2017年4月13日木曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 103日目


                                                                                                                            
 少し怪しいところを、

 論理的かつ科学的に取り扱うというこの構図が面白いのだよなぁ(笑)。

 <ひとりごと>



はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 103日目について書いておきたい。

催眠研究のプレゼン
 
 「Explorations in Hypnosis Research (1960)」。ミルトン・エリクソンが1960年にカンサス大で行ったプレゼンテーションのトランスクリプトの続きから。

《時代背景》

 まずは、時代背景から。この講演は1960年にカンサス大で行われた内容だが、1957年に臨床催眠の学会である The American Society of Clinical Hypnosisが設立されている。また、1959年にカリフォルニア州パロアルトに短期療法の研究機関であるMRI が設立とざっとこんな具合だ。エリクソンは自身の心理療法の体系を残さなかった、代わりにその体系化を試みたのがベイトソンをはじめとするMRIの人たちということになる。最近読んだ日本の臨床家の先生の本に「臨床をやりながら自分の技法を体系化するのは非常に大変」というような趣旨のことが書いたあったことを思い出した。

 さて、体系化と言えば、すでに、エリクソンはベイトソンと交流しており当然ノーバート・ウィナーにより創始されそれが発展していく過程の第二次サイバネティクス的な知見は共有されていることになる。

 また、脳神経科学的な話としてはロジャー・スペリーがノーベル生理学賞を受賞するのが1981年となるのでこういった視点から観察されるのはずっと後の話ということになるだろう。その後、エリック・カンデルがノーベル生理学賞を受賞するのが2000年だから、こういった話は後付の枠組みから見た話となる。

《プレゼンテーションの要点》

 このあたりにになるとエリクソンは、「催眠はコミュニケーションのひとつの形態」「催眠による反応は一人ひとりにユニーク」だという点を述べており、1924年ころから開始した催眠実験から見解も随分固まってきているようなところがある。後にエリクソンの弟子筋の人たちによって体系化されるエリクソン的なアプローチに近づいてきているところが見られる。

 まずは、エリクソン的な意識と無意識の説明から・・・・

《学習》

 エリクソンは共感だったクラーク・ハルの影響か意識あるいは無意識に身につけたパターンを学習というコンテクストで語ることが多い。それが一見、不都合な振る舞いだっとしてもそれも学習というわけだ。

 自分の足の大きさが気になって引きこもりになってしまう少女の事例が登場する。有名なエピソードだ。エリクソンは往診して少女の足を踏みつけ「おまえの足が小さくて目立たないのが悪いんだ」と間接的かつ逆説的な介入を行うというエピソードが紹介される。

《催眠による麻酔》

 催眠現象によって麻酔の効果があるのはすでにジェームズ・ブレイドの時代から知られていることだが、エリクソンは「時間歪曲」の技法を使ってかなり再現性の高い技法として身につけていることになる。

《カタレプシー》

 催眠現象によるカタレプシーも学習のひとつだと位置づけられている。

《ラポールと解離》

 ここでは書いていないが、ヒルガードの Neo-Dissociation (新解離)の理論につながるような話。

《記憶喪失》

 この技法を使って偏頭痛に対処する話。

《孤立(分離)》

 自分の身体の感覚と意識を切り離す。後のメタ認知のような話。

《退行》

 いったいいつまで遡れるのか?というエリクソンの臨床の経験。9歳の男子の飛行機恐怖症を治療した時、生後3ヶ月に飛行機に乗って嫌な思いをした経験まで遡れた事例が語られる。これは両親の記憶によって事実確認された。

 余談だが退行催眠による虚偽記憶の問題はエリクソニアンのマイケル・ヤプコの「Suggestions of Abuse(2009)」に詳しい。1990年代にヤプコは米国のセラピストを対象に虚偽記憶および退行催眠についての意識調査を行っている。ヤプコの立場は、「記憶回復療法」は危険、「前世退行」には否定的と非常に論理的な立場を取っているが、普通に博士号をもった人ならこうなるだろう。個人的にもヤプコと同じ立場だ。もちろんヤプコは、「こういう風にやると虚偽記憶の問題を回避できる」という安全な方法まで提案している。

《質疑応答》

・・・・・・・・・・・・・
    随考

       少しメモしておきたい。

       後から振り返ると、1960年時点でエリクソンに残された時間はあと20年ということになる。年齢は還暦少し前という感じで一番洗練された時期ということなのだろう。

     論文を追っかけるのは、エリクソンがエリクソンに成り行く過程を追っかけている感じがしていてこれが面白いところだ。このあたりのエリクソンはほぼ我々が知っているエリクソンのスタイルが完成されつつあるエリクソンという感じになっている。

     ここで集まっているのは学者であり、まずは催眠の「現象」をきちんと追う。また、それがそのようなことに応用できるのが適用された「事例」を追いかける。もちろん、エリクソンは理論家ではないので何か理論や体系をつくるところは後回しになる。

     そして、質疑応答まで非常に論理的に展開していく。

    4月13日の進捗、820ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 31.0%) 

    Volume 2 : HYPNOTIC ALTERATION   OF SENSORY, PERCEPTUAL    AND PSYCHOPHYSIOLOGICAL   PROCESSES

    Explorations in Hypnosis Research 
    Milton H. Erickson Presented at the Seventh Annual University of Kansas Institute for Research in Clinical Psychology in Hypnosis and Clinical Psychology, May, 1960, at Lawrence, Kansas. 



    (つづく)

    文献
    [1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html


    記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com
    https://www.facebook.com/Okirakusoken-236949276723679

    ――

    0 件のコメント:

    コメントを投稿