2017年4月17日月曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 107日目


                                                                                                                            
 個人的には催眠をサイバネティクスやブリーフセラピーの枠組みで見ている

 だから認識や行動の変化の演出くらいにしか考えていない、

 エリクソンの時代に生まれていたら気持ち悪くて興味を持っていないと思う(笑)。

 <ひとりごと>



はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 107日目について書いておきたい。

催眠についての調査
 
 亀の歩みはノロイが、いつの間にか第3巻目に突入した。

 第3巻の最初は「A Brief Survey of Hypnotism (1934)」から。著者は、ミルトン・エリクソン。時代は昭和9年、エリクソンは33歳頃、今から80年以上前のことだから割り引いて読む必要はあるだろう。

 内容はタイトルどおりに「催眠(を引き起こす行為)についての短い調査」だ。まだ後の講演内容のようにはまとまってない。

 歴史的背景と人物の紹介から始まる、
    人物は、
         フランツ・アントン・メスメル
         ジョン・エリオットソン
                        ジェームズ・エスデール
                           ジェイムズ・ブレイド
         他

 トランス誘導の概要、
    具体的な技法は書いてない

 催眠についての疑問
    催眠は有害なのか?
    被験者が催眠から目覚めないことはないか?
    催眠の途中で催眠術師が居なくなったどうなるか?
    催眠を悪用したり犯罪に使うことはできるか?
    催眠とはそもそも何か?
    
 催眠現象とは何か?
    催眠とは催眠師と被験者の協力の結果生まれる
    意識が焦点化され、被験者は催眠師以外との外的コンタクトがなくなる
    被暗示性が高まる?
    暗示を与えなくても起こる現象の一つはカタレプシー
    後催眠暗示
    記憶の喪失
    
 催眠の応用
    簡単な例:内科医と患者がラポールを築く
    手術の麻酔の代用
    種々の心理実験の手段
    心理療法
       
 ・・・・・・・・・・

 あまりたいした情報はない。ただし、面白いのはここでエリクソンは既に催眠は催眠師と被験者の間に協力関係がないと成立しないと考えていた点だろう。既に協力的アプローチの片鱗が見え隠れしていることを読み解くのがここでのポイントのように思われる。ここから読み解けるのはエリクソンがエリクソンに成りゆく過程においてどんな物語があるか?ということだ。こう考えると退屈な論文も少しは面白くなってくる。
    随考

     さて、上の論文だとどうしても食い足りないので「Hypnotherapy - An Exploratory Casebook 」を読む(笑)。

    ここで、シドニー・ローゼンの前書きが興味深い。

    As the authors point out, Hypnosis does not change the person nor does it alter past experiential life. It serves to permit him to learn more about himself and to express himself more adequately. . . . Therapeutic trance helps people side-step their own learned limitations so that they can more fully explore and utilize their potentials.

    著者(ミルトン・エリクソン、アーネスト・ロッシ)が指摘しているように、催眠は人を変えることもないし、過去の経験的な人生も変えることはない。催眠は、人が自分自身についてもっと学び、自分自身をより適切に表現できるようにする役割を果たす....治療的なトランスは人が学習した限界を一歩脇によけることで自身のより完全な潜在能力を探求し、利用できる支援をする。


      人は「確証バイアス」が作動すると、 自分に都合のよい情報だけを集めてしまう。「催眠」などというのもそうだろう。逆に言うと催眠実験を何十年も行ったエリクソンは「催眠」を可能性の点からも制約の点からも、とても現実的にみている。催眠でできることはできる、できないことはできない、という具合だ。

     催眠をどうみるのか?は現在でも諸説あるが、その一つは「学習」として考える方法だろう。エリクソンは大学時代に師事したクラーク・ハルが「Drive reduction Theory」という学習理論を提唱していたこともあり、この理論を一部踏襲しているようだ。だから、エリクソンは催眠をトランス状態での学習としてみている、と考えられる。

     もちろん、学ぶ対象は自分の経験ということになる。人は本などの書物からも学べるかもしれないが、甘いも辛いも酸っぱいもあるだろうが自分の経験からだけ本当の学びを得られるということなのだろう。その意味では知識として知っているレベルと実行して知恵となっているレベルには大きな差があるということだ。

     また、催眠を使って行うのは、自分自身をより適切に表現できること。これが何より大事だということだ。結局、催眠は何かの制限をかけるのではなく、囚われている枠組みから自由になる支援をするということだ。もちろん、システム論的に色々な制限を外していくというような意味だ。逆にいうと単にやる気だけあるバカにはなってはいけないということだ。

     さらに、エリクソン、ロッシの5ステップのモデルを読むと面白い(訳は適当)。
     

    ここで、エリクソンは暗示にもそれほど重きをおいていないように思える。要は、無意識の中で何か情報を検索する時のクエリーである暗示を投げ、経験の中から役に立つリソースを引き出し、将来役に立つ振る舞いができるように経験の再結合を支援していく、ということになる。メタファーで言うと経験という自分の日記を読み返してるような感じだろう。過去の経験は変えることはできないが、その日記に書いてあることを普段の枠組みにとらわれない別の視点から再検討してみると、今ココから将来に向けて何かをやるためのリソースの宝庫であることに気がつくことになる。

    また、このリソースを見つけることは、ロジック的には帰納、演繹ではなく無意識にアブダクションのロジックを動かしたいので暗示は必然的に間接暗示になる。もちろん、クライアントの抵抗を回避するという意図もある。

     催眠で、常識と言われるような「習慣となっているフレームワーク」あるいは「信念システム」これを弱めることができる。要は、志のようなよい信念も場合によっては枠組みを超えた解決策を探す邪魔になることもあるということだ。だから常識ではないところでアブダクションのロジックで無意識に枠組みを超えて考えることができる支援をするのが催眠ということになる。

     こう考えると応用が、一般的な「創造的問題解決」や「イノベーティブな発想」に使える技法であることが分かってくる。


    4月17日の進捗、852ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 32.2%)

    Volume III
    HYPNOTIC   INVESTIGATION OF   PSYCHODYNAMIC PROCESSES

    A Brief Survey of Hypnotism
    Milton H. Erickson Reprinted with permission from the Medical Record for December 5, 1934     


    (つづく)

    文献
    [1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html


    記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com
    https://www.facebook.com/Okirakusoken-236949276723679

    ――

    0 件のコメント:

    コメントを投稿