2017年3月16日木曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 75日目


                                                                                                                            
    この時代のミルトン・エリクソン、

 アスリートで言ったら粛々と筋トレをしているような感じだなぁ〜(笑)。

 やっぱり基本の積み重ねは大事だよなぁ〜。

 <ひとりごと>



はじめに

 備忘録として、

 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 75日目について書いておきたい。

催眠による聴覚障害の研究

一本目は、「A Study of Clinical and Experimental Findings on Hypnotic Deafness: I. Clinical Experimentation and Findings  (1938)」の続きから。著者はミルトン・エリクソン。

 このあたりはポリティカル・コレクトネスに関することで Deafというコトバが1938年、つまり欧州から第二次大戦が始まる直前の状況でどのような意味を持っていたのか?から始まるのかもしれない。個人的には耳がほとんど聞こえない状態、という理解だ。

 この論文の趣旨はこうだ。催眠の現象の一つとして耳がほどんど聞こえない状態になることは知られていた。しかし、具体的に病気などで耳が聞こえない人と催眠で一時的に耳が聞こえない状態になった人とではどのような違いがあるのか?といった研究はほどんどなされてこなかった。そこで、エリクソンはもう少し体系だってこの研究をしました、というのがここでの趣旨となる。

 使われている技法は、この表で書いたが学術的に標準的なアプローチが使われている。被験者の母数は70名。この人たちに夢遊病的なトランス入れるように訓練を行う。そして、実際にこういったトランス状態が開発できたのが30名、さらにこれを10名のグループA、B、Cに分けて予め用意された暗示を与え、耳の聞こえない状態に導き、そして検証を開始する・・・・というのがここでのプロットとなる。
 
・・・・・・・・・

 それで、パラメーターを変えて色々実験をして得られた結果のサマリーは以下となる。

  • (1) 聴覚機能の変化の証拠が得られた
    • (A)聴覚しきい値が変化した
      • a.聴覚の斬新的な増減を伴う変動が見られた
      • b.特定タイプの刺激-「選択的難聴」に対して制約がみられた
    • (B)以下の機能の障害が見られた
      • a.音の空間の定位の特定
      • b.時間関係の区別
      • c.音質の区別
      • d.外的刺激-「内的幻聴」の置換
  • (2)総聴力損失の証拠が得られた
    • (A)音以外の振動に対する適切な応答
    • (B)驚愕に対する反射の欠如
    • (C)聴覚刺激に起因する習慣的、自発的行動パターンの障害
    • (D)聴覚障害状態の時の刺激に対する反応行動の制約

 単に観察して、統計処理はされずに単に数を数えているだけのところがあるけれど、時代が時代だからこれはこれでありなのだろう。
随考

 この論文が掲載されたのは1938年、エリクソン37歳。この時代の論文を読んで分かるのは、一見つまらない基礎的な検証を粛々と積み重ねていっていることだ。

 こういった社会科学的な検証は時間がかかる。しかも物理的な実験のように無生物の資材を集めれば準備が済むというものでもない。当然、対象は生身の人間だ。それぞれの人を一律に扱えばよいというものでもないだろう。ここからどう有益な実験結果を導くのか?おそらく、大変な準備が必要だったと推測される。個人的にはものぐさな性格なので、自然科学系ですら実験をやらずに数値計算のシミュレーションだけで修論を書いた(笑)。難を言えば当時は今と違ってCPUが糞遅かったことだ。だから、エリクソンのような根気の必要な社会科学的な実験を目にすると単純に「スゲー」と思ってしまう。

 さて、ここでエリクソンが調べているのは心理学的(Psychology)なものではないように思う。むしろ調べているのは神経学(Neurology ) や現象学(Phenomenology) に還元した話。極論すると、「被験者を催眠状態にして、コトバがどのように神経に現象しているのか?」こういった検証になる。もちろん、当時から催眠現象はよく知られてる、例えば、感覚喪失、硬直、催眠中の記憶喪失、難聴、幻覚などだ。このあたりのモレのないリストは手持ちのエリクソン系の文献の中にあったが今は探し出せてない。

 この実験では標準的な催眠誘導のアプローチと暗示(この検証では直接暗示)で難聴の現象が起こるのか?ということになるのだが、やはり扱っているのが人間だけあって直線的な因果関係だけでは、手段によって導かれる現象との間に明確な相関や因果がよくわからないようなことになってしまっている。これも一つの大きなテーマだ。

   さて、エリクソンのこの時代は、ピカソで言ったら「青の時代」、コルトレーンでいったら下手くそなフレーズで吹いていた「コルトレーン・チェンジズ」を生み出す前の時代、ということになるのだろう。少なくとも、後に誰もが知っている心理療法家のミルトン・エリクソンに「成りゆく」途上で日々試行錯誤している時代であるのは間違いない。

3月16日の進捗、600ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 22.7%) 

Volume 2 : HYPNOTIC ALTERATION   OF SENSORY, PERCEPTUAL    AND PSYCHOPHYSIOLOGICAL   PROCESSES

A Study of Clinical and Experimental Findings on Hypnotic Deafness: I. Clinical Experimentation and Findings Milton H. Erickson Reprinted with permission from The Journal of General Psychology 1938, 19, 127-150. 




(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html


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