2017年5月27日土曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 147日目


                                                                                                                            
 家族療法の技法を使えるようになると、

 グループや組織を生命を持ったシステムとして捉えられるようになる。

 その状況に生命がどのように適応してきたのかが理解できるようになる。

   <ひとりごと>




はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 147日目について書いておきたい。


革新的な催眠療法
 
 亀の歩みはノロイかもしれないが、毎日だけ少しだけ進めば、少しだけゴールに近づいていっているのはその通りだ。もちろん三歩進んで二歩下がる、という手戻りならぬ、足戻りがあるのかもしれないが、そもそも歩みがノロイし歩幅も小さいので気にならないという具合だ(笑)。

 そのようなわけで、ミルトン・エリクソン論文全集を愉しみながら少しづつ読んでいたら今日から第四巻目に入った。「INNOVATIVE HYPNOTHERAPY」(革新的な催眠療法)というタイトルだ。編者はアーネスト・ロッシ。やはり個人的にロッシが編集した論文が一番自分の趣味あった痒いところに焦点を当ててくれているように思える。

 何れにしても、ここからエリクソンが従来の催眠とは違って一体何をもたらしたのか?という話になってくるのだろう。いつもと変わらず粛々と読んでいく予定にしている。


 余談だが、The American Journal of Clinical Hypnosis の論文の中に「催眠療法」という用語の定義について正確かどうか云々という話はあったように記憶していが、今手元にその論文が見当たらないのでそのうち確認していくことにしたい。

 さて、エリクソンの論文を通して「人間とはそもそも何か?」「組織とか家族とは何か?」「認識の枠組みと行動の変化とは?」「それをどうやってやるのか?」といった、メタフィジックスから具体的な技法まで理解できている気になってきているのも確かだ(笑)。このあたりを真面目に追求することでコーチング、ファシリテーションなどの技量も次元の違うものになってきているのだろう。

・・・・・・・・・


随考

 ―― 晴海埠頭のあたりを散歩すると ――


 東京消防庁の施設が見える。ここの施設が他と少し違って見えるのは、陸と海両方の範囲を担当していることと、敷地が他の消防署と比べて広いということだ。消防車や救急車の他に、埠頭に停められている数隻の消防艇、そして水難救助用のジェットスキーが見える。また、敷地を使って消防庁の職員の方々が消火活動をするために連携して訓練している様子が目に入ってくる。

 ―― 一人ひとりがどのように連携して訓練しているのか?――

 遠目に観察していると、非常によく訓練されておりキビキビ動いているだけではなくチームとしてうまく連携しているのが分かる。個人的には「船上火災が起こった場合、海上保安庁との役割の切り分けはどうなっているのだろうか?」といった疑問がわくが、それもまた組織の縦割りを越えた連携ということではあるのだろう。

―― チームがどのように連携しているか?の良し悪しをどのように調べるのか?――

 これについて、ネットに「How to debrief teamwork interactions: using circular questions to explore and change team interaction patterns(2016)」というタイトルの論文がスイスのチューリヒ大学から出ていた。論文は2016年のものだがこの大学の設立は1525年とかなり古い。

 内容は「医療機関で複数人が連携して医療活動を行うためのチームワークがどのように発揮されているのか?」「問題がある場合は、これをどうみつけ、お互いでどう同意をとり、どう変えていくのか?」これをミラノ派家族療法の知見を使って明らかにしているのがこの論文ということになる。もちろん、医療機関なので担当によって、やってよいこと、いけないことの範囲は決められているのだろうが、そういった法的な制約は考慮しつつも、うまく業務が動かないところは自分たちで変えていくというような内容だ。

  ―― ミラノ派家族療法を遡るとどこに行き着くのか? ――

 ミラノ派は、元々はミルトン・エリクソン→グレゴリー・ベイトソン(MRI)→ミラノ派家族療法という流れで、簡単に言うと第二次サイバネティクスをくぐらせたエリクソンの技法ということになる。少し具体的に書くと、ミラノ派家族療法の円環的質問を使い、各自のやり取りを調べ、そしてうまくいかないところがあれば、お互いが話合い、そして自分たちでそのやり取りのパターンを変えていけるような自律的な組織になることを志向しているところだ。

 もう少し具体的に書くと、カナダにあるカルガリー大のカール・トムのフレームワークが使われている。このフレームワークは2008年に最新版にアップデートされており完全に構成主義ベースになっているが、ここで使われてるのは旧バージョンの構成主義と構造主義の二階建てになっているものだ。余談だが、流れとしては、エリクソン→ベイトソン(MRI)→ミラノ派家族療法→カール・トムの質問、となる。

―― なぜ、TQCを使わないのか? ――

 さて、日本だと「TQC」や「カイゼン」「トヨタ式のリーン製造方式」を使えばよいのではないか?という意見もあるだろう。確かにそうかもしれないが、物事を単純に二項対立で見てはいけない。

 ここで使われている、技法は極端に言えば以下を形式知化した技法だ。

  • 人類学者や心理療法家のように情報収集する
  • やり取りから世界観、文化、価値観を含めた生きたシステムとしての組織を見立てる
  • 介入、あるいは示唆して組織が自らパラダイムの変化を起こせるように支援する

 こういう技術だ。だから、別に「TQC」や「カイゼン」や「トヨタ式のリーン製造方式」と併せて活用してもよいということになる。さらに、ミラノ派を使うことで、人類学者並に企業文化や慣習、信念などを反映して方法論を現場に落とし込める、組織が自律的に学習できるように変化を導けるのでより方法論が深くなるという具合だ。例えば、「TQC」自体は、品質のばらつきをなくすようにサイバネティクス的には、ネガティブ・フィードバック・ループの業務プロセスだ。しかし、これを導入したり、このプロセス自体を変えていくことについては、ポジティブ・フィードバック・ループのチェンジ・マネジメントが必要になるという具合だ。このあたりが生命として組織を扱う時の難しさだろう。一般的に新しい方法論を導入しようとしても組織の抵抗を産む、このあたりに力を発揮するのがミラノ派家族療法の手法だったりするのだ。

 余談だが、トヨタ式の TPS とTPDがどう違うのか?とか語り始めると長くなるので書かない。ただし、TPDのように革新的な製品の企画・設計を行おうとすると、やはり既存の枠組みを超えるポジティブ・フィードバック・ループのプロセスは必要になるだろう。TPDについては、このあたりを参考。

 ―― 組織が自律的に働くようになるためにはどうすればよいのか? ――

 東京消防庁の話に戻る。訓練を遠目に観察しながら、「この組織をより自律的に活性化するためには、どのような質問をしたよいのか?」と思考実験として自分にメタ・クエスチョンを投げかけてみた。これは中々面白い質問だ。決められた答えはないが、コーチングやファシリテーションの練習にはなる。

 もちろん、自律的な組織を活性化させるのは、医療チームや消防のチームに限らず、サッカーチームから始まって、自治会、製造業のグループ、営業チーム、ITの開発プロジェクトチーム・・・・・と様々だろう。もちろん、それぞれに方法論やカタというがあるのは分かるが、人の認識と行動があって、特に集団やグループとなると、

  • 情報収集
  • システムとしての組織の見立て
  • 変化を志向した介入
 
 というのはどこにでもあるわけであり、その意味、「認識の枠組みや行動の変化」を目的として家族療法の知見というのはどのような方法論とも組み合わせて使える技法ということだ。もちろん、源流のエリクソンと言えば「催眠」ということになるのだろうが、一旦第二次サイバネティクスをくぐらせて、認識の枠組みや行動の変化のために「催眠」を不要にした方法というのはやはり応用範囲が広くなっているのは間違いがないところだ。要は、ほとんどの人が知りたいのは「催眠」それ自体の方法ではなく、人の認識の枠組みや行動をどのように理想に向けて変化させればよいのか?というその技法やプロセスなのだろうから。

 それで、自分の所属しているチームや組織が何かうまくいっていない、と感じる場合はミラノ派家族療法のような手法を導入して実際の人間関係の中で人を動かして現状から枠組みを越えた理想を描いてみるのは手なのだろう。個人的にクライアントの変化を支援している技法の一つだ。もちろん、これがコーチングやファシリテーションのスタイルを取るが、その根底にあるのは、ミルトン・エリクソンやベイトソンらの「変化の原理」であることは、あまり大きな声では言えないが、間違いのないことだ。

5月27日の進捗、1158ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 43.7%)

Volume IV
INOVATIVE HYPNOTHRAPY








お知らせ:

ミルトン・エリクソンの本質を突き詰めたから分かったことがあります。

 組織のパラドクスを解消し、組織の認識、行動の変化を支援する、
「変化・創発ファシリテーション」のオンデマンド、オンサイト講座を開始いたします。

詳細は、こちらから。


(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html


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