2017年5月20日土曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 140日目


                                                                                                                            
 自己ってなんだろうなぁ?

 我、結ばれ合う故に、我あり。

 システム論的に定義しはじめると案外むずかしいなぁ(笑)。

   <ひとりごと>




はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 140日目について書いておきたい。


言葉からの連想と動作、感情の反応
 
「Study of Hypnotically Induced Complexes By Means of the Luria Technique (1934)」
から。著者はポール・ヒューストン、ディビッド・シャコウ、ミルトン・エリクソン。

 これは初期のエリクソンの論文だがかなり真面目に心理的なテストを行っている様子が分かる。

 概要を書いておくと、こうだ。方法としてはルリア法を使う。ここではルリア法は手のひら等の動作を使い感情の葛藤を解消する方法とある。そして、まずは被験者から話を聞く、ここで出た単語を色々洗い出す。まずは、覚醒した状態で、ここで出た単語を被験者に話、言葉と同時にタンブラーを握ってももらってその圧力など動作をキモグラフで測定する。
 
 また、この被験者を催眠状態にして同じ単語にどのように反応しているか比較をする。

 簡単にいうとこんな感じだ。実際には実験なので細かい条件があるがここでは詳しくはかかない。

・・・・・・・・



随考

 一時期、オントロジカル・コーチングに興味があった。

 オントロジカルは哲学のオントロジー(論在論)から来ているが、クライアントの認識や行動の変化を支援するには、やはりこのあたりから考える必要に思えたからだ。昔、仕事の案件で少し関わったオントロジー工学の影響も少しはあるかもしれない。

 さて、オントロジカル・コーチングの祖とも言われるUCバークレーで哲学を教えているフェルディナンド・フローレスがチリ出身であるためかもしれないが、同じチリ出身のウンベルト・マトゥラーナやフランシスコ・ヴァレラのオートポイエーシス論をそのベースにしているところがある。もちろん、理屈から演繹的に方法を作り出すというのもあるのだろうが、卓越性を発揮している人の技法を帰納的にオートポイエーシス論のようなシステム論で形式知化するのもあると思っている。

 それで、オーストラリアあたりにでも行ってトレーニングを受けようと思っていたが、実は、今はそれほど興味がなくなってしまったところがある。

 理由は代案としてミラノ派、カール・トムの質問が使えるようになったからだ。こちらは、ベイトソンの第二次サイバネティクスがベースだが、ほぼオートポイエーシス論と同等と考えてよいだろう。Wikipeidaの Second-Order Cybernetics の項目にはは、オートポイエーシスは同化と書いてある。流れは、ミルトン・エリクソン→グレゴリー・ベイトソン(MRI)→ミラノ派家族療法→カール・トムの質問システム、となる。

 それで、カール・トムの「Recent Developments in Therapeutic Conversation(2007)」というスライドがネットに落ちていたので読んでみたが、これが中々面白かった。

 オートポイエーシス論では普通の人でも読みやすい「知恵の樹」にこういったことが書いてあった。「言われたことの全てにはそれを言った誰かがいる」。この関連はこのあたりで少し書いた。当たり前の話だが、案外、人というのは言いたいことだけ言ってその相互作用や円環的な影響を忘れているところがある。

 このスライドではコミュニケーションの相互作用のようなところから話が始まる「批判される⇔抗議する」「他人を批判する⇔自分を批判する」「許しを乞う⇔寛大に許す」というように人間関係のコミュニケーションは基本円環的である。さらに良い意味でも悪い意味でも関係者を巻き込んでいくのが面倒くさいところだ。

 そして、「自己とは何か?」との定義を始めるのだが、面白いことにここでモデルとしてオートポイエーシスを持ってきている。つまり、「自己とは世界との関わりにおいて出現する何かである」という具合だ。これは、「知恵の樹」の一人の著者であるフランシスコ・ヴァレラが晩年フランスに渡りカトリックから中観派の仏教に宗派替えをしたのと関係があるようにも思ってくる。要は、種々の関係性から独立して存在している自己というのは無いということだ。

   もっとも、カール・トムは仏教徒ではないが、オートポイエーシスのモデルを持ってくると「自己」が中観派仏教ぽくなって格好がよくなる、と個人的には思っている。あくまでもぽくなるということだが。もちろん、自分さえ強ければ、自分さえしっかりしていれば、なんとかなるとはいかないところが世の中の難しいところだ。「朱に交われば赤くなる」ではないが、文脈や人間関係は確実に「自己」に影響を及ぼすことになる。

 結局は、「周りとの関わりとは独立で固定化された自己」というようなものはない、自己は周りとの関係性の中で現れるものであるというような具合だ。ただ反対に言うと、変化は可能だ、ということだ。

 だから、カール・トムのスライドでは3種類の質問が書かれている。ひとつ目は、他人についてどう思うか?二つ目は、他人どの関係をどう知覚・認識しているのか? 三つ目は、それらを自分の中にどのように取り込んでいるのか?ということになる。これを少し言挙げして意識してみる。そしてこれを仮説でもよいので変わったところを想像してみるという具合だ。

 もちろん、これをマトゥラーナやヴァレラのような生物学的な見地のオートポイエーシスで見るのか、ニクラス・ルーマンのような社会システム論的なオートポイエーシスで見るのか?は違いがあるだろう。

 さらに続く、カール・トムのスライドに戻るとPIPと定義された「自分を非難し貶める⇔他人を非難し貶める」というコミュニケーションのパターンからHIPと定義された「自分を認めて信頼する⇔他人を認めて信頼する」というパターンに置き換えられるようにコミュニケーションや振る舞いのパターンを変化させるためには?何をしたら良いのか?というのがテーマになっていることになる。

 要は、コミュニケーションの相互作用のパターンを変えることで「自己」が変化するということなのだろう。昔から「人を呪わば穴二つ」という諺があるが、これがサイバネティクス的に裏付けらているということになる。

 もちろん、相手を非難している時は、相手の中に自分自身の憎たらしいところ見ており、このシンメトリカルな関係がエスカレーションしているわけだろうし、反対に、相手とよい関係にある場合は、相手の何に自分にないよいところを見て、コンプリメンタリーなよい関係が築けているということでもあるだろう。だから、相手に自分の持っていない優れたところを見つけてみようというところから出発すると、それはそれで面白い。もっとも、現実世界ではここに、メタ・シンメトリカルやメタ・コンプリメンタリーの関係が入ってきて少しややこしくなるのだろうが(笑)。

   詳細は「KARL TOMM’S APPROACH TO SYSTEMIC PRACTICE 」を読んで見るとよいと思うが非常に興味深いところでもある。

 もちろん、ミルトン・エリクソン→ベイトソン(MRI)→ミラノ派家族療法→カール・トムの質問、を遡及して、エリクソンが何を見立てて、どのような仮説をつくり、どのように介入していたのか?というのが個人的なテーマでもあるだが、ここでベイトソンの「A Pattern That Connects.(結ばれ合うパターン)」というのを思いかべるとかなり深いテーマであることも分かってくる。

 
5月20日の進捗、1104ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 41.7%)

Volume III
HYPNOTIC   INVESTIGATION OF   PSYCHODYNAMIC PROCESSES

Study of Hypnotically Induced Complexes By Means of the Luria Technique Paul E. Huston, David Shakow, and Milton H. Erickson 1 Reprinted with permission from The Journal of General Psychology, 1934, Vol. 11, pp. 65-97.









お知らせ:

ミルトン・エリクソンの本質を突き詰めたから分かったことがあります。

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「変化・創発ファシリテーション」のオンデマンド、オンサイト講座を開始いたします。

詳細は、こちらから。


(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html


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