2017年3月6日月曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 65日目


                                                                                                                            
 「属人化」の反対の概念は「標準化」

   誰がやっても結果が出せるようにするためには、

   プロセス自体に知恵を持たせる必要がある。

 <ひとりごと>



はじめに

 備忘録として、

 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 65日目について書いておきたい。

一本目

 一本目は「Hypnotic Induction of Hallucinatory Color Vision Followed by Pseudonegative Afterimages (1938)」。日本語だと、「催眠的色覚の催眠誘発と偽陰性残像」。昨日の続きから。

 共著者は、エリクソンの妻のエリザベス・ムーア・エリクソン(1915-2008)[2]。通称、ベティー・エリクソン。ベティー・エリクソンの自己催眠でも知られる。エリクソンの次女のベティー・アリス・エリクソンとの混同を避けるために、通常、ベティーと言えば妻のほうを指し、次女はベティー・アリスと称される。
 
 この実験では、この表の真ん中に書いたが、エリクソンがウィスコンシン大時代にクラーク・ハル教授の元で開発した属人性を排した標準的なアプローチを使って検証が行われる。エリクソンの論文全体に流れる大きな物語としては、真ん中の標準的アプローチからスタートし、右側のエリクソニアン的なアプローチを生み出していく。これがその物語になる。逆に言うとエリクソンは巷で言われているような古典催眠とは無縁の人だ。だから古典催眠を基本としエリクソン的な催眠がその応用にある、という認識は違うように思う。英語を学ぶためには中国語から学ばなければならない、と言われたら、そうではないのでは?と直感的に分かるような話だ。

 また、このあたりの検証は、直線的な因果関係を想定し、具体的何をやったのが原因でその結果が導かれたのか?何が変数か?のような感じで検証が実施されている。ただし、この論文実験は被験者が5人で、母数が少ないために統計的有意性が担保されているのか?を考えると少々疑問のところはある。

 しかし、現象面だけを見ると、以下のような興味深い結論が導かれている。


The essential consideration of the experiment is that the hallucination of various colors was sufficiently valid subjectively to permit a spontaneous and invariable hallucination of complementary colors in the form of negative afterimages. 

 実験の本質的な考察は、様々な色の幻覚が、負の残像の形で補色の自発的かつ不変の幻覚を許容するのに十分に主観的に十分に有効であったことである。




二本目

二本目は「Discussion: Critical Comments on Hiblers Presentation of His Work on Negative Afterimages of Hypnotically Induced Hallucinated Colors (1941)」。「催眠的色覚の催眠誘発と偽陰性残像」の批判の批判。著者は、エリザベス・ムーア・エリクソン。

 一本目の実験では、催眠状態で、色のついた紙を見せた後のネガの残像を起点に、幻覚を誘発することに成功した。これに対して、Hibler が追試をしクリティカルに反論を始める。コトバが神経に現象したのではなく、単純に被験者はコトバに反応しているのではないか?と。もちろん、非常に建設的に。これについて、いやいや、ちゃんと神経に現象していますよ。なぜなら・・・・と反証するというのがこの論文ということになる。

 ある意味、批判から抜け漏れを検討し、さらに検証していくことで仮説や技法が深められるという例だ。普通こうなのだろうが、仕事をしていると、金額、品質、納期などでは正論をぶつとはいかない場面も多いのだよなぁ(笑)。
 

考察 

 ミルトン・エリクソンの技法を人工知能で実装することはできるのか?

 たまに、こんな思考実験をすることがある。あくまでも戯れ言だ。

 エリクソンの技法はクライアントの反応に応じて即興的に縦横無尽に変化する。要は、相方を人工知能として漫才は成立するのか?と同じ類の問いだ。この場合、人工知能がボケなのか?ツッコミなのか?は保留して考えている。

 もちろんはじめは電話で音声のみで相談に対応といった限定的話になるだろう。その意味ではデジタルのコトバだけが入力情報になる。逆にいうと、このコトバの背景にあるメタ・メッセージをどのように読み解くのか?あるいは声の調子などモダリティの部分でどのように精神状態を読むのか?が一つの鍵にはなるだろう。最近、コールセンターにワトソン君の自動応答を導入するケースも増えているが。

 また、ロジック的には「アブダクション」を実装できるかどうか?のような話になってくるのだろう。ネットを検索すると、人工知能でアブダクションのロジックを実装するには?という話は結構ひっかかる。

 もちろん、実際にはエリクソン並の心理療法ロボットみたいなものをつくるのはまだまだ時間がかかるのだろうけれど、こういったことを補助線として考えてみるのも面白い試みではある。

 グレゴリー・ベイトソンは情報を「A difference that makes a difference .」と定義した。一つの差異が一つの差異を生む。それも連鎖的に。

 その意味、人工知能でやったら?の問いを当ててみるのも面白いところではある。 

3月6日の進捗、520ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 19.6%) 

Volume 2 : HYPNOTIC ALTERATION   OF SENSORY, PERCEPTUAL    AND PSYCHOPHYSIOLOGICAL   PROCESSES

Hypnotic Induction of Hallucinatory Color Vision Followed by Pseudonegative Afterimages Milton H. Erickson and Elizabeth M, Erickson Published in Journal of Experimental Psychology, 1938, 22, 581-588. 

Discussion: Critical Comments on Hiblers Presentation of His Work on Negative Afterimages of Hypnotically Induced Hallucinated Colors
 Elizabeth M. Erickson Reprinted with permission from the Journal of Experimental Psychology, August, 1941 29.164-170. 


(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html
[2]http://www.asch.net/portals/0/journallibrary/articles/ajch-51/51-4/ericksonobit51-4.pdf

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