2017年4月22日土曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 112日目


                                                                                                                            
 エリクソンを学ぶと、
 
 人がどのように出来事に反応し経験し世界観をつくるかが分かってくる。

 珪素谷の企業が「ユーザ・エクスペリエンス」を強調する意味も分かってくる(笑)。

 <ひとりごと>



はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 112日目について書いておきたい。


トラウマを催眠で回復できるのか?

 一本目は、「Development of Apparent Unconsciousness During Hypnotic Reliving of a Traumatic Experience(1937)」のつづき。著者はミルトン・エリクソン。

 エリクソンの少し古い論文。統合失調症的な反応を示すクライアントのトラウマからの回復に対して催眠状態における記憶回復がどのように影響を与えたのかを調査するプロジェクトの報告書。

 被験者は19歳の男性、2年前に顔見知りのワルに車で拉致されて殴られ瀕死の大怪我をする。誰かが通報してくれて、昏睡の後、気がついたら病院のベッドの上。あまり細かい記憶はないのだがそれがトラウマになっていてその現場に行けないなどの症状を示している状況。

 ここで興味深いのは、夢遊病的なトランスの訓練で、これができるようになったクライアントに対して、トラウマに遭遇した出来事まで記憶を遡るように暗示し、そこから時系列に沿ってできるだけ詳細に記憶を思い出すようなやり方をしていることだ。

 ここで思い出すのは虚偽記憶の問題だ。要は、安易に退行催眠をかけ人を幼児の時期などを思い出させるように退行させると、実際にありもしなかった、親から虐待を受けた、などの偽の記憶を作り出すという問題だ。

 「河豚は食いたし命は惜しし」という諺があるが、ここで、興味深いのは、下手に退行催眠を行って記憶回復を行うと虚偽記憶が出来る可能性があるにも関わらず、エリクソンは虚偽記憶の問題を避けながら一体どのようにして記憶回復を巧みにやってのけていたのか?ということだ。

 古い論文なので、細かいトランスクリプトは掲載されていない。そのため、本論文は参考程度にとどめたほうが良さそうだというのが個人的な判断。もっとも、スクリプトがあれば、エリクソンは過去の記憶を再体験させながら、メタ認知を促したり、リフレーミングをどう行っているか?とかトランス状態から覚める時にその記憶を喪失させるための暗示をどう使っているかが分かるとは思うのだが。


・・・・・・・・・・・・・


催眠による健忘

 二本目は、「Clinical and Experimental Observations on Hypnotic Amnesia: Introduction to an Unpublished Paper (1950's)」1950年代に書かれた催眠による健忘、記憶の喪失についての論考。結局出版されなかった論文の序章だ。

 催眠で起こすことの出来る現象に健忘、あるいは特定の記憶の喪失というのがあるが、それについてのエリクソンの論考。

 結局、具体的な話になるとこれから20年以上後のロッシとの共著である「Varieties of Hypnotic Amnesia」を参照するしかないだろう。

 何れにしてもエリクソンが健忘についてどのような考えを持っていたのか?を知るにはよい序章ということになるだろう。

    随考

     エリクソンの技法を仕事や日常に活かすという意味で色々おもしろい試みをしている。

     一つは、エリクソンの技法を最短でやったら何分でできるか?

     もちろん、正確には、エリクソン→MRI→ミラノ派→カール・トムの質問という派生になるが、カール・トムの質問をコーチング仕立てで最短で回すとだいたい一つの課題が3分でできる。

     優秀な人は、仕事でも日常生活でも似たようなことを無意識にやっているのだろうが。プロセスとしては以下だ、(もちろん、本当はもっと時間をかけてコンテクストの確認と現状の枠組みから出るメタ質問をきちんとやる必要がある)

    ・現状を聞く
      今、気になっているのは何か?
      何がどうなってそんなことになっているのか?

    ・他人の視点を持ち込む(三人よれば文殊の知恵、視点の転換)
      同僚関係者は何と言っているのか? 
      それを評価している人は何と言っているのか?

    ・可能性を探る質問をする
      本当は何がどうなっていればよいのか?
      制約が無いと仮定した場合に得られる最良の結果はどうなのか?

    ・打ち手を考える
      どのようにすればその結果が得られるのか?
      以上のことから今すぐやらなければいけないのは何か?

     これをできるだけ速く回すと結構面白いことが起こる。また、これは日本人が好きなPDCAのようにネガティブ・フィードバック・ループで回してはいけない。今の枠組みから出ることが目的なので、サイバネティクスのポジティブ・フィードバック・ループで回す。要は、現状の枠組みから出て思考し、打ち手を考えるのがここでのねらいだ。

     もちろん、このプロセスを30分でも、90分でも、局所最適化にならないように自由に伸ばすことは可能だし、もっとエリクソン風にやりたければ単にやればいいだけの話だ。ただし、大抵の人は時間もそれほどないし、集中力も続かないだろうから現場で使う場合は、エレベーター・ピッチで極限まで少なくチューニングしたエリクソン風コーチングも悪くはないと思っている。

     簡単なのでまずはお試しあれ。


    4月22日の進捗、892ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 33.7%)

    Volume III
    HYPNOTIC   INVESTIGATION OF   PSYCHODYNAMIC PROCESSES

    Development of Apparent Unconsciousness During Hypnotic Reliving of a Traumatic Experience
    Milton H. Erickson Reprinted with permission from the Archives of Neurology and Psychiatry, December 1937, Vol. 38, pp. 1282-1288.

    Clinical and Experimental Observations on Hypnotic Amnesia: Introduction to an Unpublished Paper
    Milton H. Erickson Unpublished manuscript, circa 1950's.


    (つづく)

    文献
    [1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html

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