2017年6月12日月曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 163日目


                                                                                                                            
 
 老子いわく、

 もっとも優れた君主のもとでは、人民は君主が存在することすら忘れている(笑)。


   <ひとりごと>




はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 163日目について書いておきたい。

成功した催眠療法が失敗する時

「Successful Hypnotherapy that Failed (1966)」から。著者は、ミルトン・エリクソン。

 歯科医師会での講演の前に45歳男性のクライアントを診てくれるようにエリクソンが頼まれ、それを引き受ける。この男性の病歴が案外深い、10歳前後の時、歯の痛みを訴えて歯の治療を行いに歯科医のところにいく。歯は治るのだが、はを磨こうと口に歯ブラシを入れると吐き気を催すようになる。

  23歳の時恋に落ちる、女性とキスをするようになるが、唇に何か触れると吐き気を催す。さらに悪いことには、手に何かを持つと吐き気を催すようになる。あまり歯を磨かなくなり、この歳で総入れ歯ということになる。

 ただし、このあたりから入れ歯を入れても吐き気を催すようになる・・・・というクライアントだ。エリクソンはこの男性について治療に入るという具合・・・・

・・・・・・・・・・・・・・

症状を解消するための視覚的な幻覚

「Visual Hallucination as a Rehearsal for Symptom Resolution」。内容は1970代に、アーネスト・ロッシがミルトン・エリクソンに口頭でインタビューした録音を起こしたもの。

 内容は、症状を解消するための催眠的な幻覚。クライアントは10歳の男の子。エリクソンの事例としては典型的なおねしょの症例。両親はこの男の子に「おねしょが治ったら犬を飼ってもよい」と約束をすることになるが、エリクソンは「犬を飼っている様子」というのを催眠の幻覚で臨場感を持って体験させる。そして、犬を飼っている=おねしょが治っている、ということを間接暗示で示唆し、かつおねしょをコントロールすることを学ぶような形式になっている。

   フォーマルな論文ではないが、逆に細かいノウハウを聞き出しているような格好にはなっている。


随考

―― ミルトン・エリクソンのてつがく?――

 ミシェル・リッターマンの「The Philosophical Position of the Ericksonian Psychotherapist」というのを久しぶりに読んでみた。

 ミルトン・エリクソンの哲学は何だったのか?を推測しているエッセーだ。

 エリクソンは面白いことに自分で形式知としての体系を残していない、もちろん哲学もだ。だから、弟子筋にあたる人間は「エリクソンはおそらくこう考えていたに違いない」と、「忖度」しなければいけない格好になっている。逆に言うと「ミルトン・エリクソンの哲学」と言われているものは、ある意味、弟子筋にあたる人たちが勝手につくったものだ。
 
 こう考える見えてくるのは、「エリクソンは背中を見せて仕事していていた」ような人だったということだ。クソジジイにありがちな説教はない。自分の思い込みも語らない。たまにポツリと何か比喩をつぶやく。クライアントは何か深いものだと解釈をはじめる。だから、おそらくウザったくない人だ。

―― ミルトン・エリクソンの哲学は存在しない――

 そう考えながら、リッターマンがエリクソンの背中から感じ取った哲学がある。弟子筋で共有されていることもあれば、共有されていないこともあるだろう。エリクソンの哲学というのは無い、あるのはエリクソンの背中を見て、どう解釈したのか?という弟子筋の哲学だけだということになる。その意味、この構図が面白いところでもある。

  1. セラピストは悲観主義者でも楽観主義者ではなく、むしろ現実主義者であるように心がけなさい。セラピストは、既に開いているドアをクライアントが通過するのを助けるようにしなさい。
  2. セラピストは変化が起こる環境を整えることを手伝うだけにしなさい。そこで変化を起こすのはクライアント自身である。
  3. セラピストはクライアントのコトバで話せ。それ以外はない。
  4. 痛みを自分の先生としなさい。
  5. セラピストは、変えられないものを受け入れなさい。
  6. 振る舞いを徹底的に観察しなさい。理論ではなく、この観察がクライアントそれぞれのユニークな状況にどのように介入すればよいのかを教えてくれます。
  7. セラピストは神でありません、ひとりのガイドであることを心に留めておきなさい
  8. セラピストが答えを出す必要はありません。クライアントが心を開いて見たり感じたりする手助けをすることに徹しなさい。

 コンサルタントでもコーチでも同じことが当てはまるのだろうが、結局、エリクソンが形式知化された哲学を残す必要もなかったこと自体を考えると非常に面白い領域に入ってくる。

6月12日の進捗、1284ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 48.5%)


Volume IV
INOVATIVE HYPNOTHRAPY

Successful Hypnotherapy that Failed
Milton H. Erickson Reprinted with permission fromThe American Journal of Clinical Hypnosis, 1966, 9, 62-65.

13. Visual Hallucination as a Rehearsal for Symptom Resolution Milton H. Erickson and Ernest L. Rossi






お知らせ:

ミルトン・エリクソンの本質を突き詰めたから分かったことがあります。

 組織のパラドクスを解消し、組織の認識、行動の変化を支援する、
「変化・創発ファシリテーション」のオンデマンド、オンサイト講座を開始いたします。

詳細は、こちらから。


(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html


記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com

https://www.facebook.com/Okirakusoken-236949276723679


――

0 件のコメント:

コメントを投稿