2017年6月20日火曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 171日目


                                                                                                                            
 
  まさか、催眠誘導しただけで

  クライアントに変化が起きるなんて思ってないだろうなぁ(笑)。

   <ひとりごと>




はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 171日目について書いておきたい。

催眠療法の不可欠な部分としての症状の利用

「Use of Symptoms as an Integral Part of Hypnotherapy (1965)」から。著者は、ミルトン・エリクソン。

 この論文もかなり深い話になってくる。

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 簡単に言ってしまうと、クライアントの一見不合理な言動の中にこそ無意識のニーズが隠されており、これを利用して治療に活かす方法を考えないと思う結果が得られないということになる。また、厄介なのは、一見合理的な言動しかみせないクライアントだ、このクライアントについても無意識のニーズを探ってそれを上手に活用しないと、治療の結果は思わしくない、そういった内容の論文だ。

・・・・・・・

 臨床的にどのタイプの患者にも対処するには、常に心に留めておくべき最も重要な考慮すべき事項がある。これは、人間の性格としての患者のニーズは、クライアントの一挙手一投足に対する認識を確実にするためにセラピストにとって常に疑問としなければならないということだ。単に病状の正確な診断を行い、正しい治療方法を知るだけでは不十分である。

  最も重要なことは、患者が治療を受容し、それに関して協力的であることである。患者の完全な協調性がなければ、治療結果は遅延、歪み、限定、または妨げられる。

 セラピストは患者を合理的かつ情報に基づいた人間として要約すると、必然的に理学的、理解的、能力を完全に所持していると考えている。しかし、よく見落とされたり、無視されたり、拒否されたりするのは、患者がばかげて、忘れて、不条理で、不合理で、非論理的で、常識をもって行動できず、感情や未知の合理的、論理的、または賢明なものから遠く離れた、認識不能で、おそらく発見できない無意識のニーズと能力である。


   可能性のある重要な情報について無意識の心を見落とすために、明らかに賢明で合理的で知的な患者に対して治療を試みる時ですら、無意識の力と感情が明白に示されていなくても実際に支配されている場合があり、この場合、治療が不満足な結果に終わることがある。

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 実際には治療に多くの時間が必要になることがある。一見、愚かで、不条理で、非合理で、矛盾した症状を利用することによってのみ、健全な根拠に基づいて治療を行うことができる。症例は3例、催眠を伴うものと、伴わないものがある。
 
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随考

――ダブル・バインドを質問で使う ――
        
        アリゾナ大のサイトに面白い論文がリンクされていた。タイトルは、「The double bind technique in Adlerian family counseling(1980)」で、1980年と少し古いが、修論を書くための副次的な研究のようだ。

 内容は、アドラー派の家族カウンセリングの技法に介入としてダブル・バインドの質問をして関係に変化をもたらすことができるのか?というのがここでのテーマだ。個人的な理解として、アドラー派の技法にも当然、パラドクス介入があるのは知っている。こっちが本家だ。ただ、ここでは、パラドクス介入としてエリクソン派のダブル・バインドの技法を持ってきている構図がある。

 もちろん、ダブル・バインドについては、エリクソン&ロッシの「Varieties  of double bind (1975)」を参考にしているのだけれど、面白いのはここでは、

  • 催眠誘導は行わない
  • 単なる質問として提供される
  • ただし、メタ・メッセージ(質問の言い方)は少し工夫されている
というところだ。具体的には、エリクソン&ロッシのダブル・バインドを少しアレンジした5つの治療的ダブル・バインドの質問を使う。
  1. ダブル・バインドの質問
  2. 最悪の中の最高のダブル・バインド
  3. リバース・セット・ダブル・バインド
  4. システムへの処方のダブル・バインド
  5. タイム・ダブル・バインド

 もちろん、統合失調症的ダブル・バインドをカウンターで当てる場合もあると思うが、何れにしても、エリクソンのように催眠誘導をせずに質問だけを使う、というのがここでの面白いところだ。 ダブル・バインドの言語パターンについては、このあたりで書いた。

 また、パロアルトのMRIの研究者たちが「催眠を使わない催眠療法」という禅問答のような研究で明らかにしたところだが、要は、二項対立のパラドクスから抜け出る支援をするような格好で質問とリフレーミングがきちんと機能すれば、催眠誘導はなくても、現在の枠組みを超えて大きく変化する二次的変化(Second Order Change)は起こるということだ。このあたりで書いた。

 何れにしても、質問だけのダブル・バインドを使うというやり方は日常でも仕事の場面でも使えるので汎用性が高いのはいうまでもない。
  
6月20日の進捗、1348ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 50.9%)


Volume IV
INOVATIVE HYPNOTHRAPY

Use of Symptoms as an Integral Part of Hypnotherapy Milton H. Erickson Reprinted with permission from The American Journal of Clinical Hypnosis, July, 1965, 8, 57-65.


お知らせ:

ミルトン・エリクソンの本質を突き詰めたから分かったことがあります。

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詳細は、こちらから。


(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html


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