2017年3月31日金曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 90日目


                                                                                                                            
 フレームワーク化すると暗黙知は消える、

 ただし、怪しくない形式で多くの人が使えるようになる。

 その点、円環的質問は形式知としては案外いい線いっている。

 <ひとりごと>



はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 90日目について書いておきたい。


祖母、母、子の三世代のくしゃみのパターンの共通性
 「Appearance in Three Generations of an Atypical Pattern of the Sneezing Reflex (1940)」から。著者はミルトン・エリクソン。

   祖母、母、娘の標準的ではないくしゃみのパターンを観察するというもの。なかなか面白い話だ。



祖母、母、子の三世代のくしゃみのパターンの共通性

     「An Addendum to a Report of the Appearance in Three Generations of an Atypical Pattern of the Sneezing Reflex (1964)」から。著者はミルトン・エリクソン。

     上の続き。随分気の長い話だ。
    ・・・・・・・
     

    随考

     エリクソン論文全集を読んでいて個人的に思うことがある。「誰かに要旨を説明するにはどうしたらよいのか?」だ。

     相手の知識レベル、あるいは立場によっても違うだろう。普通の人が相手だと「催眠」のような用語を出した時点でそもそも怪しい(笑)。特に、企業のコーチングやファシリテーション研修のようなところでは「催眠」をやりましょう、ということにはならないだろう。たとえそれが臨床催眠のようなものであってもだ。

     結論から言うと、「フレームワークを使って説明する」ということになる。

     これについて、そもそも論から考える。

     エリクソンを研究したベイトソンを含むカリフォルニア州パロアルトのMRIの人たちは、人の認識に着目し、サイバネティクスを持ち込んでエリクソンの技法を2つの方向性に還元して研究した、

    • ひとつは「戦略」
    • もうひとつは「コミュニケーションのやりとり」だ
     「戦略」は現状から理想となるゴールを思い描き、どのように達成するのか?「コミュニケーションのやりとり」は、人と人との関係性を規定する。ゴールを達成する上で応援団に回ってくれることもあるだろうし、抵抗勢力になることもあるだろう。そいういった意味での関係性だ。

     ベイトソンたちは、短期療法や家族療法として形式知として体系化した。もちろん、この形式知はエリクソンのすべてを反映したものではないことは確かだ。

     結局、そもそもの目的は、問題や課題の解決だった。そのためには、「変化」が必要だった。具体的には以下になるだろう、当然、ここでは枠組みを超えた変化である二次的変化(Second-order Change)を志向している。

    • 認識の枠組みが変化することによる
      • 行動の変化
      • 人と人との関係の変化
      • その他

    そう考えると、「催眠」などの色々な方法論は所詮、「変化」を目的とした手段でしかない。

     このうち「コミュニケーションのやりとり」によって「変化」をもたらす、の方向が進化すると、ミルトン・エリクソン→MRI→ミラノ派家族療法(円環的質問)カール・トム博士の質問システム、という方向になる。もっというと、暗黙知の多いエリクソンの技法が形式知化されている。

     もっとも、カール・トム博士のほうの質問システムはネットを検索すると、更にモデル、あるいはフレームワークが更新されていることが分かる。「Interventive Interviewing Revisited and Expanded」を読む。通常のモデルが構成主義的でより変容を志向したトランスフォーメーショナルな感じに変わっており、コンテクストの視点とメタの視点が追加されているのが格好がよい。要は、自己啓発で言われているような「抽象度を上げて考える」のようなメタ認知が促される。結果、問題や課題を外在化したり、状況との相互作用を冷静に考えられるようになる。直線的な因果関係で、この時はこれしか方法がない。という状態からより全体的に、よりシステム思考的に物事を考えられるようになる。ある意味、デカルトの世界観からベイトソンの世界観への転換、つまりリフレーミングでもある。
     
     あまり、大きな声では言えないが、形式知としてのフレームワークがエリクソンの暗黙知に少しずつ近づいていっているようにしか思えない。これはこれで一興だ。

     ただ、こういったフレームワークにもよい点がある、例えば以下だ。

    • 催眠を使わなくても思考や行動の変化が導ける
    • 間接暗示を使わなくても円環的質問法がそれに変わる
    • フレームワークを一つのパターンとしてユーティライゼーションができる
    • 円環的質問法が二項対立のパラドクスを解決する
    • 物事を単純な二項対立から、よりシステム思考的に考えられる支援をする
    • コーチング、ファシリテーションに使える
    • ワイガヤ、ブレストにも使える
    • なにより、他人にポイントを絞って説明できる、簡単に学べて使える 
     もちろん、カール・トムの論文を読んでいて、「エリクソンのあの技法がこうなるのか」というところはあるのだが、少なくとも、普通の人が普通に質問だけするような形式で学べて、結構簡単に使える。これはこれで面白い。

     また、あまり大きな声では言えないのだが、人の思考の枠組みや行動の変化を支援する理屈はこのあたりがミソで、実は催眠誘導に成功したところで変化は導けない。ベイトソンたちが研究していたのも、エリクソンがやっていたのも、結局は「変化の理屈」だったということだ。サイバネティクスの視点で観察してはじめて分かることだ。

     一度、こちらの視点に出てエリクソン論文全集を読む。「変化の理屈」が見えてくる。その上でやりたければ、催眠誘導もやればよい話だ。一度、形式知化することで本質が見えていることがある、これはこれで面白い。結局、本当に学ばなければならないのは「催眠誘導」ではなく「変化の理屈」だということだ。

     エリクソンの暗黙知は継承できていないかもしれないが、企業などで怪しくない形式で使えるようにはなる。
     

    3月31日の進捗、718ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 27.1%) 

    Volume 2 : HYPNOTIC ALTERATION   OF SENSORY, PERCEPTUAL    AND PSYCHOPHYSIOLOGICAL   PROCESSES

    Appearance in Three Generations of an Atypical Pattern of the Sneezing Reflex
     Milton H. Erickson Reprinted with permission from The Journal of Genetic Psychology, 1940, 56, 455-459. 

    An Addendum to a Report of the Appearance in Three Generations of an Atypical Pattern of the Sneezing Reflex Milton H Erickson Reprinted with permission fromPerceptual and Motor Skills, 1964, 18, 309-310. 





    (つづく)

    文献
    [1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html


    記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com
    https://www.facebook.com/Okirakusoken-236949276723679

    ――

    0 件のコメント:

    コメントを投稿