2017年6月9日金曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 160日目


                                                                                                                            
 
   物事には、やはり作用/反作用というのがある。

 これを考えずに押してばかりいても、抵抗は強くなるばかりだ。

 やはりシステム全体の力関係というのを見なくてはいけない。

   <ひとりごと>




はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 160日目について書いておきたい。

催眠あるいは催眠下の調査による症状-機能の決定

「The Hypnotic and Hypnotherapeutic Investigation and Determination of Symptom Function (1953)」から。著者は、ミルトン・エリクソンとハロルド・ローゼン。

 簡単に言うと、感情的な病を抱えた患者について、治療的な催眠下の環境に置くことで「症状-機能」を素早く決定することができる、ということについて書かれてる。

 要は、どのような場面でその症状が明示されるのか?催眠を使ってその状況をシミュレーションとして再現することでその症状を見立てていたということになる。これも催眠の一つの効用ということなのだろう。細かい事例がいくつか書いてあるが、ここでは書かない。

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 少し分かりにくいが要点は以下になる。

  1. 症状および症候群さえも、トラウマ的出来事の反復的な成立を促進することがある。 特定の生活状況にも関わらずトラウマ的出来事を再現することができる。 抑圧されたエロチックで積極的な衝動を満たすかもしれない。 または同時に、本質的で本能的な衝動に対する防御および罰を構成することができる。 これらは根底にある統合失調症の反応を隠すか、自殺うつ病を抑える。 それらは、これらの機能および他の機能を同時に、すべて、または特定のもの、またはそれらの組み合わせに提供することができる。
  2. 選択された患者の催眠状態では、「症状 - 機能」は迅速かつ治療的な状況で決定される。 様々な技術を利用することができる。 直接的な催眠暗示、または患者の病気の発症に先立つ期間への退行により攻撃が沈静化され、ブロックされるため、代償的な運動または他の活動が治療調査にアクセス可能な形で沈殿する。 スローモーションで攻撃が沈み込むため、個々の構成要素を詳細に治療的に調べることができる。 解離状態が誘発され得る。 夢の演出が示唆されるかもしれない。 または症状は、症状の後退感情が同時に増強される間に示唆され得、その結果、基礎となる動的材料は、治療のために直ちに接近可能となる。 さらに他の技術を利用してもよい。
  3. 治療と評価がこれらの技術を介して行われ、治療が成功すれば、川に滞留した丸太で喩えられる状態が解消される可能性がある。 滞留は、通常、1つまたは2つの重要な丸太を引き出すことによって壊れる可能性がある。 その後、残りの部分が落ち始め、川に滞留した丸太全体が消える。 これは、限られた程度ではあるが、この種の治療中に起こることであり得る。
  4. この文書の全体を通して、これらの技術の様々なものを例示してきた。 しかし、患者の匿名性を維持するために、症例履歴は時折歪められている。 
 興味深いのは、エリクソンはやはりシステム思考的な知見を持ち込み、物事の作用、反作用のようなところを考えていたということが見受けられる点だろう。やはり、問題はどのような要素が関連して起きており、そして、どのセンターピンを倒すことで問題が解消されるのか?といったことを考えていたことが伺える。
 

随考

―― 臨床催眠の基礎、エビデンス・ベースド・アプローチ――
 
   Essentials of Clinical Hypnosis an evidence-based approach (2006)」をパラパラ読んでみた。米国人の心理学者スティーブン・リンと英国人の科学ライター、アーヴィン・キルッシュによって2006年に出版された著作だ、当然両者とも博士号持ち。

 臨床催眠の基礎に書かれている著作だが、研究によって得られたエビデンスに基づいて書かれているというのが本書の特徴だ。そのため参考文献のてんこ盛りになっている。おそらく欧米に限らず日本でも臨床催眠と言えば、このような感じの科学的、統計的なアプローチになるだろう。

 効果検証の数値ものっている。例えば、催眠による禁煙の成功率は調査によって 15%〜88%とかなり幅がある。調査方法も去ることながら、分かるのは効果にかなりばらつきがあることだ。2006年時点でこういう感じなので、誰がどの状況でどんなことを行うか?でかなり左右されるということだろう。


 ただし、全体的に怪しいことはまったく書いていないので「当たり」の本だったように思う。退行催眠にある虚偽記憶などについてもきちんと扱われている。あまり大きな声では言えないが、エリクソンの論文と違ってライターがきちんと編集しているので素材そのものの素の良さは消えているだが、代わりにとても調子よく読める。要は、ヤプコの表の真ん中にある標準的アプローチだということだ。ただし、ダブル・バインドを使って無意識に介入したり、パラドクスを使って人間関係に介入するところまではなく、単に個人のレベルの症状で閉じているのが分かり易くもあり物足りないところでもある。その意味、第二次サイバネティクスや構成主義の要素が足りない感じにはなっている。

 そのようなわけで、うつなどは催眠というよりも認知行動療法を催眠でやっているような感じになっている。

それで、目次は以下の感じだ。
 
(訳は適当)
序章
第1章 ------ 定義と催眠黎明期の歴史
第2章    ------ 現代的な理論と研究
第3章    ------ 臨床催眠の基礎
第4章 ------ 催眠誘導と暗示
第5章 ------ 経験により指示される技法
第6章 ------ 禁煙
第7章 ------ 摂食障害
第8章 ------ うつ
第9章 ------ 不安障害
第10章 ------ PTSD
第11章 ------ 疼痛管理
第12章 ------ 質問と疑問
参考文献
著者索引
用語索引
著者について
 
―― なぜ、ニッチな本を読むのか?――

 医者でも臨床心理士でもないのになぜ、こんなニッチな著作を読むか? 

 答えは案外単純だ。

 母国語でない英語と、自分の知覚の感覚や動かし方を結びつけるために読んでいるのだろうなと思う。要は、英語を身体化するためだ。

 普通、個人的に英語の本を読む時は、概念を分かった気になって読んでいるような気がしている。概念とは、例えば、「Market 」「Love」「Constitution」・・・・といったような名詞の概念だ。もちろん臨場感を高めてイメージできる概念もあれば、そうでない概念もある。

 しかし、催眠の本は、これとは真逆だ、手が重たく感じる、まぶたが重たくなる、何か感覚を感じる、というように言語がダイレクトに知覚に結びついているところだ。特に、催眠誘導のスクリプトは知覚や身体感覚に焦点が当たるような記述になっている。英語は、一般的には理屈でディベートするようなゴツゴツした感じの言語だが、催眠のトランスクリプトの場合は、ふわふわ心に入ってきてとても心地よい。これが案外ハマるところだ。さらに、エビデンスが付いているところも嬉しいところだ。

 もう一つは、催眠の言語パターンが、メタコミュニケーション的だということだ。コトバは状況を変数として取り込んで異なる意味をつくる。これを楽しんでいるところがある。

 何れにしても催眠誘導のトランスクリプトのような知覚の補助線にするようなモードで、かつメタ・コミュニケーションを志向した英語を学ぶのも案外面白いものだ。

6月9日の進捗、1260ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 47.6%)


Volume IV
INOVATIVE HYPNOTHRAPY

The Hypnotic and Hypnotherapeutic Investigation and Determination of Symptom Function Milton H. Erickson and Harold Rosen
Read in part (a) at the 107th annual meeting of the American Psychiatric Association. Los Angeles, California, May 4-8, 1953; and in part (b) at the Conference of Directors of Mental Hygiene Clinics of the State of New York, Pilgrim State Hospital, Brentwood, Long Island, N.Y., June 2, 1953. Quoted here from the Journal of Clinical and Experimental Hypnosis, 1954, 2, 201-219. Copyrighted by The Society for Clinical and Experimental Hypnosis, 1954.





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(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html


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