2017年6月5日月曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 156日目


                                                                                                                            
 
       ひとり一人の奥底には良くも悪くも物語が潜んでいる。

  人や組織が変わるためにはこの物語をよりよく変える必要がある。

  この物語を変えるために円環的質問を使うというのは案外あり。

   <ひとりごと>




はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 156日目について書いておきたい。

心理療法への催眠アプローチ

「Hypnotic Approaches to Therapy (1977)」から。著者は、ミルトン・エリクソン。

エリクソンが亡くなる3年前の1977年に The American Journal of Clinical Hypnosis に掲載されたエッセーとなる。内容は、心理療法への催眠を使ったアプローチを説明している内容になっているが、形式は論文というよりも、口語で語っている小説のような形式になっている。例えばこんな感じではじまる。

私がお伝えしたい最初のことは今朝のデモンストレーションのことです。もちろん、患者からはこれを話す許可をいただいています。私は患者である彼女と水曜日に会いました。彼女は私の診療所へやってくると私に話し始めました。私は、彼女を見て彼女が驚くほどの葛藤を抱えていることがわかりました。・・・・・・・・
クライアントとの対話も小説のように書かれているのでこれはこれとして面白い。

 エリクソンは年を取る毎にどんどん無駄が削られて非常にシンプルになっているような気がしないでもないのだが、論文形式で小難しいことを書くより、こういった形式で説明するほうが伝わりやすいと考えたのだろう。

・・・・・・・・・・・

 こんな感じで「小説家」ミルトン・エリクソンの書いた物語を読んでみる。


随考

 
―― 円環的質問――

 物事を全体性的(システミック)に捉える重要性について考えるととても深い話になる。例えば、クライアントとコーチを考える。クライアントはある状況において問題を抱えていることになるが、コーチはクライアントからコトバを介して二次情報を取得できるだけだ。言っても見れば、コーチは家庭や職場で起こる状況や関係性についての情報を直接取ることができないので、クライアントのコトバから推測するしかない。

 もっと言うと、クライアントの状況やその時の関係性についての一次情報については恐ろしく無知だとも言える。この状況でクライアントを支援することになるわけだが、状況や関係性についてまったく何も知らない中でどう支援するのか?を考えるかなり深い話になってくる。余談だがミルトン・エリクソンが使うのは「無知の知(Not Knowing)」アプローチだ。

 結論から言うと、円環的質問を使うのが、この一つの答えになるだろう。クライアントの二次情報からクライアントの認識に円環的質問を投げ込む。コーチはクライアントの抱えている一次情報はよくわからないのだが、コーチの意図とは別にクライアントの意図を反映して質問自体がクライアントの認識を活性化し始める、ことになる。これが生き物としてのクライアントや組織の認識を扱うということだ。伊達や酔狂だけで、オートポイエーシス論をくぐらせた質問を使うわけではない。

 これについて、SlideShare にベイトソンからの影響が強いミラノ派家族療法の円環的質問が掲載されていた。個人的に非常に興味深く読んでいた。実は、オートポイエーシス論のウンベルト・マトゥラーナの影響も大きい。だから、スライドに「円環的質問は知覚の差異の認識であり事実認識を目的にしていない」。オートポイエーシス論が閉じたシステムだったことを考えるとこの記述は中々意味深だ。

 
 また、コトバの性質は直線的だ。逆に言うと実世界が起こっている現象をあまりにも単純化してしまうところがある。また、コトバは物事を捉える時の補助線でもあるが、何も考えずにコトバの補助線を当てるとと本来直線的な因果関係をもっていない知覚の世界を直線的と考えてしまうことになる。また、コトバは主客を明確に分ける。ただし、問題を分けたからといって解決するわけではない、というのが現実の難しいところだ。

 そこで出て来るのが円環的質問となる。効用は以下だ。

  • 枠組みを、個人から関係性へ広げる
  • 直線的因果から関係性(円環的因果関係)へと転換する
  • 関係性の重要性を示す
  • コトバで語られないことをあぶり出す
  • 重要な出来事の間の意味を結びつける
  • 過去、現在、未来の物語を結びつける
  • セラピストが好奇心をいだき続けることを助ける
  • クライアントが人生にもっと興味を持つように助ける
  • 将来おこり得る仮説をテストしてみることを助ける
  • 違いを持ち込む
  • 新しい関係性を見つける余地をつくる
  • 人生の達人としてクライアントを尊敬する
  • 家族の物語を変化させ新しい物語を紡ぐよう助ける

 何れにしても面白いのは、クライアントのコトバという二次情報をヒントに、円環的質問を投げ込むと、コーチが直接一次情報に触れることなく、クライアントが自律的かつ全体最適的に状況や関係性をよりよく変えようと動きはじめるところだろう。要は、クライアントがよりシステムを意識して解決策を実行できることを促す質問だということだ。

 もちろん、おまけとして、円環的質問を使うと、自分が相手に主張したいことを、他の人だったらあなたにどのように説教をすると思うか?のように間接的に扱えるようになることだ。これでかなり中立を装いながら言いたいことを(間接的に)ズケズケ示唆できるようになるのは面白いところだ。

6月5日の進捗、1228ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 46.4%)


Volume IV
INOVATIVE HYPNOTHRAPY

Hypnotic Approaches to Therapy

Milton H. Erickson Reprinted with permission from The American Journal of Clinical Hypnosis, July, 1977, 20, 1, 20-35 




お知らせ:

ミルトン・エリクソンの本質を突き詰めたから分かったことがあります。

 組織のパラドクスを解消し、組織の認識、行動の変化を支援する、
「変化・創発ファシリテーション」のオンデマンド、オンサイト講座を開始いたします。

詳細は、こちらから。



(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html


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