2017年3月21日火曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 80日目


                                                                                                                            
 意識が情報を取捨選択しているのではない。

 無意識が多くの情報を取り込んで、最後にその一部が意識に上がってくる。

 これが普通の認知科学の考え方(笑)。

 <ひとりごと>



はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 80日目について書いておきたい。

人の振る舞いと音源の方向についてのフィールドワーク

「A Field Investigation by Hypnosis of Sound Loci Importance in Human Behavior(1973)」の続き。著者はミルトン・エリクソン。

《エリクソンの推論のスタイル》

  エリクソンの代表的な思考プロセスのひとつは帰納的だ。今回のケースでは、①1929年の事例、②1937年の事例、③1968年の事例、ここでエリクソンが経験した3つの事例に共通することを帰納法で推論して仮説を立てているというのがここでのポイントだ。

 ここで驚くのは①の事例から③の事例まで約30年の時があることだ。普通の人間にはこのような長い時間をかけて何かの仮説を持ち続けるのは難しいように思う。逆に言うと、少しの疑問を心のどこかに持ち続け、そしてそういた経験ができた時にそこに斬り込んでいく、というのがエリクソンのスタイルのように思ってくる。要は、ほんの少しの想いやテーマでも構わないのでとにかく続ける。結局は、「継続は力なり」ということだ。

《要点は声の位置と記憶の想起》

 ここでのテーマは人の記憶やその時学習したパターンが音の方向性から想起されるのがポイントだ。要は、エリクソンが相手と話す時に物理的に相手より低い位置に陣取る。単なる会話なのだが、船に乗って経験する波の音のように下から相手に話す。声を上下左右、そして前後に揺らして話す。ここでは明示的な催眠誘導は行っていない。しかし、相手は、自分が船に乗っている時の経験を思い出す。そして、船酔いの傾向がある人は、突然吐き気を催す。というような具合だ。後に述べるが③の事例は船酔いではなくて、思い出すのはサンフランシスコ湾で釣りをしていてシーバスが爆釣した時の愉しい思い出。学習される経験は人によって異なるということだろう。

《事例(その2)》

 1942年の事例。太平洋航空便の就航が1937年となるので、この時代は船旅が主流なそのような時代だ。エリクソンは事例(その1)のレジデンスの医師の例との類似として、この事例(その2)をあげている。

 地域の社会的な集まりのこと、大学教授の Dr.X が登場する。彼は、人の行動の異常を研究している。海が凪いでいても船に乗ると船酔いする。エリクソンの評判は知っている。会合でエリクソンと別室で2人で話始める。

 エリクソンは、相手より低いクッションに座る。相手に目をつぶって声に集中してもらう。ここでは、明示的な催眠誘導を行わない。エリクソンは普通の話題を単調に、声を上下左右、前後に揺らして話し始める。

 Dr.X は突然、目を開き、「うぅ」とハンカチを口に当て、そしてトイレに走っていく。帰ってきて、今は全然気分はよいが、突然船酔いのような感覚に襲われたと告白する。おそらく、無意識に何かが起こったに違いないと。

 これ以降はあまりエリクソンとのディスカッションはできなかったが、こういった事例だ。

 ・・・・・・・・

《事例(その3)》

 1968年のことだ、エリクソンはハーヴァード・メディカル・スクールで精神医学と催眠を教えているトーマス・ハケット博士の訪問を受けたことだ。この時期、エリクソンはアリゾナ州フェニックスに住んでいる。

 ハケット博士は、エリクソンに慢性疼痛のクライアントについての問い合わせを行おうとしている。エリクソンは問い合わせされたクライアントの他に別の事例も用意している。

 別の事例は、フランクの事例だ。フランクは、60歳後半、6年前に片側骨盤切断手術を受けており、右側の足を切断。現在、幻想痛に悩まされている。このため、鎮痛剤を処方され、過度に薬に依存した状態になっている。フランクは、オカルトをはじめステージ催眠などなんでも試してみたが効果はなかった。男性は西海岸に住んでおり、スタンフォード・メディカル・スクールで被験者を探していてその被験者になった。スタンフォードのデレノース博士からエリクソンに問い合わせがあったのがエリクソンのクライアントになるきっかけだ。ギャンブルや釣りをこよなく愛し、憎めないキャラのおっちゃんだ。

 エリクソンとのセッションを開始。約2ヶ月で疼痛のコントロールがある程度可能になる。9ヶ月後に香港風邪にかかり死にかける、しかしこれがきっかけで鎮静剤への依存をやめるきっかけになる。

 西海岸へ帰って2回目の手術。入院中はエリクソンが支援。退院する早速エリクソンのところにやってくる。
 
 ・・・・・・

 ハケット博士がやってきて、デモを開始。フランクの物理的に下から声を上下左右、前後にふって話すと、フラックがサンフランシスコ湾でボートにのって釣りをしていて、シーバスが爆釣した時のことを思い出す。

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 フランクが帰った後で、エリクソンはハケット博士とディスカッションを始める。というような展開になる。     

・・・・・・
随考
 
 この論文から学べるのは、人は良い悪いの判断は別にして人は、音の方向性から何かを学習しているということだ。そして、同じようなパターンだと認識すると、その時の反応が現れる。

 人は無意識に何かを学んでいる。

 コミュニケーションの公理のパロディーとして書いておくと「人は学習しないでいることはできない」こういう生き物なのかもしれない。

 エリクソンの論文を読んでも、無意識で何かを学んでいるのだろう(笑)。だんだん面白くなってきた。


3月21日の進捗、640ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 24.2%) 

Volume 2 : HYPNOTIC ALTERATION   OF SENSORY, PERCEPTUAL    AND PSYCHOPHYSIOLOGICAL   PROCESSES

A Field Investigation by Hypnosis of Sound Loci Importance in Human Behavior Milton H. Erickson Reprinted with permission from The American Journal of Clinical Hypnosis, October, 1973, 16,147-164. 




(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html


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