2017年4月24日月曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 114日目


                                                                                                                            
     企業にテレビの取材に来ると、

 従業員は意識過剰で、つい普段とは違う振る舞いをしてしまう、

 エリクソンならトランス状態をつかって普段と同じようにしてもらうところ(笑)。

 <ひとりごと>



はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 114日目について書いておきたい。


様々な健忘、記憶喪失

 「Varieties of Hypnotic Amnesia (1974)」から。著者はミルトン・エリクソンとアーネストロッシ。内容は、種々の健忘、記憶の喪失について。

 今日のところは、気のそらしによる記憶の喪失、それと間接暗示による記憶の喪失の途中まで。時系列的にエリクソンとロッシは一番後に来ているため、おそらく研究の精度がエリクソンの論文の中では一番高い。


 さて、ここで少し 記憶の喪失(Amnesia)についてまとめておきたい。

催眠現象としての記憶の喪失についての定義

 古典催眠:忘れること、ただし何かの手がかりで思い出したり忘れたりできる
 エリクソニアン:意識に上らない反応で、何かの手がかりがこれを可能にする

エリクソニアンがこれを活用する理由

 クライアントに対する意識的過ぎる見立てを廃するため
    クライアントの見立てに確信を持つため
 クライアントの無意識と直接やりとりするため
 クライアントの記憶の構造を見立てるため
 クライアントの記憶の構造を学習するため
 
  →誘導によるトランス時の反応が観察される

いつ活用されるか?

 トランス誘導の後
 トランスから覚める時
  ・トランス中の記憶を忘れる
  ・トランス前からある記憶の一部を忘れる

催眠現象として安全な記憶への働きかけ

 1.記憶の構築:退行、幻覚、後催眠暗示、自動書記 (※虚偽記憶に注意)

 2.記憶の歪曲:記憶増進、時間歪曲、鎮痛

 3.記憶を忘れる:記憶喪失、負の幻覚、感覚喪失


直接暗示でも可能、ただし間接暗示がより適している
 
 
・・・・・・・・・・・・・

 面白いのは、エリクソンが記憶の喪失を使う理由の一つはクライアントに「よそ行き」ではない本来の反応をしてもらうため、というのが案外興味深い点だ。人は何かを意識するとついついこうなる。


随考

  昨日、エリクソンのメタファーについて書かれている「Metaphoria」を読み返してみた。メタファーは文字通り隠喩ということになるが、エリクソンの技法としては間接暗示に分類され、クライアントが現在の認識の枠組みを越え、新しい振る舞いを身につけるような変化を導くために使われる技法の一つでもある。現在であれば、この理屈は認知言語学で説明することが可能だろう。

 もちろん、これは我々が日常生活で使うメタファーや物語が認識の枠組みや行動に働きかける力がいかに大きいかを示している証左でもある。大きな声では言えないが敗戦後GHQが行ったことは、日本人から神話を教育現場から取り上げることだった。もちろん、この施策に人類学者のマーガレット・ミード、ルース・ベネディクト、グレゴリー・ベイトソン達がOSSを通して関係していることは想像に難くない。同じ神話を共有できていない組織は弱くなる。

 さて、「Metaphoria」の中で、多重埋め込みメタファー(multiple embedded metaphor)という技法が紹介されている。もちろんエリクソンは体系を残していないので正確に言うと、エリクソンの弟子筋にあたるスティーブ・ランクトン夫妻によって体系化された概念だ。

 多重埋め込みメタファーは、セラピストがクライアントに「入れ子構造」のストーリーで構造化されたメタファーを話す技法だ。目的は、クライアントの抵抗を押さえ、無意識からリソースを取り出し、問題を解決するために何をすればよいのか?を間接的に暗示するという具合だ。

 「入れ子構造」の典型的な例は、Aという物語での登場人物が、新しいBという物語を語り始めるような構造のことを言う。

 典型的なフォーマットは以下になる、もちろん、それぞれのストーリーに盛り込まなければいけない要件はある、





  • 催眠誘導(正式に行う場合と、行わない場合がある)
  • ストーリーA(始まりと展開)
  • ストーリーB(始まりと展開)
  • ストーリーC(始まりと展開、ストーリーCの完了)
  • ストーリーB(完了)
  • ストーリーA(完了)
  • 最方向づけと、誘導の完了

  •  
     さて、ここから本題に入るが、ランクトンはこの多重埋め込みメタファーを使って、記憶の喪失(Amnesia)を引き起こすことが可能だとしている。

     もちろん、これを行うためには2つのポイントがあるがここでは書かない。興味がある方は原書を当たってみるとよいだろう。

     本題の「記憶の喪失」に戻るが、ここで言いたかったことは、多重埋め込みメタファーも「記憶の喪失」を引き起こすための一つの技法に成りうるということだ。また、この技法はある程度きちんとクライアントを見立てることができれば、次回の面接までにセラピストが論理的に話を構築できるため、ある意味、頭のいい人が手間暇かければ出来る方法ということにもなるだろう。

     もちろん、会社のプレゼンテーションなどでも反対派の抵抗を抑えて認識の枠組みや行動の変化を導く、といった用途でも用いることができる技法でもある。この場合も、ストーリーが人の認識の枠組みや行動にいかに強く働きかけるのか?が分かることにもなる。
     

    4月24日の進捗、908ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 34.3%)

    Volume III
    HYPNOTIC   INVESTIGATION OF   PSYCHODYNAMIC PROCESSES

    The Problem of Amnesia in Waking and Hypnotic States Milton H. Erickson Unpublished manuscript planned with André Weitzenhoffer, circa 1960s.

    Varieties of Hypnotic Amnesia
    Milton H. Erickson and Ernest L. Rossi Reprinted with permission fromThe American Journal of Clinical Hypnosis, April, 1974, Vol. 16, No. 4.


    (つづく)

    文献
    [1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html

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