2017年5月24日水曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 144日目


                                                                                                                            
    コミュニケーションの公理的に表現すると、

 物語を語らずにいられるわけはない(笑)。

 日常生活や仕事の場面でも大いに役立つ。

   <ひとりごと>




はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 144日目について書いておきたい。


実験として誘発される神経症のための複雑なストーリー
 
 「The Method Employed to Formulate a Complex Story for the Induction of an Experimental Neurosis in a Hypnotic Subject (1944)」から。著者はミルトン・エリクソン。

 エリクソンはクライアントの認識の枠組みや行動の変化を支援するために、クライアントを催眠下において、メタファーやストーリーを話すというようなやり方で治療を行うというようなスタイルで知られている。

 それで、このようなやり方がいつ始まったのか?は昨日書いた1935年に書かれた早漏の男性を治療した時にストーリーが使われた話あたりからということになる。このあたりではエリクソンは経験と勘でこのストーリーをつくっているように思われる。

 この論文ではそれから10年弱立っているが、人類学者のグレゴリー・ベイトソン、マーガレット・ミード他に相談しながら、一体どのようなロジックでこのストーリーがつくられているのか? 

 催眠下で話されるどのコトバのフレーズがどのようにクライアントに影響を与えているのか?推測されているのがこの論文の趣旨となる。

 それで、今日のところは、その出だしとなっている。現在は、このあたりのことはメタファーのロジックがアブダクションであるとか、具体的にメタファーをどのように作成してどのようにデリバーすればよいのか?はかなりのところが明らかにされているところがあるが、エリクソンがそれを経験的に発見している、というような内容でもある。

・・・・・・・・・

 余談だが、ネットに「Metaphoric Structure in Mind and Nature」というタイトルの少し怪しい文章が落ちている。これはリチャード・コップのメタファーについて書かれている。エリクソンはクライアントを見立て、エリクソンがメタファーをつくり、そしてクライアントにエリクソンが語りかけているが、コップの場合は、クライアントに質問をしてクライアント自身にメタファーを作成してもらうような形式になっている。ある意味、コロンブスの卵的なパラダイム・シフトでもある。現在の、メタファー・オブ・ムーブメントやクリーンランゲージにつながる話になってくる。

 このあたりの全体から見た流れは「Metaphoria」か、ランクトンの「The Answer Within」あたりを読むと体系的なことが分かるだろう。



随考


―― エリクソンの技法について、個人的にテーマにしていることは何か?――

それは、以下だ。

  • エリクソンは、クライアントの情報の何を収集していたのか?
  • クライアントの世界観と変化の支点をどのように見立てていたのか?
  • 何を基点にどのように介入して変化を起こしていたのか?

これらは、かなり根幹のところだ。突き詰めるとライフワークになりそうな内容でもある(笑)。

 もちろん、「既存の枠組みを超えた認識や行動」を実現するコーチングやファシリテーションにも大いに役立っている。また、コンサルティングのユーザへのインタビュー等でもエスノメソドロジー的な手法で情報収集ができるし、チェンジ・マネジメントでもユーザの組織の変化を支援できる手法となる。

―― エリクソニアン・アプローチとミラノ派家族療法を混ぜる意図は?――

 これに関連して、ネットに「Ericksonian and Milan Therapy (1984)」というタイトルの論文が落ちていたので読んでみた。

 まず、エリクソンのアプローチはどこが催眠誘導でどこが深化でどこが介入なのか?というのが曖昧なところがある。プロセスについてはこのあたりで書いた。それがエリクソンの技法を分かり難くしているところがある。おそらくこれが「催眠誘導に成功すればなんとかなる」という誤解を生んでいるように思われる。実際には、催眠現象を利用(Utilize)しながら、適切な介入を行わないと変化が起こることはない。

 ではどうしたらよいのか?ということになるが一つの案がエリクソニアン・アプローチとミラノ派を混ぜるという具合になる。取り敢えず催眠のところだけはエリクソニアン・アプローチを使い、

  • クライアントの情報収集
  • クライアントの世界観の見立て
  • クライアントへの介入
 
 についてはある程度形式知化されたミラノ派家族療法を使うというやり方になる。

 もちろん、ピュアなエリクソニアン・アプローチなのか?というと、そうではないだろうが、少なくともベイトソン的な第二次サイバネティクスをくぐらせて形式知化されたアプローチを源流のエリクソニアン・アプローチと混ぜるというのは親和性という意味では、ありなのだろう。

―― ミラノ派家族療法の特徴を一言でいうと? ――

 ちなみに、ミラノ派の特徴は、❶仮説に基づく(AS-IFを試す)❷円環的質問(円環的因果を含むシステムを考える、間接的な介入)❸中立性(振り回されたり、共依存になるのを防ぐ)ということになる。この論文の影響を受けたわけではないが、自分のコーチングやファシリテーションがこのようなアプローチになっている(笑)。ただし、あくまでも論理的に試行錯誤した結果がこれだ。

―― エリクソニアンとミラノ派家族療法を混ぜた利点は何か?――

さて、このアプローチの利点は何か?おそらく以下のようになるだろう

  • 催眠は使っても、使わなくてもよい、ただし使う場合はエリクソニアンっぽくやる
  • クライアントの情報収集、見立て、介入はミラノ派で行う
  • システム全体を見てレバレッジ・ポイントに介入する
  • クライアント一人が対象でも背景にあるより大きなシステムを考慮できる
  • パラドクス介入、カウンター・パラドクス介入込み
  • 既存の枠組みを越えた認識、行動の変化が起こせる
 
 それで、介入の基点はやはり関係性におく。そして、家族なり組織なりシステム全体を見て、どこの関係を調整すればよいのか?という視点で介入することになり、これが案外格好がよい。クライアントがある人の振る舞いにハラを立てるのも、ある行為を見て悲しく思うの、システム全体の関係性を見て適当なところに介入するという具合だ。仮に、対象がクライアント一人でその人が気にしている問題行動の修正だったにしても、その人を取り巻くより大きな人間関係や組織のシステムへの影響や関係から始めるという具合だ。

 もちろん、これは 最終的には関係性において、コンプリメンタリな関係を強化したり、シンメトリカルな関係がエスカレーションするのを緩めたりということになるだろう。もちろん、場合によってはコンプリメンタリな関係を弱めて「縁切り」ということになるのかもしれないが。

 何れにしても、わけも分からず催眠、催眠というより、情報収集、見立て、介入についてはミラノ派をもってくるというのはありと言えばありなのだろう。これが出来た後で、状況によってエリクソン的な催眠を使えばよい、というだけの話だからだ。
  
5月24日の進捗、1136ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 43.0%)

Volume III
HYPNOTIC   INVESTIGATION OF   PSYCHODYNAMIC PROCESSES

The Method Employed to Formulate a Complex Story for the Induction of an Experimental Neurosis in a Hypnotic Subject Milton H. Erickson Reprinted with permission fromThe Journal of General Psychology, 1944, Vol. 31, 67-84.







お知らせ:

ミルトン・エリクソンの本質を突き詰めたから分かったことがあります。

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詳細は、こちらから。


(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html


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