2017年4月28日金曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 118日目


                                                                                                                            

 実験、実験、実験、観察、そして実践。

 これが、エリクソンのスタイル。

 理論の構築はベイトソンらにおまかせ(笑)。

 <ひとりごと>



はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 118日目について書いておきたい。

解釈の固執とトランス状態の使用

 一つ目は、「Literalness and the Use of Trance in Neurosis(1974)」から。内容はミルトン・エリクソンとアーネスト・ロッシの会話の録音を書き起こしたスクリプト。

 エリクソンの会話のスクリプトを読むとと、どうしてもスターウォーズのヨーダと話しているような錯覚に陥る(笑)。その意味、話している内容が一々示唆深い。

さて、Literalness というのは文字通り「何かの具体的な解釈に固執すること」となる。余談だが解釈というのはその人のなりの主観的な意味をつくる認知上のプロセスのことだ。何かの枠組みを当てると意味論(Semantics)の話になる。

 単純化すると、一般的に人間は経験を帰納して認識の枠組みをつくり、何かの出来事が起こるとそれを演繹的に当てはめて解釈しているようなやり方で動いている。そして普通はその見方、聞き方、感じ方が「常識」として固定化されてしまう。

 極端な例だ、

 前月、目玉焼きを焼いたら雨が降った。

 三日前も、目玉焼きを焼いたら雨が降った。

 昨日も、目玉焼きを焼いたら雨が降った。

 これで、帰納的に「目玉焼きを焼くと、雨が降る」という「常識」が形成される。あくまでもその人の主観的な「常識」だ。また、帰納法が含むロジックとして正しい推論ができない例でもある。

 人はその主観的な「常識」を通してのみ見たり、聞いたり、感じたりすることが可能で、いつしかそのやり方に固執してそれ以外の解釈を取ることができないことになってしまう、というのがここでの前提だ。明日、目玉焼きを焼くと雨が降るだろう、と「常識」を演繹的に当てはめる。

 それで、抵抗を回避して、その凝り固まった「常識」ではないやり方で物事を見ることができるようにするのがトランス状態だというのが、まずここでの話。

 つまり、なぜトランス状態を使うのか?

 答えは、常識にとらわれずに他の可能性に目を向けるためだ、となる。

 そして、エリクソンのやり方は、その「常識」を否定するのではなく、新しい代案を提示するというのがここでのやり方になる。これについて、以前、目標達成における「ゴール設定のガイドライン」について書いたが、この中で、何かを終わらせる形式ではなく、何かを始める形式で設定するというのは、このエリクソンの影響を受けていると思って間違いないだろう。

 また、そもそも論の話をすると、コーチングやファシリテーションでも「常識」を通した過去の延長上にあるゴール設定を行うと大した成果は得られないという話もこのあたりから来ていることになる。

 つまり、コーチングのゴールは「常識」の枠組みの外に設定しなさいという話もこのあたりから来ている。
 
 このために、エリクソンは、コンサルタントが言う「ゼロベース思考」を、トランス状態をつかってクライアントがこれが出来るように支援していたということになる。

 こうやって論考を深めていくと短いスクリプトだが、一々示唆深いのは確かだ(笑)。

・・・・・・・・・・・



退行催眠についての2つ研究の断片

   二つ目は、「Age Regression: Two Unpublished Fragments of a Student’s Study(1922,1931)」。著者はミルトン・エリクソン。

 内容は、1922年のエリクソンがウィスコンシン大学の学生だったころ、もう一つはそれから9年後の1931年に書かれた退行催眠についての研究の断片ということになる。

 最初は、元々精神分析学派から発展してきた技法の一つである退行催眠についての理解と課題を考察しているのが最初の断片。

 二本目は間接的暗示をつかって退行に介入しようとしている実験。一般的に退行催眠というと自由連想を思い起こすが、エリクソンの場合はこれとは違うやり方で退行を制御しなんからの状態を引き起こそうとしたことが分かる。おおよそ以下の感じだ。

 もちろん、これはエリクソンが色々変数を変えておこなっている実験に過ぎない。

1.被験者をトランス状態にして望む過去の時間を思い出すように導く

2.臨床的に有効と判明している暗示を与える

3.さらに被験者に一連の(間接的)暗示を与える

 a.感情に対する無関心と対象への無関心
 b.混乱と不確実性に対する示唆
 c.今日、今週、今月の特定の出来事がゆっくり進む、起こったかどうか不確実
 d.出来事について、人、場所、時間の見当違いの情報を与える
 e.今日、今週、今月の出来事についての記憶喪失
    f.過去1年、その前後の記憶喪失を起こす、年単位
    g.全ては変わっているという感覚、過去を思い出し、同時にそれが積み重なって遠い現在に居るという感覚、
 h.特定の年齢の心地よい経験、感覚を思い出す
 i. 過去だけではなく、現在、未来にもこの心地よい感覚を持つだろう感覚を持って目覚める
4.8歳から18歳までの経験で上を繰り返し行う

 ざっくりメモだけしておくとこんな感じだ。

 後にエリクソンは退行催眠を使う場合、特定の出来事が起こる直前まで退行させて、そこからメタ認知あるいは感覚を解離させた状態で時間を進行させ、リフレーミングするなり、時間歪曲や健忘を使うなりとしているところがある。要は、経験のコンテンツを利用するが、実際には経験を構築するプロセスに介入する方法だということだ。この、詳細については今後の愉しみにとっておきたい。

    さて、退行催眠というどうしても虚偽記憶の問題があるが、エリクソニアンのマイケル・ヤプコの「Trancework」に虚偽記憶に陥らずに退行させる方法について書いてあった記憶がある。要は、虚偽記憶をつくらない方法は分かっているのでクライアントの利益第一で安全にやりなさいということだ。
  

随考

   ミルトン・H・エリクソン財団からお知らせが来ていたのでご紹介しておこう。

 今年の12月13日〜17日、米国カリフォルニア州のアナハイムで、心理療法家の祭典である「The Evolution of Psychotherapy 」が開催予定となっている。

  4年に1回の開催だが、エリクソニアンな方々は言うまでもなく、 第一回の開催からご参加の重鎮中の重鎮であるアーロン・ベックやACTのスティーブ・ヘイズ・・・・・とかなり流派横断になっているところが面白いところなのだろう。
 

4月28日の進捗、938ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 35.4%)

Volume III
HYPNOTIC   INVESTIGATION OF   PSYCHODYNAMIC PROCESSES

Literalness and the Use of Trance in Neurosis Milton H. Erickson and Ernest L. Rossi Dialogue between Milton H. Erickson and Ernest L. Rossi, 1973.

Age Regression: Two Unpublished Fragments of a Student’s Study
 Milton H. Erickson Written between 1924 and 1931.



(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html

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