2017年6月29日木曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 180日目


                                                                                                                            
 
  ベイトソンの学習理論によれば、

  フェイクニュースにいちいち反応しているのはレベル0だな。

  要は学習しないヤツ(笑)。

   <ひとりごと>




はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 180日目について書いておきたい。

組織的な脳損傷に対する催眠を志向した心理療法

「Hypnotically Oriented Psychotherapy in Organic Brain Damage  (1963)」。著者はミルトン・エリクソン。

 25ページの比較的長い論文。簡単に言うと、こんな内容だ。物理的に脳を損傷したクライアントに心理療法的な知見は役に立つのか? なかなか深いテーマだ。最初に出て来るのは38歳の女性、家族旅行から帰ってくる途中で頭痛を発症。原因は動脈瘤が破れていること。もちろん、これが催眠で治るといったバカなことを言っているわけではない。当然、外科手術を行う。問題はその後の話だ。

 おそらくこの時代 fMRIやCTスキャンなどの機材は大病院にすら置かれていない時代だろう。したがって、脳の物理的な損傷にともない、どのような機能が麻痺しており、どのような機能は正常なのか?を見立てる必要がある。エリクソンの場合は、まず、この見立てとしてクライアントを催眠誘導し、これを見立てる支援をするところから始めるという具合だ。

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 昨日のつづきをトロトロと読む。



随考

――フェイクニュースに気をつける――

 先日の米大統領選挙戦からフェイクニュースが取り上げられるようなったのはご存知の通りだ。誰もがSNSなどで気軽に情報を発信できるようになった結果、事実に基づかない思い込みの状況がかけめぐり、政治、経済だけにとどまらずこの混乱がときに日常生活にまで影響を及ぼすようになっている。

   お正月から心理療法家のミルトン・エリクソンの論文全集を読んでいるが、このフェイクニュースはこの分野ではずっと前からおなじみだ。エリクソンに関する情報は、妄想と希望と憶測が入り混じった情報から実際にはありもしないことがネットに氾濫しているような状態だ。もちろん、裏を返せばこれも悪いことばかりでもない。その中にもほんの一粒の砂金やダイヤモンドは存在しているからだ。フェイクニュースを見分ける技術というのは、砂金やダイヤモンドを見つける前提として、まずはトンデモ情報をふるいにかける技術と言ってもよいだろう。今日は、これについて少し考えてみたい。

―― フェイクニュースを見分けるガイドライン――

 さて、ネットに「How to Spot Fake News」というサイトが存在し、ここにフェイクニュースを見分けるためのガイドラインが提供されている。ここでは、この8つのガイドラインを借りて、どうしたらトンデモ情報をふるいにかけ、できるだけ正確なエリクソン関係の情報を得ることができるのか、考えてみたい。ここでは、対象としてエリクソンについて書かれたWebサイトやSNSの情報を想定している。

 もちろん、これにはいくつかの前提がある。

・憲法で表現の自由は保証されているので、公共の福祉に反しない限り何を書いて投稿するかは勝手と言えば勝手だ。だから表現の自由を妨げるものではない。
自分で色々試して自分の経験やその考察を書いているサイトは貴重だ。やはり自分の五感で経験した一次情報を発信しているサイトは尊重したい。
・最初に「どんな目的で何を知りたいのか?」はあたまの片隅に止めておく。やはりその情報を「何の目的で使いたいのか?」が決まると情報収集の精度は格段に高まる。

 それで、フェイクニュースを見分ける方法は具体的には以下だ。

―― 8つのガイドライン ――

❶情報ソースを確認しよう

 サイトの役割や連絡先を含め確認する。エリクソンの場合は、自身の論文全集あるいは著作が起点になるだろう。また引用元の論文が「The American Journal of Clinical Hypnosis」「The International Journal of Clinical & Experimental Hypnosis」などの学術論文の引用だと信憑性は高い。ただし、学術論文はあくまでも仮説の反証可能性を探求するものであり検証途上にあることは留意したい。最近だと Google などで簡単に検索できるようになっている。もちろん、エリクソンは何らかの真実を追求していたわけではない「どうやったらそれが解決できるか?」ある意味、ありとあらゆる手段を見つけることに尽力していた人だ。

❷本文を読もう

 スポーツ新聞の見出しではないが、刺激的な見出しをつけたために、タイトルが本文を反映していないことがある。一般的に、社会科学的な分野は自然科学の分野と違って「100%そうなる」「特定の病気が治る」と書かれていることははなから疑ってかかったほうがよいだろう。世の中0%か100%かのように二値的に単純なものではない。逆に言うとこういった二値的な思考をやめて、よりシステム思考的に考える訓練としてエリクソンを読むということでもある。また、病気の治療について書くのは、医師法や薬事法に触れる恐れがあるのでこれは注意する点だ。

❸著者をチェックしよう

 著者について信用できる人物か、あるいは架空の人物かをチェックする。情報の発信元として実践者かどうかはひとつの参考になるだろう。Ph.Dを持っていればなおよい、という感じだ。エリクソンは講演で「臨床催眠家を目指すならばステージ催眠術師には習うな」と言っている。今風に言えば「臨床催眠家になりたければメンタリストには習うな」ということだろう。そもそも目的が違うからだ。具体的には臨床としてエリクソンを学ぶならば、ダレン・ブラウンではなく、アーネスト・ロッシ、ジェフリー・ザイク、スティーブ・ランクトン、スティーブン・ギリガン等のエリクソニアンに学べということなのだろう。要はエリクソンの技法の実践者だということだ。

❹情報源の裏付けを検証しよう

 引用元の情報源が裏付けになっているのかリンク先の情報をチェックする。有名人だの有名大学だのの権威だけを借りていて、リンク先の論文などと内容があっていないものは要注意だ。ただし、1960年代あたりを中心に最も催眠研究をやっていたのはハーバードやスタンフォードの研究者なので参考にするところは参考にすればよいだろう。

❺日付をチェックしよう

 古すぎる話は現在の情報と異なっていることがある。エリクソンは1980年代になくなっているし、論文は1920年代から存在している、このあたりは現在の事情とはかなり異なっていることに留意したほうがよいだろう。あまり大きな声では言えないが日本で「催眠」について書いている人の知識は決して冗談ではなく大体19世紀後半から20世紀初頭あたりで止まっている。一例を上げると「Hypnotism and Hypnotic Suggestion」が出版されたのがちょうど1900年だ。定型文の催眠導入文を読んで暗示を入れればよい、という程度のことを言っている日本語のサイトの情報はこのあたりで止まっている。

❻ジョークの可能性を考えよう

 突拍子もない話はジョークや皮肉の可能性もあり。このあたりはご愛嬌だ。もし、罪のないジョークで多くの人を釣れるようであれば一流の「釣り師」の才能はあるのだろう。ネットには多くの「釣り師」が存在しているのも確かだ。こういった方向を目指すのもひとつの方法ではあるだろう。ただ反対に自分がマヌケな魚としてうっかり釣られることに注意したいものだ。

❼自分のバイアスをチェックしよう

 自分自身のヒューリスティクスやバイアスをチェックする。人間は自分の先入観に基づいて自分に都合のよい情報だけを集めてしまう生き物だ。特に「催眠はすごいものだ」という何の根拠にも基づかない思い込みは割りと存在しているように思う。統計を取ると催眠を使わない他の心理療法と変わらなかったりすることがほとんどだ。やはり自分の思考や行動をメタ認知して目的合理性もなく偏っていないかどうかをチェックする必要があるのだろう。もちろん、場合によっては意図的に偏るというのもありだ。認識の枠組みや行動が変化するサイバネティクス上のポジティブ・フィードバック・ループとはそういうものだからだ。

❽専門家に尋ねよう

 エリクソニアンはある意味絶滅危惧種であまりいないのかもしれないが、仮にいたとすれば少なくとも何人かに聞いてみたほうがよいのだろう。ネットでの相談は個別ではなく一般的になる傾向がある、ここに問題があることは留意しておいたほうがよいだろう。ある意味、専門家とはあなただけの強みを見つけ、あなただけに最適なオーダーメイドの解決策を一緒に探ってくれる人だからだ。

―― まとめ ――

 上の8つのチェックをするだけでもトンデモ情報は随分ふるいにかけられるはずだ。裏を返すとエリクソンは情報リテラシーを高めるのにもってこいの教材という側面も大きい。もちろん、エリクソンならこの「混乱」自体も変化のために利用するだろう。コンテンツ・レベルでの混乱を利用してよりメタ・レベルの思考の枠組みや行動パターンの変化を支援するのが、エリクソンの醍醐味であるのは公然の秘密でもある。

 これで、ゴミ溜めの中から砂金やダイヤモンドが発見できるかどうかはわからないが、少なくともトンデモすぎる情報をふるいにかけられるようになるのは確かだ。

6月29日の進捗、1420ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 53.6%)


Volume IV
INOVATIVE HYPNOTHRAPY

Hypnotically Oriented Psychotherapy in Organic Brain Damage
Milton H. Erickson Reprinted with permission fromThe American Journal of Clinical Hypnosis, October, 1963, 6, 92-112. This article was published simultaneously in translation in Ceskoslovenská Psychologie, Prague, Czechoslovakia.




お知らせ:

ミルトン・エリクソンの本質を突き詰めたから分かったことがあります。

 組織のパラドクスを解消し、組織の認識、行動の変化を支援する、
「変化・創発ファシリテーション」のオンデマンド、オンサイト講座を開始いたします。

詳細は、こちらから。


(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html


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