2017年6月6日火曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 157日目


                                                                                                                            
 
       美しい思い出には、

  必ずしも、肯定的な気持ちが伴っていないというのが、

  面白くもあり、難しくもあるところだ。

   <ひとりごと>




はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 157日目について書いておきたい。

心理療法への催眠アプローチ

「Hypnotic Approaches to Therapy (1977)」から。著者は、ミルトン・エリクソン。

エリクソンが亡くなる3年前の1977年に The American Journal of Clinical Hypnosis に掲載されたエッセーとなる。内容は、心理療法への催眠を使ったアプローチを説明している内容になっているが、形式は論文というよりも、口語で語っている小説のような形式になっている。例えばこんな感じではじまる。

私がお伝えしたい最初のことは今朝のデモンストレーションのことです。もちろん、患者からはこれを話す許可をいただいています。私は患者である彼女と水曜日に会いました。彼女は私の診療所へやってくると私に話し始めました。私は、彼女を見て彼女が驚くほどの葛藤を抱えていることがわかりました。・・・・・・・・
クライアントとの対話も小説のように書かれているのでこれはこれとして面白い。

 エリクソンは年を取る毎にどんどん無駄が削られて非常にシンプルになっているような気がしないでもないのだが、論文形式で小難しいことを書くより、こういった形式で説明するほうが伝わりやすいと考えたのだろう。

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 こんな感じで「小説家」ミルトン・エリクソンの書いた物語を読んでみる。オムニバス形式になっているので少々散漫だが、面白いところを一つだけ書くと、エリクソンも人の子であり、心理療法の途中で失敗することがあるということだ。

 エリクソンはある女性の被験者を催眠に導き幻覚を引き出そうとする。ここで「今までの人生の中で見た一番美しいものを思い出してくだい」こう暗示する。しかし、この女性はこともあろうに、交通事故で亡くなった女性の母親が棺桶に入られているところを思い出す。そして、悲しみが止まらなくなる。ここでラポールが切れて、心理療法は中断。エリクソンはこの女性との信頼関係を取り戻すのに3週間ほどかかったと書いている。

 ここで興味深いのは、美しい思い出は必ずしも楽しい気持ちが伴っていないということなのかもしれない。一般的に美しいものには感動や楽しさといった気持ちが結びついているものだが、この事例からすると必ずしもそうではないという教訓なのだろう。

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 後は自動書記や時間歪曲のエピソードが書かれている。


随考

―― システム論的三人寄れば文殊の知恵――

   これは、職場や家庭などにミルトン・エリクソン的なことを簡単に導入する一例となるだろう。
 
 コンセプトは、「三人寄れば文殊の知恵」だ。

 考え方の異なる三人がお茶でも飲みながら話をすれば、良い考えも浮かぶというようなことだ。これを第二次サイバネティクスをくぐらせて形式知化した「システム論的な三人寄れば文殊の知恵」をやってみたら?というのがここでのテーマだ。第二次サイバネティクスが前提としているのは、「集団は個々の総和より大きい」だ。

  SlideShare に「Reflecting Team (反射させるチーム)」というタイトルのスライドがアップロードされていた。元々、ノルウェーの医師であるトム・アンデルセンによって開発されたのがこの Reflecting Team だ。

 詳細なところは、「The Reflecting Team: Dialogue and Meta-Dialogue in Clinical Work」を読むとよいだろう。メタ・ダイアローグ(ダイアローグについてのダイアローグ)というのも一つのポイントだ、ダイアローグについてのダイアローグに焦点を当てることでより抽象的なパターン、より大きなゴールに焦点を当てるという具合だ。自己啓発などで「抽象度を上げて思考する」などと言われることがあるが、これがそれにあたる。で、当然こちら側が元ネタ(笑)。

 細かい話をすると、グレゴリー・ベイトソンの第二次サイバネティクスとウンベルト・マトゥラーナのオートポイエーシス論的な認識論をくぐらせてつくられているのが分かる。そこから、更に遡るとミルトン・エリクソンにたどり着く。エリクソンの技法をサイバネティクスで形式知化するのはベイトソニアン的にはど真ん中の正統なやり方だ。

 さて、話を戻すと、「Reflecting Team 」がまさに、システム論的三人寄れば文殊の知恵をやってみようというエクソサイズだ。当然、グループで行う。

 会社のチームや趣味のサークルやスポーツのチームなど色々なところで使うことができる。ITの開発チームの問題解決や振り返り、流通業や飲食業の業務の効率化・・・・チームが存在していればどこでも使うことが可能だろう。コンサルタントなどがお仕着せの解決策を押し付ける、というのではなく、自分たちで知恵を出し合って考えるという方向になる。

 もちろん、こういった雰囲気や方向にチームが行けるか?というのがポイントの一つとなるだろう。

―― Reflecting Team のねらいは?――

  • 新しい考え方や選択肢を見つける
  • 集合知、群衆の知恵を活用する
―― チームのレイアウトは?――


 スライドを参照



―― 手順は?――

  1. Aが課題を話す。そして、何か教えて欲しいことを話す。コンサルタントBはAをファシリテーションする。他の人(反射されるチーム)は黙って聞く。
  2. 反射されるチームは、チームの中であれこれディスカッションをはじめる。目的は新しいアイディアや選択肢の仮説について話す。AとコンサルタントBは黙ってそれを聞く。
  3. AとコンサルタントBは、反射させるチームから出た仮説を参考に、解決策や今後の方向性などについて話をはじめる。
  4. Aはこの仮説がどの程度役に立ったのかのフィードバックを行う。
  5. 一般的なフィードバックを行う。
 おおよそこんな感じになる。個人的にはもっとミラノ派家族療法の技法を繰り出してイノベーティブな感じになるようにファシリテーションすることになるだろうが、最初は文字通り「三人寄れば文殊の知恵」で構わないと思う。

 職場の会議などで試してみる、などというのもありだろう。会議には部署間の合意や調整を行うという側面以外に、全員で知恵を出すという側面もあるのだろうから。

     具体的な質問の概要もスライドに書いてあるので読んで見ると良いだろう。案外、職場でとっつき易いエリクソン派生の技法を考えると、こんな感じになるだろう。

6月6日の進捗、1236ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 46.7%)


Volume IV
INOVATIVE HYPNOTHRAPY

Hypnotic Approaches to Therapy

Milton H. Erickson Reprinted with permission from The American Journal of Clinical Hypnosis, July, 1977, 20, 1, 20-35 



お知らせ:

ミルトン・エリクソンの本質を突き詰めたから分かったことがあります。

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詳細は、こちらから。


(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html


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