2017年6月14日水曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 165日目


                                                                                                                            
 
 システム論といっても、第二次サイバネティクスを持ち込まないと、

 最大のインプットが食べ物で、最大のアウトプットがうんこになってしまう(笑)。

 その意味、神経系や社会システムの場合はちょっと発想を変える必要がある。

   <ひとりごと>




はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 165日目について書いておきたい。

短期催眠療法の特別なテクニック

「SpecialTechniques of Brief Hypnotherapy (1954)」から。著者は、ミルトン・エリクソン。
 
 結論から言うと、実際の現場では、包括的な理論や体系に基づいた心理療法の技法を全ての手順を順番どおりに行えない場合が多い。従って、よりプラグマティックな対応が求められる。

 効果が見込める打ち手を、クライアントの生活の実情、状況に応じて行うことが重要だ、という趣旨で語られているのがこの論文の趣旨だ。

 ある意味、一般的な仕事の場面でも同じだろう。MBAの教科書に書いてあるような手順を1から10まで現場で実行するのは不可能な場面も多い。要は、効果がありそうなところから攻める、あるいは問題や制約条件を逆手にとって状況をよい状態に導くプラグマティストであれ、ということだ。要は、悪いところがあってもクライアントがその状況で活きることを考え抜くということだ。

・・・・・・・・・・・・・・・

 内容は以下のような感じで始まる。
  
    一般的に、神経症を発症するとクライアントは防御的な行動を取るようになる。これは無意識のレベルのプロセスで起こっており、意識して行われているわけではない。それは欲求不満を引き起こす。普段の性格とは違うことを行う場合もある。

 しかし、神経症はむしろ、それはハンディキャップをつけて普段の性格とは異なることを行うことを無効にする傾向がある。このような歪んだ行動の治療は、通常、根底にある原因、あるいは原因と症状の因果関係の修正を前提としている。しかし、このような原因や因果関係の矯正は、適切な治療のためのクライアント側の基本的な意欲だけでなく、治療に役立つ実際の機会および状況が存在することも前提としている。これらの必要条件のいずれかまたは両方が欠如している場合、精神治療目的および方法を再調整して、現実の状況を可能な限り満たす必要がある。

 このような心理療法を試みるには、クライアントの現実と生活状況が包括的な治療の障壁となる神経症の症候について実際に何ができるのかという難しい問題が生じる。この場合、催眠、説得、修復などによる症状の除去の努力は、通常役に立たない。ほとんどの場合、同じ形または別の形で症状が再発し、治療に対する耐性が高まる。

 このような限られた状況下では、理想主義に包括された概念を中心に、治療者が必要とされているものが適切で望ましいものであるという考え方を中心に扱う努力をしている。言い換えれば、代わりに、包括的な療法が一部の患者に受け入れられないという事実認識を与えることが不可欠である。それらの調整の全体的なパターンは、実際の脆弱性に由来するある種の不適応の継続に基づいている。したがって、実際には不可能ではないとしても、これらの不適正な調整は望ましくない。同様に、現実的な時間と状況の制限によって、包括的な治療が不可能になり、そのために患者をイライラさせ、容認できず、実際に耐えられなくなる可能性がある。

 したがって、適切な治療目標は、クライアントが生活状況およびニーズの一部を構成する内的および外的障害の下で、クライアントができるだけ適切かつ建設的に機能するのを助けるものである。その結果、治療的課題は、各患者の固有のニーズを満たすために意図的に神経学的症状を利用する問題となる。そのような利用は、神経性のハンディキャップに対する強い欲求、外的力による治療に課せられた制限、とりわけ、神経症の継続によって障害を受けるのではなく建設的な調整を適切に提供しなければならない。そのような利用は、症状置換、変形、改善、および矯正感情応答の誘発の特別な催眠療法のテクニックによって、以下の症例報告に示される。

・・・・・・・・・・・

 色々な事例が登場するが、明日もこの論文なのでひたすら読む。


随考

―― エリクソニアン・アプローチの進化系?――



   ユニバーシティ・カレッジ・ダブリンの大学院で先生をやっているアラン・カーの著作をパラパラ読んでみた。色々な意味で個人的な趣味に合致した著作だ。

 ミルトン・エリクソンの技法が現在はどうなっているのか?

 これを考えると結構面白い。大まかに言うと2つの系統に分けられるだろう。ひとつは、エリクソンの暗黙知を含めたスタイルをそのまま継承しようとするエリクソニアン、当然、催眠あり。もう一つは、第二次サイバネティクスなどのシステム論をくぐらせて徹底的に形式知化された短期療法や家族療法の技法。これは、MRI、戦略的短期療法、戦略的家族療法、ミラノ派家族療法、ソリューション・フォーカスト・アプローチなど。

 結局、学術的な人たちが使いやすい形式を考えると後者ということになるだろう。

 理由は催眠などを含む、「職人技」のような属人性を排して、普通に頭の良い人がシステム論的な技法を身につければ、エリクソンとある程度同じようなことができるからだ。ポイントは、人や組織の認識の枠組みや行動を変化させるには(種々の関係性を変化させる)システム論的な介入が重要であって、催眠ではない、ということが分かるのもよいところだ。こうすることで、怪しくない形式でエリクソンの知見が組織のマネジメントやチェンジ・マネジメントまで応用可能になるという具合だ。

 このもとを辿ると、人類学者のグレゴリー・ベイトソンに行き着く。本書では、「一人の人物として家族療法にもっとも影響与えたのはグレゴリー・ベイトソン」と書かれているが、理由は、以下の3つの貢献だ。これで、エリクソンの変化を支援する秘密も随分分かりやすくなるという具合だ。余談だが、ベイトソンがエリクソンに影響を与えているところもある。その意味、双方向のやり取りで進化、深化しているところがある。
  1. ダブル・バインドの仮説(理論)
  2. 多水準のコミュニケーションの公理
  3. システム論(サイバネティクス)の導入
 1.と2.はお馴染みだが、3.のシステム論を細かく書くと以下になる。もちろん、家族がシステム論通りに動作するというのではなく、家族の性質を説明するためにシステム論をアイソモルフィックなメタファーとして使っているというのが妥当だ。


《境界》
1.家族は境界を持つシステムであり、サブシステムに編成されている。
2.家族の周りの境界は、それが1つのサブシステムである広範な社会システムとは別に設定されている。
3.適応と生存を確実にするために、家族の周りの境界は半透過でなければならない。

《パターン》
4.各家族と各家族のサブシステムの行動は、家族全員をつなぐ相互作用のパターンによって決定される。
5.家族の相互作用のパターンは規則に支配され、再帰的である。 これらの規則は、家族の相互作用のエピソードの繰り返しを観察することから推定され得る。
6.家族の相互作用を説明するときには、円環的因果関係を使用すべきである。

《安定と変化》
7.家族制度の中には、変化を防止し促進するプロセスがある。 これらは形態維持(または恒常性)および形態変容である。
8.家族システム内で、特定された患者である1人のメンバーは、家族が形態形成のための資源を欠いている場合、問題のある行動を起こすかもしれない。 同定された患者の症状は、家族の恒常性を維持するという正の機能を果たす。
9.ネガティブ・フィードバックまたは偏差を減少させるフィードバックは、ホメオスタシスを維持し、形態維持をサブサービングする。

《変化》
10.ポジティブ・フィードバックまたは偏差を増大させるフィードバックは、形態変容を促し、組織の暴走または雪だるま効果につながる可能性がある。
11.システム内の個人や派閥は対称的な行動パターンと相補的な行動パターンを示すかもしれないが、未確認のままにするとシステムが断片化する可能性がある。
12.ポジティブおよびネガティブ・フィードバックは新しい情報であり、違いは新しい情報を生み出す

13.第一次変化と第二次変化との区別が可能である。 システムのルールに従って違うように振る舞い、ルールを変える。

《複雑性》
14.システム理論の中では、一次サイバネティックスと二次サイバネティックスを区別することができる。 観測するシステムと観測されるシステムの間にある。
15.社会システム内では、システムのある部分に存在する再帰パターンは、システムの他の部分で同形的に複製される。
16.社会システムに対する介入の影響については、確率論的陳述だけがなされるかもしれない。



 これで、個々の人の印象的な言動に囚われることなく、より全体論的な観察ができるという具合だ。もちろん、システムのやり取りのパターンを見抜き、変化のレバレッジ・ポイントに介入することが可能となる。
 
 また、一般的な組織のマネジメントにも使える考え方だ。

・・・・・・・・・

 さて、現在は、家族療法も社会構成主義の哲学のもと種々の技法を組み合わせた統合アプローチということになっているようだ。

 もっとも、家族療法から分かるのは、人は人との関わりにおいて傷つき、病的な振る舞いを起こすこともあるが、同じように人との関わりにおいて癒やされたり治療することができるということでもある。システム論と言っても、機械的で無機質なものではなく、生命とは何かを考え抜いた第二次サイバネティクスで形式知化できたからこそ、ということだろう。
 
6月14日の進捗、1300ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 49.1%)


Volume IV
INOVATIVE HYPNOTHRAPY

SpecialTechniques of Brief Hypnotherapy Milton H. Erickson Quoted from the Journal of Clinical and Experimental Hypnosis, 1954, 2, 109-129, Copyright by The Society for Clinical and Experimental Hypnosis, 1954.





お知らせ:

ミルトン・エリクソンの本質を突き詰めたから分かったことがあります。

 組織のパラドクスを解消し、組織の認識、行動の変化を支援する、
「変化・創発ファシリテーション」のオンデマンド、オンサイト講座を開始いたします。

詳細は、こちらから。


(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html


記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com

https://www.facebook.com/Okirakusoken-236949276723679


――

0 件のコメント:

コメントを投稿