2017年3月2日木曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 61日目


                                                                                                                            
 善意でやっていることが、

 巡り巡って、不都合をもたらしている。

 問題の多くはこういった構図だから面倒なんだよなぁ〜(笑)。

 <ひとりごと>



はじめに

 備忘録として、

 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 61日目について書いておきたい。

催眠が反社会的に利用される可能性の研究 

 「An Experimental Investigation of the Possible Antisocial Use of Hypnosis(1939)」という題の論文の続きから。

 催眠が反社会的に利用される可能性はあるのか?の研究。
 
 エリクソンは様々な実験をするがいたずらの手口のようなことにもなるので細かい話はかかない。もちろん、実験は安全に行われている。今日は、24個目の実験まで。概要は以下な感じ。


  • 催眠下で物理的に他人を傷つけられるか?
  • 他人をコトバで操れるのか?
  • 悪趣味を押し付けられるか?
  • 他人を混乱させてミスリードできるか?
 ある意味、こういった実験は想像力が必要になると思うのだが、子供が一生懸命いたずらを考えました的なところがあって、一つひとつ読んでいくとこれはこれで面白い。

 もちろん、世の中、悪意を持って何かをやっているという人は少なくて、善意を持ってやっていることが巡り巡って他人に不都合なことを持たすことのほうがよりやっかいだと思うことはある(笑)。
 
 ・・・・・・・・
 

考察 

 直接は関係ないが別の論文を読んだついでで書いておく。これは、コーチングやファシリテーションを組織開発や組織のチェンジ・マネジメントに活用する場合にも役に立つ。

 さて、心理療法後の変化のレベルとして2段階のレベルがあった。一つは、現状の枠組みの元で変化する第一次変化(First-Order Change)、もう一つは、枠組みを超えて変化する第二次変化 (Second-Order Change)。喩えるなら、前者がカイゼン、後者がイノベーションとなる。カリフォルニアのパロアルトにある心理療法の研究機関であるMRI(Mental Research Institute)のポール・ウオツラィックらの唱えたレベルだ。

 このあたりで書いたが変化と催眠とは別次元の話だ。実はそこに因果関係はない。つまり、催眠はなくても、適切な状況設定とリフレーミングでこの第二次変化を起こすことが可能だ。二次的変化は「肚から変わる」という感じだ。逆に、催眠を使っても適切な状況設定とリフレーミング、特にパラドクス介入ができないと認識や行動に大した変化は起こらない。つまり、変化が第一次変化でとどまるか、そのレベルにも達しないままだ。エリクソン自身が「催眠は(情緒的)雰囲気だけを変える」と言っている理由だ。つまり、催眠状態にあろうがなかろうが、一人ひとりの認知科学的なフレームに合わせてリフレーミングを行う個別対応が必要になる。反対に、出来合いの催眠スクリプトを読んだだけ、あるいは聞いただけでは、催眠導入には成功しても、催眠から覚めた後に二次的変化なんてまず起こることはない。

 上のリンクで、ウオツラィックらは第二次変化が可能な技法を紹介しているが、この一つとしてV.フランクルの逆説的意図(Paradoxical Intention)があった。たまたま、ネットに「USE OF PARADOXICAL INTENTION IN THE CONTEXT OF ACCEPTANCE AND COMMITMENT THERAPY」[2]というACT関連のエッセーが落ちていてこれを読んでいた。ACTの「関係フレーム理論」のことはおいておく。ここでは、フランクル、エリクソン、アドラーに共通する介入方法がこの逆説的意図という名前のパラドクス介入という指摘がある。とても納得できる。

 個人的に、エリクソニアン、MRI、ミラノ派のどれを使う時でもパラドクス介入は普通に使っている。もっというとこれがこの技法のミソだ。特に、コーチングでもファシリテーションの状況でも第二次変化を志向する場合は、パラドクス介入を間接もしくは直接暗示でやっている感じになっている。

 余談だが、エリクソン派生のNLP(Neuro-Linguistic Programming)だと肯定的意図(Positive Intention)でとどまっており、これだけではパラドクス介入にならないので変化の度合が第一次変化でとどまっているのがほとんど。ソリューション・フォーカスト・アプローチでも本来はパラドクス介入までを志向しているが、これを行わないと変化のレベルは第一次変化でとどまる。その意味ではウオツラィックらの第一次変化と第二次変化のレベルは変化の度合いを図るモノサシでもある。とても興味深い。

 ちなみに、パラドクスにはまっている状態にカウンター・パラドクスを当てて抜け出す方法については、このあたりで書いた。要は、よかれと思ってやっていることが巡り巡って不都合をもたらす状況に入ることがある、あるいはそのパターンにハマることがあるということだ。。実は、これが本当は一番やっかいだ。エリクソンはその多くは催眠というスタイルで治療的ダブル・バインドなどを使ってパラドクス介入を行ってクライアントをここから抜け出すことを支援した。余談だが、グレゴリー・ベイトソンやジェイ・ヘイリーなどMRIの人たちはここに禅との共通性を見出した。これがエリクソンの格好の良さだ。

 さて、個人的には大学院で心理学や心理療法を専攻したわけではないので、用途を個人や組織のコーチングやファシリテーションに限定しているが、認識や行動の二次的変化までを支援するためには身につけておきたい知識だ。もちろん、実践と試行錯誤が何より重要だが・・・・

3月2日の進捗、488ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 18.4%) 

Volume 1  : The Nature of Hypnosis and Suggestion

An Experimental Investigation of the Possible Antisocial Use of Hypnosis Milton H. Erickson Reprinted with permission fromPsychiatry, August, 1939, 2, 391-414. 



(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html
[2]https://contextualscience.org/system/files/Sharp,2004.pdf

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