2017年4月19日水曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 109日目


                                                                                                                            
     前提知識がない人に、その分野のことを説明するのは案外むずかしい。

 偏見をもった人にその分野の偏見をとくように説明するのはもっと難しい。

 特に偏見は例外を繰り返し実体験しないととけない。

 <ひとりごと>



はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 109日目について書いておきたい。

ブリタニカ百科事典の「催眠」
 
 今日は、「Hypnotism (1954)」の記事。

 エリクソンはブリタニカ科事典の第14版の「Hypnotism」を執筆したがその内容が紹介されている。もちろん、百科事典なので読者は一般の人で、その項目の前提知識がない人にも分かるように書かれている。あるいは、偏見をもった人にその偏見を解くように書かれている。

 中身は、概要、歴史、技法、催眠現象、といったところ。印象的なのは以下だ、


When hypnotized, or in the hypnotic trance, the subject can think, act, and behave as adequately as, and often better than, he can in the ordinary state of psychological awareness, quite possibly because of the intensity of his attention to his task and his freedom from distraction.

催眠 をかけられた、あるいは催眠的なトランス状態にある時、被験者は通常の心理的な意識の状態にある時よりも適切に考え、適切に振る舞うことができる。これは、被験者の注意が課題に向けられ、そして気をそらされることから開放されているためである。

 
エリクソンは催眠にトランス状態を被験者本来のもっとよい状態を引き出す心身状態だと肯定的に捉えているように思えてくる。その意味可能性について書かれているのが面白いところなのだろう。

 さて、ブリタニカ百科事典の出版側がエリクソンに執筆を頼んだということは、催眠について書いてもらうなら、エリクソンに、というなんらかの評価が確立されていたということなのだろう。この時、エリクソンは53歳前後、51歳の時に二回目のポリオに罹患するが、それを再度克服して円熟の時を迎え、1980年に亡くなるまで走り続けることになる。
    随考

     最近、ネットに面白い記事があった。

     英語が達者な先生に習っても、必ずしも生徒の成績が伸びるわけではない、という記事だ。[2]

        この指摘はパラドキシカルで案外おもしろい、スポーツなどで選手として非常に優秀だった人が、引退後指導者に回るとイマイチな指導しかできない、というのと似ているかもしれない。

     要は、「自分が学習する」ことと、「相手の学習を支援する」ことの間には大きな断裂が存在するということだ。おそらく自分が無意識かつ簡単に出来ていたことを相手が分かるように伝えるのは非常に難しい。できる人ほど「なんでこんな簡単なことができないんだ」ということになりがちだ。逆に言うとこのギャップを埋めるためにはコーチングやファシリテーションの技術が必須だということだ。

     もちろん、学習を支援するという意味では2つのモードがあるだろう。

    • 一つは暗黙知を形式知化して学ぶ
    • もうひとつは暗黙知を暗黙知として学ぶ

     暗黙知を形式知として学ぶのはフレームワークを学べばよい、ただし、暗黙知の多くは落ちてしまう。また、それを適切なコンテクストできちんと適用できるかどうかも腕次第ということになる。普通、「お勉強」と言われているものはこちらのほうに入る。

     ただ、こういった知識は実践では役に立たないこともあり、別のモードで学ぶ方法を身につける必要がある。それは、その状況で上手くやっている人の暗黙知を暗黙知として学ぶというやり方だ。

     暗黙知を暗黙知として学ぶためには、そのコンテクストで卓越したことをやっている人間のやり方を四の五の言わずに真似るということになるだろう。要は伝統芸能の内弟子のような感じになる。ただし、これは近くに卓越性を持った人間がいないといけない。もちろん、本質ではなくそのコンテクストに強く依存したことだけを学ぶと、状況が変わるとたちまち役立たずになってしまうので、本当はもっとメタに学習しなければならない。

     さて、エリクソンの技法なども暗黙知を暗黙知として学ぶところまでやらならいと実は意味がないだろう。しかし、本人はもういないわけであり、これには残存するビデオやオーディオテープをとにかく聞きまくるという以外の方法はない。ただし、これもベイトソンの学習理論ではないが、エリクソンのことももっとメタに学習しないと、単なる「催眠バカ」になってしまうところはある。

     それで、結局は、コーチンやファシリテーションを行う場合は、クライアントが暗黙知を暗黙知として学ぶことを支援する技法が必要だということだ。これによってはじめてクライアントが暗黙知を暗黙知として学習することが可能となる。もちろん、できるだけメタに学ばなければならない。もちろん、ここにもエリクソンの技法とベイトソンの視点が生きてくることになる。逆に言うと、メタの視点を取らずベタに「なんでも見える化すればよい」というような安直な考え方を取ると上手くいかないということだけは自信を持って言うことができる。


    4月19日の進捗、868ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 32.8%)

    Volume III
    HYPNOTIC   INVESTIGATION OF   PSYCHODYNAMIC PROCESSES

    Hypnotism
    Milton H. Erickson Reprinted with permission from Encyclopaedia Britannica, 14th edition, © 1954 by Encyclopaedia Britannica, Inc.




    (つづく)

    文献
    [1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html
    [2]https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/203180


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