2017年5月25日木曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 145日目


                                                                                                                            
    X=Y

 一見恒等式に見えるけど、

 これはメタファーで実は円環的因果関係なのだよなぁ(笑)。

   <ひとりごと>




はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 145日目について書いておきたい。


実験として誘発される神経症のための複雑なストーリー
 
 「The Method Employed to Formulate a Complex Story for the Induction of an Experimental Neurosis in a Hypnotic Subject (1944)」のつづきから。著者はミルトン・エリクソン。

 今日は、エリクソン自身が話すストーリーを単語やイディオムにぶつ切りにして解説しているような格好になっている。この頃は、エリクソンに言語パターンの分析の道具立てがなく、何やら自分の感覚をたよりにしているという意味では、おおらかな時代だということだろう。これはこれで面白い。

 この時期、エリクソンの周りにサイバネティストや人類学者は居ても、言語学者はまだ居なかったということなのだろう。

 今や、ロクでもない自己啓発と思われているNLP(Neuro-Linguisitic Programming)が1970年代半ばに開発された時に、UCサインディエゴで博士号を取得した当時新進気鋭の言語学者のジョン・グリンダーが変形生成文法を持ち込んで、エリクソンの言語パターンを分析するまで30年ほど待たなければいけなかった、ということなのだろう。

 もちろん、あまり大きな声では言えないが、NLPが構造主義つまり直線的因果関係でエリクソンの言語パターンを取り出したところが後々変な方向行く要因の一つになっているのだろう。ここらへんで書いたが案外深い話だ。

 逆に言うと、エリクソンの技法を形式知化するテーマは、円環的因果関係をどのようにうまく形式知化するのか?ということにもなってくる。このあたりで書いた。要は、分かりやすい形式で円環的因果関係を取り込んだ方法論のほうが出来がよい、というようなエリクソン派生のブリーフセラピーについての法則めいたものが成り立つことになる。

その意味ではエリクソンのやっていることを形式知化しようと考えると色々難しいことが分かってくる。

・・・・・・・・・


随考

 テーマは、一般的な問題解決とメタファー。

 ミルトン・エリクソンというと、どうしても「催眠」というキーワードが浮かぶ。

 あまり大きな声では言えないが、優先順位の第一に「催眠」を考えるようでは案外センスが悪いようにも思ってくる。まず、普通の人は感覚的に、「催眠」といったキーワードは何か気味の悪いものでしかないだろう。また、普通ではない人が「催眠」導入に成功しても、クライアントの望む変化を導けるわけではない。「催眠に導いてから何をするかを知るために6万ドルをかけました」、オハンロンの本にこんなことが書いてあった。要は催眠を使うにしても、催眠導入に成功してからその後何をするのか?がより問題というわけだ。

問題解決の本質は何か?

 「催眠」というところから焦点を少しそらすと、エリクソンについての色々なものが見えているのも確かだ。これが全てではないが、その一つは、メタファー。エリクソンはクライアントの問題解決のためにエリクソン自身がメタファーを話した。

 間接暗示の一つでしかないが、メタファーであるのは色々な理由がある、一つは直接的表現によるクライアントからの抵抗を避けるため。要は、メタファーは間接的表現であるので抵抗を受けにくい。もう一つは、無意識に持っているドミナント・ストーリーの構造を明らかに、そのドミナント・ストーリーの変化を支援するため、ということになる。結局、既存の認識の枠組みを越えた認識や行動の変化を起こすため、あるいはこの枠組みを越えた解決策を思いつくためには、よく出来たメタファーが必要だということだ。

 オクラホマ州立大学のサイトに「THE USE OF METAPHOR AS A METHOD TO INFLUENCE A DILEMMA-SOLVING TASK(1987)」という論文がリンクされていたので読んでみた。博論の研究の一部として提出されたようだが、テーマは「ミルトン・エリクソンのメタファーの研究」ということになる。

 エリクソンはクライアントの問題解決についてメタファーを使っていたことが知られている。もちろん、現在だとこのあたりは認知言語学の範囲になり、認知科学で扱うことのできる分野だろう。

 この論文は、そういった認知科学の知見は使わずに行ったもう少し実験室でおこなった実験となる。簡単にいうと、被験者にジレンマを含む問題についての話(仮にAとする)を聞かせる。少し複雑な状況設定で簡単には答えが見つからないような物語だ。実験につかった物語は論文の付録に収録されている。

   次に、話Aとは違う、話Bを聞かせる、これは話Aに対してアイソモルフィックにマッピングされた物語だ。もちろん、構造が同じようだとは簡単には分からない話になっている。この話Bも論文の付録に収録されている。

 話Bを聞いた後で、話Aに対して何か問題解決のアイディアが浮かんだかどうかを調査している。おおよそこんな感じの実験を行っているのが論文の趣旨となる。

 余談だが、TEDにメタファーに関する映像が投稿されていて、これを視聴してみると面白い。(日本語字幕あり)


 この映像を参照すると、論文中にあるアイソモルフィックとは、物事と物事の間、ストーリーとストーリーの間に X=Y という結ばれ合うパターン( A pattern that connects)を見出している行為だということが分かってくる。もちろん、この「=」は円環的因果関係でありかなり深い話にはなってくる。このあたりで書いた。

 もちろん、メタファー自体には良い悪いということはないが、よいメタファーやストーリーは問題解決や枠組みを越えた革新的なアイディアを生み出す助けになるということだろう。もちろん、パラドクスを解決する場合は、よいメタファー自体に変なパラドクスが含まれていたりするのだが(笑)。

5月25日の進捗、1142ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 43.1%)

Volume III
HYPNOTIC   INVESTIGATION OF   PSYCHODYNAMIC PROCESSES

The Method Employed to Formulate a Complex Story for the Induction of an Experimental Neurosis in a Hypnotic Subject Milton H. Erickson Reprinted with permission fromThe Journal of General Psychology, 1944, Vol. 31, 67-84.







お知らせ:

ミルトン・エリクソンの本質を突き詰めたから分かったことがあります。

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「変化・創発ファシリテーション」のオンデマンド、オンサイト講座を開始いたします。

詳細は、こちらから。



(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html


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