2017年5月15日月曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 135日目


                                                                                                                            
 普通の人はコミュニケーションの内容である What が気になる、

 サイバネティストはやり方である How が気になる。

 だからダブル・バインドを解くことができる(笑)。

   <ひとりごと>




はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 135日目について書いておきたい。


エリクソン的ジキルとハイド?

 「Permanent Relief of an Obsessional Phobia By Means of Communications With an Unsuspected Dual Personality (1939) 」。著者はミルトン・エリクソンとローレンス・クビエ。

 クライアントは20歳の大学生の女性。この女性は、冷蔵庫、台所のドア、研究室のドア、はたまたロッカーのドアなど、ドアが開いているかもしれないことが気になる強迫神経症だ。

 面白いのは、この女性が起きている時はミス・ディモンとして扱い、催眠中に副人格であるミス・ブラウンという人格で扱うように暗示していることだ。ある意味、ジキルとハイドを地でいっているような、事実は小説より奇なりのようなことになっている。もちろん、ジキルとハイドは善悪だが、ディモンとブラウンは意識、無意識のような関係だ。

 また、催眠に導き自動書記を行ってもらう。

 概要を話すとこのような感じになる。詳細は明日以降。

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 で、この論文の続きをつらつら読んでいたのだが、ネタバレになるので生半可にメモを書かないほうがよい気がしてきた。内容的には『二月の男』と同じくらい面白い内容だ。

 催眠下の自動書記で二重人格的な2人を対話させる。また、鏡を見る(Mirror Gazing)技法を使い、介入している。

    細かい話は保留しておきたい。

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随考

 Youtube に少し素性の怪しい映像が落ちていた。 https://goo.gl/AQVSDi

 早速、視聴してみた(笑)。

 内容は、アンソニー・ロビンズのコーチング・セッションをクロエ・マダネスが解説している映像だ。

 マダネスは著名な家族療法家でジェイ・ヘイリーの元妻でもある。ヘイリーはグレゴリー・ベイトソンのもとでミルトン・エリクソンを研究を開始し、戦略的家族療法を体系化した心理療法家だ、当然、ここにもマダネスが関わっている。流れは、このあたりで書いた。

  余談だが、最近出たMITスローン校の元教授のエドガー・シャインの著作「謙虚なコンサルティング」でもマダネスが紹介されている。ただし、この本では実際の技法はあまり書かれていないので、結局、企業を対象にした「謙虚なコンサルティング」を実現するには、実務では、家族療法等の技法を使う必要がありそうだ。ただし、逆に言うと家族療法の知見が企業のコンサルティングでも活かせるということだ。個人的なテーマの一つでもある。

 一方、ロビンズは素性はよく分かっていないが、ジョン・グリンダーとジュディス・ディロージャがまだ一緒に仕事をしている時にカリフォルニア州サンタクルーズで彼らからNLP(Neuro-Linguistic Programming)を学んでいる。彼らが特に力を入れていたのはモデリングだ。そのためか、おそらくロビンズに技法は色々な技法がモデリングされて混じっているようだ。

 また、日本だともう一人の共同創始者であるリチャード・バンドラーから学んだと言っている人がいるがこれは事実と異なる。事実はロビンズが有名になりつつある時、バンドラーから確か約1億円ほど知財の侵害で賠償金を払うように訴えられている。これが理由で、ロビンズはこれ以降、NLPというコトバを使わずに自身の手法をNAC (Neuro Associative Coaching)と呼ぶようになった経緯がある。

   2002年から、マダネスとロビンズは、「戦略的な介入」をコンセプトに一緒に仕事をしているようだ。さらに、面白いのは、マダネスもロビンズを元を辿るとミルトン・エリクソンに行き着くということだ。

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 さて、このコーチングでの、クライアントは夫の関係が険悪で自殺衝動にかられている女性だ。途中からこの女性の夫も参加する。その意味ではコーチングだが、家族療法的な技法が使われていることになる。

 それで、興味深いのはマダネスがロビンズが一体何を見立て、どのように介入しているのかの解説をしているところだ。要所要所でマダネスの解説が入る。

 ここでのテーマは夫婦関係におけるコミュニケーションの(統合失調症的)なダブル・バインドにどのように見立て、そして適切に介入して、これを解消するのか?となる。

 ダブル・バインドは2種類ある。ベイトソンらが体系化した統合失調症の原因仮説としての統合失調症的ダブル・バインドとエリクソンが治療技法として使っていた治療的ダブル・バインドだ。このあたりで書いた。

 もちろん、マダネスは、ダブル・バインド解消するロビンズの介入がパラドクス介入だと見抜いている。これについては個人的な見立てとまったく同じだ。このあたりで書いた。

 余談だが、パラドクス介入の学術的なまとめについては「PARADOX-BASED TREATMENT」あたりが参考になるだろう。アドラーにしても、フランクルにしても、クライアントに大きな変化が起きるのはパラドクス介入が成功した時のようだ。最近はアドラー・ブームのようなことになっているが、パラドクス介入が出来るのかが案外本物のアドレリアンと俄アドレリアンを見分けるポイントになるようにも思われる。

 あまり大きな声では言えないが、同様にロビンズの介入の本質の一つもパラドクス介入だ。だから、彼の言葉尻を真似する中途半端なコーチは大勢いるが、問題の本質にあるパラドクス見立て、パラドクス介入、もしくはカウンター・パラドクス介入が出来ないと効果は出ない。おそらく日本でロビンズを信奉しているコーチのほとんどはこれを知らないだろう。だから、大人数を集め、ダンスをしてハイタッチを繰り返してもたいした変化は起こらない(笑)。洗脳洗脳と叫んでいる人もいるが、残念ながら程度が低すぎてそうはならないだろう。

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 さて、この映像を見ていて思うのは、ロビンズはアカデミックな家族療法家と比較するとその技法は中の下くらいのレベルだろう。根拠は何年か前のブリーフセラピー・カンファレンスかエリクソニアン・コングレスに参加した人から、ロビンズのセッションの途中で席を立つ人が多かったと聞いている。やはり、博士号持ちの人間には釈迦に説法であまり興味深いものではないのだろう。

 逆に、賛否はあるだろうが、面白いのは、家族療法的なコーチング・セッションをジェイ・エイブラハムのマーケティングを駆使し1,000人以上入る会場で「プロレス興行」として成立させたことだろう。家族療法の前提知識のない人が見ていても、人情話あり、下ネタあり、挑発あり・・・と飽きない内容だ。もっというと、大量に集客して濡れ手に泡で儲かるビジネス・モデルを開発したということだ。これだけが、ロビンズのイノベーションということになる。もっとも使っている技法は見切れているので、自分で参加しようとは思わない(笑)。結局、個人的にはクライアントの有益な技法にしか興味がないので、学術論文を読んで自分で試したほうが確実で安上がりだからだ。

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 さて、個人的には同じようなことは普通に可能だが、このケースだとおそらくミラノ派家族療法を使って地味にパラド、クス介入やカウンター・パラドクス介入をやるので、クライアントに変化は起こるが、見ていても面白くないだろう。つまり、「プロレス興行」としては成立し難いということだ。中立が自分のスタイルだから仕方ないと言えば仕方ない。ただし、濡れ手に泡とはいかないが、地味でもクライアント第一でクライアントの望む変化は起こせるということだ。もっとも、隠し玉として挑発療法を使う方法はある。こちらは見ている人も面白いと言えば面白いし、ロビンズのやり方に近い。もっとも、このあたりはベイトソンの同僚でスタンフォードでも教えていたウオツラィックらのエリクソンのような催眠を使わずに「質問とリフレーミングだけで人は変化できるのか?」という話につながってくる。案外深い話だ。

 余談だが、Youtubeのコメントに「解説の(マダネスの)声を消して欲しい」という書き込みがある。興味深いのは、普通の人がいかにWhatとしての表層的なコンテンツにしか目が言っていないということだろう。ここでのテーマは、普段は意識に上がっていない How としてのコミュニケーションを変えて(統合失調症的)ダブル・バインドをどのように解消するのかだが、そういったことにはまったく興味がないということなのだろうから。

 何れにせよ、マダネスと同じ視点から、ロビンズの技法を観察してみると、本質的なところが分かってくる。あとは、どういうスタイルでどこにどのように介入するか?ということになる。もっとも、ロビンズの話をすると、技法というよりいかに集客して収益を上げるのか?というビジネス・モデルの話になるのかもしれないが、技法が今ひとつな分こちらは一流だということなのだろう(笑)。もっともお金を稼ぐことは否定しないが、倫理的なところは考慮しながら、クライアントに与えている価値に見合っているのか?という視点は必要なのだろう。


5月15日の進捗、1066ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 40.3%)

Volume III
HYPNOTIC   INVESTIGATION OF   PSYCHODYNAMIC PROCESSES

Permanent Relief of an Obsessional Phobia By Means of Communications With an Unsuspected Dual Personality
Milton H. Erickson and Lawrence S. Kubie Reprinted with permission from The Psychoanalytic Quarterly, October 1939, Vol. VIII, No. 4. 






お知らせ:

ミルトン・エリクソンの本質を突き詰めたから分かったことがあります。

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「変化・創発ファシリテーション」のオンデマンド、オンサイト講座を開始いたします。

詳細は、こちらから。

(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html


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