2017年4月9日日曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 99日目


                                                                                                                            
 散漫と「退行催眠」をやっても、

 虚偽記憶が出来たり、嫌な経験が増幅される方向だと

 むしろ有害ということなのだよなぁ(笑)。

 <ひとりごと>



はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 99日目について書いておきたい。


時間歪曲の臨床的な応用
     「Clinical and Therapeutic Applications of Time Distortion(1954)」から。著者はリン・クーパーとミルトン・エリクソン。

          「時間歪曲」を治療に活用するこの論文で紹介される最後の事例で難事例。

     クライアントFの事例:退役軍人の20代半ばの男性。この男性は退役後18ヶ月後にメンタルが悪化。軍経験者特有の同性愛への恐怖、広場恐怖症、閉所恐怖症、さらには女性恐怖症を発症。通常の心理療法ではほとんど効果がなかった。このクライアントに「時間歪曲」の技法が適用される

    ・・・・・・・ 

    随考

       結局、一般的な催眠の技法としての「時間歪曲」の要点は何なのだろうか?

     これをまとめると「Medical Hypnosis Primer」に書かれていることに帰着する、


    Hypnositc interventions therapy can produce helpful perceptual changes in the pain experience by suggestion for movement or displacement of pain ,amnesia for pain, and altering anticipation. Hypnotic techniques of time distortion may be used to lengthen the interval between pains and shorten the duration of pain . Distraction, shift the attention to an external focus ,or internal distraction involving mental work can be useful.

    催眠術の介入療法は、疼痛の移動または排除、疼痛の記憶喪失、および予期の変更の暗示によって、疼痛の経験における有益な知覚変化を生じさせることができる。 疼痛の間隔を長くし、疼痛の持続時間を短縮するために、時間歪曲の催眠技術を使用することができる。 気を散らしたり、注意を外部の焦点に移したり、精神的なワークを伴う内部の気晴らしが役に役立つ。

     
     加えて、エリクソンの場合の特徴は個人的には3つある、と考えている。一つは、催眠現象としての「時間歪曲」をユーティライズする。つまり、クライアントの反応を観察して「時間歪曲」を利用したほうがよいと判断された場合はそれを利用する。要は、鮨屋の親父が客の顔を見て一番おすすめの鮨を握っている感じだ。

     二つ目は、直接暗示ではなく間接暗示を使ってクライアントの知覚を「時間歪曲」に導くということになる。このあたりは、「Time Distortion in Hypnosis」に詳しい。昨日再読してみた。これに関連してエリクソンの場合は時間の起点、つまり時刻を示唆する「Now !」の使い方が非常に匠だ。

     三つ目は、必ずしても物理的な痛みだけに適用していない点だ。クライアントの主観から意味付けされた嫌な記憶、これにも適用されている、ことが分かる。 

     「時間歪曲」の技法からすると、アンチパターンとして、散漫とクライアントを過去に退行させて、(コンテンツとしての)嫌な記憶を思い出させても、意味がないどころか、むしろ逆効果であることが再認識できることになる。要は、嫌な記憶は喪失出来ないにしてもそれが永遠と続くのではなく、非常に短い経験だった、実はあまりよく覚えていない、との知覚として経験あるいは認識に変化することで、現在から未来の予期が変わる、ということになる。

     もちろん、エリクソンは、リン・クーパーとの共著ではあるが、著作として1冊残しているということはそれだけ「時間歪曲」の催眠現象とその利用について注目していた証左であるのだろう。

       余談だが、ネットに落ちていた「Effect of hypnotic time distortion upon free-recall learning(1974)」というタイトルの論文を読んでみた。これはこれで面白いのだが、要はジークムント・フロイトのやっていた自由連想を行ってもらう時に、「時間歪曲」を使えば短い時間でも長く感じることができるよ、という趣旨の論文だ。エリクソンの著作からは24年ほど後になるのだが、単にフロイトの時代に逆戻りしているだけ、というのがわかり、逆にエリクソンの先進性が際立つ結果になるのは面白いところだ。

     さて、「必殺技」みたいなことを言い始めると、その技だけあればなんでも可能のような誤解を与えかねないのだが、技法のバリエーションとしての「時間歪曲」はかなり大技の部類には入るのだろう。クライアントの状況をきちんと見立てて使う、というのは基本中の基本なのだろうが・・・
      
     
    4月9日の進捗、788ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 29.8%) 

    Volume 2 : HYPNOTIC ALTERATION   OF SENSORY, PERCEPTUAL    AND PSYCHOPHYSIOLOGICAL   PROCESSES

    Clinical and Therapeutic Applications of Time Distortion 
    Milton H. Erickson Written with L. Cooper. In Time Distortion in Hypnosis. Baltimore: Williams & Wilkins, 1954. 


    (つづく)

    文献
    [1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html


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