2017年6月7日水曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 158日目


                                                                                                                            
 
       エリクソンの技法は、組織、家族に対してこそ

 真価を発揮する技法なのかもなぁ。

 ちゃんとできればだけれど(笑)。

   <ひとりごと>




はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 158日目について書いておきたい。

間接的催眠療法に関する臨床ノート

「Clinical Note on Indirect Hypnotic Therapy(1954)」から。著者は、ミルトン・エリクソン。

 エリクソンの事例によく出て来るのが夜尿症。ここでは結婚したばかりの若いご夫婦の事例だがよりにもよって夫も妻も夜尿症という事例。朝起きるとベッドが濡れているそして、お互いが寛容。何とかしたいと思っているがよい相談相手が見つからずというのがここでの状況設定だ。

 ご夫婦は催眠も好まず、どうしたものか?という状態でもある。そこで登場するのがエリクソンということになる。結論から言うと、エリクソンが指示したのはトンデモないパラドクス介入(症状が激しくなるようなことをもっとやれ。Do More )。詳細はかかないが、これでご夫婦のどちらの夜尿症も止まる、ある意味家族療法で2人同時に扱う、そしてそのうち子供が生まれ、おねしょをするのはこの子供だけ、というような状況になるという具合だ。

・・・・・・・・・・
 夜尿症というと何か特定のこととして捉えられるが、エリクソンの場合なにか不随意の筋肉の動きをある程度コントロールできるような手法を持っていたと捉えるほうが自然だ。
 

随考

―― レゴ社の再生と家族療法の技法――

  デンマークの会社だが、日本人なら誰でも知っている会社にレゴ社がある。あのレゴ・ブロックを販売している会社だ。しかし、2003年にレゴ社は経営危機に陥る。翌年の2004年から事業の再生が始まる。今ではV字回復して経営も順調な同社だが、事業再生が始まった時の様子がWikipedia に以下のように説明されている。


 2004年、クリスチャンセンCEOは入社3年目、35歳の元コンサルタント、ヨアン・ヴィー・クヌッドストープをCEOに抜擢した。クヌッドストープは全社員の1/3である1200人をカットし、製品も3割削減、直営店も閉鎖し、ゲームやテレビ番組制作事業から撤退するとともに、レゴランドを投資ファンドに売却した。

 その後、創業者の理念「子供たちには最高のものを」をもとに新しい価値観として「最大ではなく最高を目指す」と定め、高級玩具市場をターゲットに絞って高いシェアを獲得することを目指した。最後にレゴが手掛ける中核事業をブロックの開発・製造を改めて定義し、収益管理を徹底するため、製品毎に利益やコストの目標を定める数字を伴ったルールを導入するとともに、製品開発にも使えるパーツを制限する、顧客との対話を徹底するなどのルールを導入した。

 同年、レゴ・エクスプロアを終了し従来のベビー、デュプロにブランドを戻した。またデュプロシリーズより低年齢層向けのクワトロ (Quatro) シリーズが追加された。このブロックは乳幼児向けのため素材も通常製品より柔らかく、デュプロシリーズより一回り大きくなっている。従来製品よりも外れ易い反面怪我をし難いように改良されている。またデュプロシリーズとは互換性があり混在可能となっている。

 2006年より製品の企画・開発時にすべての要素を可視化する「イノベーション・マトリクス」を導入した。製品開発の全工程が一覧できるようになり、ノウハウが可視化されて全社員に共有されることにより、新製品の展開に伴う戦術がたてやすくなった。

 
 これから、選択と集中によってポートフォリオを絞り込む戦略は分かった。社員もマネージャも人員削減した。問題は、新しい戦略なりをどのようにして現場に浸透させたのか?ということだ。これが知りたい。社員を削減すれば、当然社員のモチベーションも下がる、そして業務量が増え、現場は混乱する。この混乱をどのように収束させてゴールへ走れる組織に持っていったのか?重要なポイントだ。

―― 家族療法の技法を使う――

 ネットに「ORGANIZATIONAL CHANGE AND MANAGERIAL SENSEMAKING: WORKING THROUGH PARADOX」というレゴ社の事例が掲載されている論文が転がっていた。要は、戦略を戦術、業務として実行できるように現場に落とし込むキープレイヤーである中間管理職を支援するというやり方がここに書かれている。

 この支援をしたのは、デンマークの小さなブティック型のファームのようだが、心理的なことを強みにしていていることが分かる。この著者もダビストック研究所で学んでおり博士号持ちとかなりイケている感じの人だ。具体的には、家族療法に基づくファシリテーションを使い、クラアント、特に中間管理職に対しては以下のような段階を追って認識を変えてもらうことを支援している。
  1. 現場が混乱
  2. 問題の規定
  3. パラドクスの発生
  4. ジレンマに陥る
  5. 業務が可能になる不確実さまで混乱を低減する
 なんとか新しい戦略を戦術、業務レベルに展開して現場に落とし込む、少なくとも業務が可能になるように不確実さを低減するように、中間管理職の認識を変えてもらうのがここでの支援だ。

  それで、結論から書くと、あぁカール・トムの質問システムを使ったんですね、となってその様子はかなりよく分かってくるということになる。カール・トムの質問システムも、元を辿ると、ミルトン・エリクソン→グレゴリー・ベイトソン(MRI)→ミラノ派家族療法→カール・トムの質問システムとなるので、エリクソンの知見が役立っているとも言えるだろう。

 何れにしても、こういったファシリテーションの技法は、
  • 戦略を戦術、業務として現場に落とし込む
  • トップのビジョン、戦略に即した業務を行う
  • トップと危機感の共有を行う
 などの具体的的なやり方として活用できるということだ。しかも、MRIやミラノ派派生の技法はファシリテータが中立に振る舞うのがポイントだ。カリスマ性のようなものは一切なくても変化が起こせる。逆にいうとカリスマ性や持論の押し付けのようなものが少しでも見えるとやはり組織は抵抗を示すということになる。だから中立であるというのが非常に大事だ。その意味では、少なくともコンサルタントはカリスマでなくとも優秀そうに見えなければいけない、というのは思い込みかもしれない。もちろん中身は優秀でなければならないのだが、格好をつける必要は一切ないということだ。

 このあたりはベイトソンの第二次サイバネティクスをくぐらせたエリクソンの技法ベースがとなるので、基本がしっかり理解できれいれば理解も実践もそれほど難しいことではないだろう。当然、生き物としての組織を扱える方法ということになる。

 ミルトン・エリクソンの技法がベイトソンのサイバネティクスをくぐらせて、巡り巡ってロゴ社の再生に役立っていると考えるとそれはそれで興味深いところでもある。もっとも、個人的にこのあたりの技法は普通に使えているが、いわゆる「催眠」でないサイバネティクスをくぐらせて、本質を取り出した方法論は、人や組織の認識の枠組みや行動の変化を支援する上で恐ろしく汎用性が高い技法になるということだ。

6月7日の進捗、1244ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 47.0%)


Volume IV
INOVATIVE HYPNOTHRAPY

Clinical Note on Indirect Hypnotic Therapy

Milton H. Erickson From the 1954 Journal of Clinical and Experimental Hypnosis (2, 171-174) Copyrighted by The Society for Clinical and Experimental Hypnosis, 1954.





お知らせ:

ミルトン・エリクソンの本質を突き詰めたから分かったことがあります。

 組織のパラドクスを解消し、組織の認識、行動の変化を支援する、
「変化・創発ファシリテーション」のオンデマンド、オンサイト講座を開始いたします。

詳細は、こちらから。


(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html


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