントも思い込みで抵抗していることはある。もちろん、直接これを指摘しても抵抗を受ける。だからできるだけ暗に示唆するような形式で行うほうがよいということだ。
 
考察 

 日常生活でもズケズケ相手のことを指摘すれば、その分抵抗を受ける。ここでは、相手にどのように気づいてもらうのか?がコミュケーションの重要なポイントなのだろう。欧米では自分の事を兎に角主張しろ、論破しろ、というピッチで語られていることも多いが、そうでないコミュケーションの方法もあるということだ。その意味ではエリクソンのスタイルは大人のコミュケーション・スタイルだということでもある。
 
2月22日の進捗、424ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 16.0%) 

Volume 1  : The Nature of Hypnosis and Suggestion

Two-Level Communication and the Microdynamics of Trance and Suggestion 
Milton H. Erickson and Ernest L. Rossi Reprinted with permission fromThe American Journal of Clinical Hypnosis, January, 1976, 18, 153-171. 



(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html

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