2017年6月23日金曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 174日目


                                                                                                                            
 
  疼痛のコントロールは、コーチングのような一般の質問だけでは難しいなぁ。

  

   <ひとりごと>




はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 174日目について書いておきたい。

催眠による疼痛のコントロール

「Introduction to the Study and Application of Hypnosis for Pain Control」から。著者は、ミルトン・エリクソン。時期が書かれていないが、おそらく1950年代にエリクソンがニューヨークで行った公演内容を文字に起こしたもの。

 ここで語られているのは、催眠による疼痛のコントロールについての話だ。催眠は神経学的に疼痛を低減する目的のためにはかなり研究されてきた経緯がある。19世紀から20世紀は、麻酔が今ほど発展していない時代、歯の抜歯や外科手術の麻酔として催眠が使われていたようなこともある。Wikipediaの Hypnosurgeryの項目に説明がある。

 さて、時は流れて20世紀のちょうど半ば、エリクソンは、この講演で疼痛をコントロールるする11の技法について語っている。ちょっと面白いのは、本文には11の技法が書いてあるが、まとめでは10の技法についてしか語られていない点だ。具体的にはリン・クーパーとの共著である時間歪曲の話が本文には登場するが、まとめには登場しない。また、具体的な技法は以下だ。

  1. 痛みの完全な廃絶のための直接暗示の使用の
  2. 痛みを許容する間接的催眠暗示
  3. 記憶喪失、健忘の利用
  4. 催眠による鎮痛現象の利用
  5. 催眠による麻酔効果の利用
  6. 催眠による感覚の置換の利用
  7. 催眠による痛みの移転の利用
  8. 催眠による痛みの解離
  9. 催眠による経験の再解釈
  10. 痛みの低減をもたらす催眠暗示の使用

    現在、エリクソン財団のトレーニング・ガイドラインを読むと、a.の理論を除いて b.〜g.の6つが教えられているようだ。

 a. Theories of pain
 b. Glove anesthesia
 c. Displacement
 d. Imagery
 e. Dissociation
 f. Time Distortion
 g. Scaling

 知覚を変容させて疼痛をコントロールするのは催眠ならではということにはなるのだろう。もちろん、催眠で神経の「現象」として痛みは低減できても、根本的な痛みの(物理的な)原因が取り除けるわけではないので、それは医師に相談しろ、ということだろう。


随考

――円環的質問 by ペギー・ペン ――

 ネットにペギー・ペンの論文「Circular Questioning (1982)」が落ちていたので読んだ。内容はタイトルどおりにミラノ派家族療法の「円環的質問」についてだ。

 「円環的質問」は世の中が「円環的因果関係」で構成されているというシステミックな物事の見方を促す質問ということになる。もちろん、円環的因果関係は人類学者のグレゴリー・ベイトソンの唱えた因果関係であるばかりではなく、6世紀から仏教をやっている我々日本人にはおなじみで当たり前の因果関係かもしれない。

 ベイトソンの著作「Steps to an Ecology of Mind(精神の生態学)」のトリビュートである「Buddhist Steps to an Ecology of Mind」という仏教関連の論考がネットに落ちていて、これに仏教と円環的因果関係について書いてある。余談だが、1904年に英国で生まれ、1901年にサンフランシスコの禅センターで亡くなったベイトソンは無神論者だ。円環的因果関係は一神教の信者ではない発想の自由さということなのだろう。

 個人的には、この手法の背景にはパラダイムシフトがあると考えている。ここで書いたが、これは、デカルトのような直線的な因果関係の世界から、ベイトソンの円環的因果関係の世界へのパラダイムシフトがあるという具合だ。逆に、ベイトソンをくぐらせた短期療法のリフレーミングの根幹のところは、直線的因果関係から円環的因果関係の転換をねらっているようにも思えてくる。

 これは、中途半端に勉強すると、直線的因果関係の世界観を強化するような形式になるので、「何々すると必ずこうなる」や「こうなると、これしか方法がない」のような直線的な思考が色々な問題を起こしているに思えないでもない。逆にいうと今までの常識の範囲で「どん詰まり」に陥った場合、常識を超えて、そこから抜け出す思考法として「円環的因果関係」の思考法が役に立つという具合だ。要は、実生活では答えは一つとは限らない、いくつもの答えがある、というのが円環的な因果関係の考え方でもある。今、起こっている問題も原因は一つではない、円環的に色々関係している、だからその因果の関係性を少し変えることで問題やそれについての認識は違う様相に移る。「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとに水にあたらず」、変化は様々な円環的因果関係から成り立っている。

 さて、ミラノ派家族療法は、系統的には、ミルトン・エリクソン→グレゴリー・ベイトソン(MRI)→ミラノ派家族療法(→オープンダイアローグ)ということになる。ペンの論文は、ベイトソンのコンセプトである1)共進化、2)二重記述、3)円環的因果関係がどのようにミラノ派の技法に実装されているのかが説明されているが、このプロセスを理解するのは非常によい論文ということになる。間接的にミルトン・エリクソンの知見も第二次サイバネティクスをくぐらせて反映されているような格好になっている。

 個人的にミラノ派を気に言っている理由はいくつかある。具体的には以下だ、
  • 個人、もしくは家族などの集団の両方に使える。
  • 個人、家族の自主性、自律性を引き出すことを重視している。
  • 個人、家族を自律性を持ち、自ら問題を解決できる生き物として扱う。
  • セラピストは中立である必要はあるは、「凄い人」である必要はない。
  • 催眠は必要なく、質問だけで問題解決や認識の枠組みや行動の変化を支援できる。
  • その変化のレベルはウオツラィックの言う、現在の枠組みを超えて変化する第二次変化を志向している。
  • パラドクス、カウンター・パラドクスを扱える。
  • 質問が間接的である。
  • コーチング、ファシリテーションで使える。
ここでのオチは、セラピストが直線的因果関係から円環的因果関係で物事を見られる人である必要がある、ということになるのかもしれないが、このあたりはなかなか深いところでもある。

6月23日の進捗、1372ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 51.8%)


Volume IV
INOVATIVE HYPNOTHRAPY

Introduction to the Study and Application of Hypnosis for Pain Control Milton H. Erickson Proceedings of the International Congress for Hypnosis and Psychosomatic Medicine, edited by J. Lassner Springer Verlag, Berlin, Heidelberg, New York. Reprintedwith permission of Springer Verlag.





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(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html


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