2017年6月19日月曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 170日目


                                                                                                                            
 
  小難しい理論をくぐらせると、

  技法はむしろ簡単すぎるくらい簡単になるのだけれど(笑)。

   <ひとりごと>




はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 170日目について書いておきたい。

効果的な心理療法における責任分担

「Burden of Responsibility in Effective Psychotherapy (1964)」から。著者は、ミルトン・エリクソン。

 この論文もかなり深い話になってくる。

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 簡単にいうと、表面上の症状を低減させることを目標にして心理療法を行っても失敗するケースがあまりにも多いということをエリクソンが語っている。逆に、成功する心理療法とは無意識のレベルでクライアントが本当に望む結果を探り、クライアントにその結果に対する責任をクライアントに引き受けてもらう必要があるという具合だ。要は、クライアントの腹に落ちる目標を描いてもらって、それを達成する責任を引き受けてもらわないと心理療法は成功しないというわけだ。

 エリクソンは、無意識レベルで本当に達成したい目標を探るために催眠というのを使う。

 事例が3例出て来る。具体的にはウルトラ・ヘビースモーカーで自分でもタバコの量を減らしたいのだが、従来の心理療法ではなんともならなかったクライアントなどの事例だ。

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随考

―― ミルトン・エリクソンの変奏曲――
        
        エリクソンにも関係あるが、完全に個人の趣味の世界だ。だから、「よゐこのみなさんは真似をしないでね!」ということを予めお断りしなくてはいけない(笑)。

 ネットに落ちていた「An Introduction to some ideas of Humberto Maturana」という論文を読んでいた。

 この前提を少し話しておこう。ミルトン・エリクソン派生の短期療法にMRIの短期療法がある。そしてMRIの短期療法の後にくる療法の一つとしてミラノ派家族療法がある。ミラノ派はエリクソンの影響も受け、かつグレゴリー・ベイトソン(1904-1980)の理論の強い影響下にある。具体的には、ここではベイトソンの理論≒第二次サイバネティクスとなる。ベイトソンはエリクソンと同じ1980年に亡くなるが、その後もサイバネティクスは進化を続けているところがある。

 ミラノ派家族療法は、ベイトソン以外にもチリの生物学者であるウンベルト・マトゥラーナ(1928 -  )の影響下にもあり、実際、サンチャゴの認識理論オートポイエーシス)がどのようにミラノ派に影響を与えているのか?考察しているのがこの論文の要旨となる。

 ベイトソンはグノーシス派の哲学の用語を借りて生命をクレアトゥーラ、非生命をプレローマと区別して考えた。当然、生きているものと非生命とでは色々な意味でその扱いを変える必要があったからだ。非生物の石を投げるとニュートンの法則に従うが、生き物である犬を蹴っても、体をひねったり、踏ん張ったりするので、必ずしもニュートンの運動方程式に従うわけではない、というメタファーで語られていた話を思い出す。

 マトゥラーナこの命題について「生命とは何か?」と深掘りした。そして少なくとも生命システムが満たす4条件として①自律性、②個体性、③境界の自己決定、④入力と出力の不在を提示した、というのがマトゥラーナの功績だ。このあたりは「オートポイエーシス論入門」が分かりやすく解説してある。もちろん、このあたりの話は単なる「論」であり、かんたんにいうと役に立ちそうにもないシステム論のウンチクであり、こう言ってしまうと身も蓋もないことになる(笑)。

 世の中には奇特な人たちもいて、このウンチクを実際の技法として応用しはじめる人たちが出て来ることになる。実装の一例となるのは、上で書いたミラノ派家族療法ということになる。

―― 理論は小難しいけれど、技法は簡素化される――

 その意味、自分が興味を持つ理由は2つある。一つはミラノ派が、ミルトン・エリクソンの技法のシステム論をくぐらせた変奏ということだ。これは、Jazzのスタンダードをコルトレーン・チェンジにくぐらせるとちょっと格好の良い変奏になるのと似ている。システム論をくぐらせることで、エリクソンの催眠+間接暗示は、催眠を使わない円環的質問ということになっていて、ある程度練習すれば誰でも使えるような形になっている。一見難解な感じを与えるが、システム論をくぐらせることで、本質だけが取り出されて簡素化されている格好になっている。また、イタリアで体系化されたミラノ派はフィンランドに伝わってオープンダイアローグとして進化している。簡素化された故の広がりということになるだろう。

 もう一つは、技法としてのオートポイエーシス論だということだ。論は実践できない、ただし技法として実装されると、実践できて使えるということだ。また、オートポイエーシス論を補助線にするとなんとなく格好の良い論文が書ける。

 この2つが個人的に興味を持っている理由ということになる。

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 さて、マトゥラーナは1928年生まれで、御年88歳、2015年にチリで行われた公演が Youtubeにアップロードされていたので視聴してみた。

 タイトルからするとオートポイエーシスの「構造的ドリフト」と関係がありそうな内容だが、内容は聞いてからのお楽しみだ。

 それにしても、こういった講演は本来はスペイン語も理解できないのにチリのサンチャゴまで行かないと見ることのできなかった講演だ。しかし、Youtubeを検索すると、こういったマニアックな講演もすぐにお茶の間で見ることができる。しかも、母国語がスペイン語のマトゥラーナが英語で講演しているとなると見ないわけにはいかないだろう。つくずく凄い時代になったものだと思う次第だ。


  余談だが、「オートポイエーシス」の共著者のフランシスコ・ヴァレラは2001年に若くして亡くなったが、こちらの神経現象学的なオートポイエーシス論はダライ・ラマをはじめとする仏教界との交流を通してマインドフルネスについての神経学的な解釈を与える格好になっている。
  
6月19日の進捗、1340ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 50.6%)


Volume IV
INOVATIVE HYPNOTHRAPY

Burden of Responsibility in Effective Psychotherapy Milton H. Erickson Reprinted with permission from The American Journal of Clinical Hypnosis, January, 1964, 6, 269-271.



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(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html


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