2017年6月13日火曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 164日目


                                                                                                                            
 
 制約は可能性を開く扉だ。

 プラグマティストだからその扉が見え、

 プラグマティストだからその扉を開くことができる。

   <ひとりごと>




はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 164日目について書いておきたい。

短期催眠療法の特別なテクニック

「SpecialTechniques of Brief Hypnotherapy (1954)」から。著者は、ミルトン・エリクソン。
 
 結論から言うと、実際の現場では、包括的な理論や体系に基づいた心理療法の技法を全ての手順を順番どおりに行えない場合が多い。従って、よりプラグマティックな対応が求められる。

 効果が見込める打ち手を、クライアントの生活の実情、状況に応じて行うことが重要だ、という趣旨で語られているのがこの論文の趣旨だ。

 ある意味、一般的な仕事の場面でも同じだろう。MBAの教科書に書いてあるような手順を1から10まで現場で実行するのは不可能な場面も多い。要は、効果がありそうなところから攻める、あるいは問題や制約条件を逆手にとって状況をよい状態に導くプラグマティストであれ、ということだ。要は、悪いところがあってもクライアントがその状況で活きることを考え抜くということだ。

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 内容は以下のような感じで始まる。
  
    一般的に、神経症を発症するとクライアントは防御的な行動を取るようになる。これは無意識のレベルのプロセスで起こっており、意識して行われているわけではない。それは欲求不満を引き起こす。普段の性格とは違うことを行う場合もある。

 しかし、神経症はむしろ、それはハンディキャップをつけて普段の性格とは異なることを行うことを無効にする傾向がある。このような歪んだ行動の治療は、通常、根底にある原因、あるいは原因と症状の因果関係の修正を前提としている。しかし、このような原因や因果関係の矯正は、適切な治療のためのクライアント側の基本的な意欲だけでなく、治療に役立つ実際の機会および状況が存在することも前提としている。これらの必要条件のいずれかまたは両方が欠如している場合、精神治療目的および方法を再調整して、現実の状況を可能な限り満たす必要がある。

 このような心理療法を試みるには、クライアントの現実と生活状況が包括的な治療の障壁となる神経症の症候について実際に何ができるのかという難しい問題が生じる。この場合、催眠、説得、修復などによる症状の除去の努力は、通常役に立たない。ほとんどの場合、同じ形または別の形で症状が再発し、治療に対する耐性が高まる。

 このような限られた状況下では、理想主義に包括された概念を中心に、治療者が必要とされているものが適切で望ましいものであるという考え方を中心に扱う努力をしている。言い換えれば、代わりに、包括的な療法が一部の患者に受け入れられないという事実認識を与えることが不可欠である。それらの調整の全体的なパターンは、実際の脆弱性に由来するある種の不適応の継続に基づいている。したがって、実際には不可能ではないとしても、これらの不適正な調整は望ましくない。同様に、現実的な時間と状況の制限によって、包括的な治療が不可能になり、そのために患者をイライラさせ、容認できず、実際に耐えられなくなる可能性がある。

 したがって、適切な治療目標は、クライアントが生活状況およびニーズの一部を構成する内的および外的障害の下で、クライアントができるだけ適切かつ建設的に機能するのを助けるものである。その結果、治療的課題は、各患者の固有のニーズを満たすために意図的に神経学的症状を利用する問題となる。そのような利用は、神経性のハンディキャップに対する強い欲求、外的力による治療に課せられた制限、とりわけ、神経症の継続によって障害を受けるのではなく建設的な調整を適切に提供しなければならない。そのような利用は、症状置換、変形、改善、および矯正感情応答の誘発の特別な催眠療法のテクニックによって、以下の症例報告に示される。

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随考

―― エリクソニアン・アプローチって結局何なのか?――
  
  ネットに「Ericksonian Hypnosis: A Review Of the Empirical Data(1999)」という論文が落ちていた。比較的最近書かれたものだが、エリクソニアン・アプローチを経験的データから検証して書かれた論文だ。

 まず、サマリーでエリクソニアン・アプローチには4つの仮定があると書かれている。

  1. 催眠は変性意識状態である。
  2. 変性意識状態は通常の覚めている状態と何らかの徴(しるし)で区別できる。
  3. 被験者の被催眠性は、被験者の被催眠性より実験者がどのように利用アプローチ使ったかにより依存する。
  4. 直接暗示より間接暗示のほうが催眠状態に誘導する際に効果的である。
 しかしながら、社会認知論的な枠組みを導入して検証した結果、必ずしもそうではないことが分かった、と示されている点がこの論文の興味深いところだ。

 ちなみに、催眠に関する学術研究はおおよそ1980年代までに、スタンフォードやハーバードあたりでおおよそやれることはだいたい研究しつくされている感がある。英語版のWikipedia の Hypnotherapy を参照するとおおよその流れがつかめる。ただし、ここで前提としているのは、被験者とセラピストの二者間の関係で、できるだけ標準化されたアプローチを使い被験者にどのような催眠現象が現れるか?というところに焦点が当てられている。つまり、関係性という視点から見るとかなり狭く取られているのが分かる。

 しかし、これが社会システム論のように二者間の関係ではなく、1対多、あるいは多対多のような組織ではどうなるのか?ここは補助線となる理論が追いつかなかったところがあって、現在も発展途上というような感じになっている、と個人的には認識しているところだ。

 さて、この論文では以下の2つの点から調査されているが中々本質的だ。

  • 催眠他のアプローチと比較してどの程度有効なのか?
  • 催眠の中のどの要素が効果的なのか?
 もちろん、これらのアプローチは排他的ではなく他のアプローチと組み合わせて使われることがあると書かれている。

 何れにしてもこれを少し読んで見ることにしたい。

 
6月13日の進捗、1292ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 48.8%)


Volume IV
INOVATIVE HYPNOTHRAPY

SpecialTechniques of Brief Hypnotherapy Milton H. Erickson Quoted from the Journal of Clinical and Experimental Hypnosis, 1954, 2, 109-129, Copyright by The Society for Clinical and Experimental Hypnosis, 1954.







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(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html


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