2017年6月26日月曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 177日目


                                                                                                                            
 
  あなたが今日大成功する可能性は0ではない。

  エリクソンの自明の理(笑)。


   <ひとりごと>




はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 177日目について書いておきたい。

疼痛管理のためのちりばめ法

「Interspersal Hypnotic Technique for Symptom Correction and Pain Control(1966) 」から。著者は、ミルトン・エリクソン。

 ここで収録されているのは非常に有名な事例だ。ひとつは頻尿に苦しむ農夫の話、もうひとつは末期がんで苦しむジョーという花屋の話。こちらはトマトのメタファーで有名だ。

 技法的には、エリクソンが話す言語パターンやメタファーに様々なメッセージが偏在、散りばめられているパターンとなる。

 細かい話はかかないが、トランスクリプトは、エリクソンになった気持ちで、何度でも声に出して読みたい論文でもある。


随考

――エリクソンの言語パターン ――

 このあたりは、心理療法、コーチング、ファシリテーションに限らず、日常でも使える技法だ。

 ブリーフセラピー・カンファレンスでのジェフリー・ザイクのプレゼンテーション資料「The Language of Hypnosis (The grammar of eliciting “states.”)」を読んだ。まず、タイトルに注目してみる。
 
―― 催眠の言語パターンの目的は何か?――

 タイトルに目的が書かれている。

  答えは「クライアントの(よい)心身状態を引き出すため」ということになる。さり気なく書かれているが重要なポイントだ。




  つまり、言語パターンは、「クライアントの(よい)心身状態を引き出す言語の文法」ということになる。クライアントが、・・・・何かをイメージする、・・・・何か考える、・・・・行動する、・・・・それを振り返って意味付けをする、・・・・いずれにしてもそれを行う(よい)心身状態がある、ということだ。そのためには、一例として内面に注意をむけると?

 1. 今何が起こっているのか?どんな心身状態なのか?
 2.どんな心身状態になりたいのか?
 3.何がそうなることを妨げているのか?
 4.理想の状態になるには何が必要か?
 5.理想の状態になったら、それはどのようにしてわかるのか?

 を問うという具合だ。

 また、セラピストは言語パターンを通してこの心身状態を引き出す支援をする、ということになる。あまり大きな声では言えないが、エリクソニアンの場合、催眠に入るかどうか?深いか、浅いか?は問題ではない。むしろ、それを行うのに適切な心身状態が引き出されているのか?が問題ということになる。これは催眠を使わないコーチングやファシリテーションでも同じだ。

―― 自明の理 ――

 この言語パターンのひとつとして、間接暗示に分類される「自明の理(Truism)」について語られている。自明の理は、誰からみても真だということだ。

 例があげられてる。面白いのは、You are happy . は自明の理ではないが、 You can be happy .は自明の理としている点だ。ここでは、一般意味論で言われているBE動詞を使う問題点とその解決策の E-Primeについては保留して考える。

 You are happy .(あなたは幸せです)と言われた場合どうか?

 クライアントは幸せではないと感じてる場合もある。

 その場合セラピストが言っていることと、クライアントが感じている事実は当然齟齬をきたす。そして、「そんなことはない、何を言っているのだ!」という抵抗を生む。本来の目的であったクライアントの(よい)心身状態も引き出せない。

―― 否定できない可能性も自明の理――

 一方、You can be happy . (あなたは(今)幸せになることはできます)と言われた場合はどうか?つまり、幸になる可能性が0ではないですよね、という具合だ。確かに0ではない。それが、0.0001%の可能性だったとしてそれを完全に否定するのは案外むずかしいものだ。だから自明の理となる。可能性は否定できないからだ。可能性に焦点を当てることで、クライアントの(よい)心身状態を引き出す、とっかかりにはなるはずだ。

 また、ここで重要なことはセラピストのスタンスだ。簡単に言うと、クライアントとの相互作用において、「何が事実で、何が解釈なのか?」の区別をきちんとつけてクライアントを支援しないと、こういった言語パターンを使うのは難しいということだ。

 さて、上の例はクライアントの心身状態の自明の理に着目したが、実際には、外的世界の事実とその変化に気づいてもらうほうがより簡単だろう。ザイクのスライドだと以下のような例がある。
You can hear the sounds outside.
 You can hear the sound of my voice.
 You can hear the sound of your breathing.
 You can experience sound changes…
あなたは外の音を聞くことができます。
あなたは私の声を聞くことができます。
あなたはあなたの呼吸の音を聞くことができます。
あなたは音の変化を経験することができます... 

―― もう少し複雑な自明の理 ――

 ネットに「A LINGUISTIC-STRUCTURAL MODEL FOR THE INVESTIGATION OF INDIRECT SUGGESTION」が落ちていたので読んでみた。ここに自明の理についての2つの事例がのっている。前者は、ロッシ&エリクソン(1980)で後者はバンドラー&グリンダー(1975)だ。知覚、認識する主体を一般化している例が示されている。
 Everyone has had the experience of nodding their head.
 People can be comfortably while reading this sentence.
誰もがうなずいた経験を持っています。
人はこの文章を読んでいる間に気持ちよくなることができます。 

     もっとも、細かい話をするとこのドキュメントの後ろに、バンドラー&グリンダーのミルトン・モデルとロッシ&エリクソンの言語パターンの対比表が登場しているが、ここでも書いたように、直線的因果関係でエリクソンの言語パターンを取り出してベイトソンに怒られたバンドラー&グリンダーと円環的因果関係でエリクソンの言語パターンを取り出したロッシの違いは、後々大きな違いになっているようにも思ってくる。要は、「人を動かしてやる」「人を操ってやる」と変な人間が出て来るのも直線的因果関係が影響しているという具合だ。こういった例ではなくても、クライアントが「私はできないのです」と行った時に、それをそのままひっくり返して「もし、できるとしたら」と直接的かつ担当直入に聞いても大した答えも出てこないかわりに、よい心身状態が引きだされないのも直接的因果関係を前提としているからだ。

 自明の理だけなら問題はないのだろうが。もちろん、個人的にはエリクソンの言語パターンは円環的因果関係にリモデリングして使っている。案外、これは重要なポイントだ。

―― 自明の理を探してみる ――

 自明の理は身の回りに転がっている、事実に着目すればよいからだ。ただし、上でも書いたように「否定できない(都合の良い)可能性」に目を向けてみるのも案外ポイントだ。

 もちろん、会社などでプロジェクトなどに従事しているとリスクにも目を向けなければいけないだろう。リクスとは現在顕在化していない問題のことだ。一般的にはこれが顕在化した時はインパクトが大きい。もちろん可能性も少ない。

 当然、リスクは頭の片隅において置かなければいけないが、やはりいつも焦点を当てるのは「否定できない(都合のよい)可能性」であったほうが、少なくとも良い心身状態が引き出されるということでもあるだろう。簡単に言うと、今日、あなたが大成功を収める可能性がないわけではないし、もし、そうだったらそれはどのようにそうなるのか?をイメージしてみるのも悪くはないのだろう。

6月26日の進捗、1396ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 52.7%)


Volume IV
INOVATIVE HYPNOTHRAPY

Interspersal Hypnotic Technique for Symptom Correction and Pain Control Milton H. Erickson Reprinted with permission from The American Journal of Clinical Hypnosis, January, 1966, 8, 198-209.




お知らせ:

ミルトン・エリクソンの本質を突き詰めたから分かったことがあります。

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(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html


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