2017年3月11日土曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 70日目


                                                                                                                            
 社会科学の実証実験は難しい、

 何がどこで影響しているが多すぎるためだ。また、システムは刻々と変化する。

 それでも、条件や変数を少し変えて、『違い』を比較するしかない。

 <ひとりごと>



はじめに

 備忘録として、

 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 70日目について書いておきたい。

後の選択的注意につながる?

一本目は「An Experimental Investigation of the Hypnotic Subject’s Apparent Ability to Become Unaware of Stimuli (1944)」の続きから。催眠の被験者が刺激に気づかなくなる明らかな能力についての実証実験。実験1と実験2が行われた。今日は実験2。エリクソンならではの面白い状態をつくりだす。『透明人間』は他の人の認識から消すという意味では可能ではないか?と思われる実験だ。

 手順はおおよそ、以下になる

  1. エリクソン宅でグループデモンストレーションが行われた。一人の被験者が夢遊病的トランス状態にされた。深いトランス状態でも覚めている状態と同じように振る舞うことができると暗示された。被験者は、トランス状態の有無によらず普通に受け答えができる。
  2. 被験者にはこの状態になれるように十分な時間が与えられた。
  3. 被験者はグループでの活動に参加した。グループの誰の目にも普通に見えた。質問では、自分は催眠をかけられたとの記憶はあった。
  4. 〈第一、第二の訪問者〉計画も予期もされていない被験者と顔見知りの2人がエリクソン宅にやってくる。
  5. 〈第一の訪問者〉自分で催眠の経験はないが、催眠のことはよく知っていた。また、被験者が現在、トランス状態にあることは訪問者からは隠された。
  6. 〈第二の訪問者〉催眠の経験もあり、催眠のこともよく知っていた。グループを観察し、被験者が普段の振る舞いと異なることを観察した。
  7. これらの訪問者が立ち去った後、被験者はいつもと違って指示されたことがうまくできなかったことを詫た。
  8. 〈第三の訪問者〉さらに被験者の知らない人物がたまたま訪問してきた。全員の前で自己紹介が行われた。
  9. 被験者は視覚、聴覚のレベルでこの訪問者の認知と挨拶ができなかった。
  10. グループの振る舞いの違いが被験者にも理解できた。しかし、被験者にはなぜそれが違うのか理解できなかった。
  11. 訪問者の被験者への物理的な操作は、被験者のトランス状態に応じた反応を引き出した。これは被験者が覚めている状態の時乱暴に振る舞っているように感じられ、驚きと恐怖反応を引き出し、そして罪悪感を引き出した。
  12. 被験者へのさらない覚めた状態のように振る舞う指示は、訪問者への存在の認識のなさを強めた。反対にグループは訪問者へ反応していた。
  13. 最終的、被験者へ間接暗示が与えられることでグループが反応していることが理解できるようになった。
  14. 後にトランスから覚めた状態では被験者のトランス状態での記憶は喪失していた
  15. トランス状態にして、催眠下で行ったことは第三の訪問者以外はすべて引き出された。
 社会学的な実証実験は因果が不明なところはある。だから、パラメターを一つだけ変えたと思われる対象と比較するしかない。エリクソンはさらなる検証が必要と述べている。

催眠で限定的な強迫観念を起こせるか?


二本目は「The Development of an Acute Limited Obsessional Hysterical State in a Normal Hypnotic Subject (1954)」から。

 要は、普段の状態では何も問題の無い人に対して、トランス状態で限定的な強迫観念を引き起こせるかどうかの検証。

随考

    今日で東日本大震災から6年目だ。被災された方々には謹んで哀悼の意を捧げたい。

 さて、この震災の特徴は以下だろう。

  • (五感で)知覚できる津波や地震、余震などの現象があった。
  • 知覚できない放射性物質の拡散があった。
  • これらの2つが複合して引き起こされた

 普通の自然災害とは違っていた。知覚できないことがあるのは恐怖以上の恐怖だ。妄想が妄想を引き起こす。そして、妄想のループから抜け出すことを難しくする。一般意味論で言う、「地図が地図を参照する」状態だ。

 突然、突き落とされた非日常の状態は催眠の驚愕のようなものだ。これが悪い方に振れると、人は予想だにしなかった極端な思考や行動に走ることがある。もちろん、反対に外的な情報から切り離されて内にこもる催眠状態もリスクがある。

 震災からの学びは、マインドフルネスの状態に居る重要性だろう。放射性物質は五感では知覚できない。しかし、それでも心の状態は知覚したほうがよいということだ。心を落ち着け、冷静に事実を収集する。そして、何か決断を下す前にメタ認知してみる。メタ認知には書いて眺めてみるのも有効だ。メタ認知が絶対ではない。が、パニック状態で意思決定するよりはずっとましだ。

 さて、震災時のTwitter への投稿が残っているが、心がけたのは3つだ。

①心をいつもマインドフルネスな状態に保つ努力し、余裕を持つ
認知バイアスに気をつけ情報を収集、処理し、そして意思決定を行う
③局所最適に陥らないようにシステム思考をする

 会社などではBCPを持っているところも増えた。しかし、所詮、計画は計画だし行動リストは行動リストしかない。当然、想定されていないことも起こる。だから実際の実行に関してはネガティブ・リスト方式でなけれならない。要は、やってはいけないこと以外はなんでもありということだ。

 こういった状況下では、(PDCAではなく)OODAなどのネガティブ・リスト方式+ポジティブ・フィードバック・ループ式で対処したところだ。パニックになってはいけないが常識を超えた災害には常識を超えたところでの冷静な対処が必要だ、ということだ。マインドフルネスで常識を超える必要があるということだ。

 余談だが、電力会社と仕事した経験がある人には分かるだろうが、電力会社は、計画を立て、この計画を実行するために厳密な手順で仕事をすることを是とする。やっていいと決められたことだけがやっていいことだ。これは是というよりある意味信仰に近い。反対は、非ではなく悪だ。ポジティブ・リストが是、ネガティブ・リストは悪。しかし、吉田昌郎所長の原子炉への海水の注入は完全に常識を超えた判断だ。電力会社の文化にも社是にも全く反する。あの時、どうしてこのような神がかった決断と実行が可能だったのか?それは今持って謎であるように思える。

3月11日の進捗、560ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 21.1%) 

Volume 2 : HYPNOTIC ALTERATION   OF SENSORY, PERCEPTUAL    AND PSYCHOPHYSIOLOGICAL   PROCESSES

An Experimental Investigation of the Hypnotic Subject's Apparent Ability to Become Unaware of Stimuli 
Milton H. Erickson Reprinted with permission fromThe Journal of General Psychology, 1944, 31, 191-212. 

The Development of an Acute Limited Obsessional Hysterical State in a Normal Hypnotic Subject 
Milton H. Erickson Read in part at the 4th annual meeting of the Society for Clinical and Experimental Hypnosis, New York Academy of Sciences, Sept. 26, 1953; and in part at the 1 stAnnual meeting of the Southern Calif. Psychiatric Society, Los Angeles, Calif., Nov. 14, 1953; reprinted with permission fromThe Journal of Clinical & Experimental Hypnosis, January, 1954, 2, 27-41. 

(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html


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