2017年7月1日土曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 182日目


                                                                                                                            
 
  今日の話題は結構重い、

  自分は医者ではないので、『ブラックジャック』を読んでいるモード

  で単なる物語として読んでいる(笑)。

   <ひとりごと>




はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 182日目について書いておきたい。

組織的な脳損傷に対する催眠を志向した心理療法:補稿

「Hypnotically Oriented Psychotherapy in Organic Brain Disease :An Addendum(1963)」著者はミルトン・エリクソン。

 登場するのは女性のクライアント、J.F.Kの暗殺のニュースにショックを受け、食べ物が喉を通らなくなる。

 前の論文の補足。1963年10月号に掲載された報告書では、特に強調されていなかったが、手順全体の根底にあるのは患者の感情の利用であることは明確だった。 要は感情を使う。新しい方法(催眠によって)は、感情的な反応、態度、状態を誘発したが、時には心地よく、さらにはしばしば特別な個人的な不快感を誘発した。これらは、被験者の学習を強化し、促進し、より大きな努力を促すために使用された。 ある程度、漸進的に良くなることで、彼女は治療全体を通してこれを認識し、頻繁に躊躇しながらも、喜んで耐えた。

・・・・・・
こういった感じの短い論考


脳の動脈硬化におけるラシュレーの研究の応用

「Application of Implications of Lashley’s Researches in a Circumscribed Arteriosclerotic Brain Condition(1963)」著者はミルトン・エリクソン。

 クライアントは、70歳の女性。複数の異なる有能な神経科医によって何度も別々に診断された。各検査の所見は本質的に同じで、クライアントが脳の異常な動脈硬化性異常状態であると思われるものに苦しんでいたため、顔面に限られパーキンソン病を示唆する症状を示し、発話に影響を与えた。当時は、効果的な投薬は知られておらず、その状態は治療できないということに同意した。数年後に彼女の家族が促した後、クライアントと夫は治療を確実にすることに同意し、催眠療法の著者にやって来ました。患者の顔の検査は、(a)唇の震え(b)顔面筋肉全体の痙攣性、不規則な動き、(c)不完全で途切れた言葉遣い、 (d)唇と顎の粥状体様運動。

 エリクソンはこのクライアントにたいして催眠を用いて治療を試みるというのがこの論文の趣旨。

・・・・・・・
 ここでは細かい技法は書かれていないが、症状は改善に向かう。もちろん、これが同様の症状に有効かどうかはここでは検証されていない。

スピーチの問題における実験的催眠療法

「Experimental Hypnotherapy in a Speech Problem(1965)」著者はミルトン・エリクソン。
 
 クライアントは60代なかばの女性。ここ8年ほど苦しんでいた病状が「パーキンソン病」と診断される。このクライアントは診断に不満を持ち、セカンドオピニオンを求めるために2番目、3番目の神経科に意見を求めるが、すべて個々に同じ診断との回答。彼女はなかば諦める。発話が難しいところがある。

 催眠に興味を持って藁をも掴む思いでエリクソンのもとにやってくる。・・・・・・概要はこういった話。

・・・・・・・・・・

 エリクソンのこの論文は1つの事例であり、統計的に検証された有効性が掲載されているわけではないので、あくまでも「こんな例もあった」というスタンスで読んだほうがよいのだろう。


随考

――サイバネティクスと心理療法と――

 米国サイバネティクス学会のサイトに「Therapeutic intervention and high-order adjustments of recursion(2015)」という論文がリンクされていてこれを読んでみた。個人的な趣味にあっていて、内容はかなり面白いという印象だ。

 心理療法家のミルトン・エリクソンの技法は弟子筋の人たちに武道の一子相伝ではないが、暗黙知が暗黙知として継承されているような構図がある。だから、エリクソンは伝統芸能の内弟子のように師匠の言動を四の五の言わずに真似るというような、暗黙知ー暗黙知モデリングで学ぶ必要がある。

 ただし、世の中には頭のよい人もいて、この暗黙知の一部を取り出して形式知化したり理論化を試みる研究者も出て来る。その筆頭は人類学者のグレゴリー・ベイトソン等ということになる。このあたりで少し書いた。ここでは当然、エリクソンの暗黙知は落ちてしまっているが、誰もが理論やフレームワークといった形式で学ぶことが可能になる。要は、暗黙知を形式知として学ぶことができるという具合だ。

 もちろん、野中郁次郎先生のSECIモデルではないが、暗黙知を形式知化する、形式知を連結する、形式知を暗黙知化する、暗黙知を暗黙知として共有する、というサイクルをコミュニティの中で回すと当然、技法は進化していく。現在は、エリクソン派生のブリーフ・セラピーも暗黙知と形式知が相互に影響を及ぼして、悪い言い方をするとエリクソンの技法とは似ても似つかぬ方向に発展していたり、良い言い方をすると、簡素で本質的なところが取り出されているというところがある。ただし、ここでの評価のポイントは実際にその効果があるのか?というところで検証されるべきだろう。個人的には、やはりエリクソンは SECIモデルに即して学ぶのが一番よいと思っている。

 ここで、暗黙知の形式知化について考えると、その補助線として使われたのが第二次サイバネティクスということになる。エリクソンの一挙一投足を観察するためにこの第二次サイバネティクスサイバネティクスを持ち込んだのは上でも書いたがグレゴリー・ベイトソン等ということになる。実は、これが現在、エリクソン派生のブリーフ・セラピーが出現していることを理解する一つの鍵でもある。形式知、理論家するとこれらを組み合わせて整合性のある形式知を生み出すことが可能になる。余談だが、上では第二次サイバネティクスの範疇としてニクラス・ルーマンの社会システム論あたりまで言及されている。もちろん、エリクソンがルーマンの理論を取り入れていたわけではないが、ルーマンを通して見ることでエリクソンが人間関係にどのように働きかけていたのかは理解しやすくなる。

 さて、枠組みとして第二次サイバネティクスサイバネティクスを持ってくると抽象度の高い思考をすることができる。つまり、その状況や振る舞いなどを枠組みの変数と考えることができるという具合だ。これで、エリクソンの暗黙知をこのフレームワークに投入して、パラメーターを色々いじると、MRIになったり、戦略的家族療法になったり、戦略的短期療法になったり、ミラノ派家族療法になったり、ソリューション・フォーカスト・アプローチになったりということになる。要は、エリクソン派生の療法の違いをパラメーターをどのようにチューニングしたかだけの違いと考えることができるようになるという具合だ。

 結局、このあたりの話を始めると知識の創造と共有、それと学習ということになってくるので、トヨタ式のリーン生産方式や開発手法なども第二次サイバネティクスの枠組みで見ることも可能になる。
 
7月1日の進捗、1436ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 54.2%)


Volume IV
INOVATIVE HYPNOTHRAPY

Hypnotically Oriented Psychotherapy in Organic Brain Disease: An Addendum Milton H. Erickson Reprinted with permission from The American Journal of Clinical Hypnosis, April 1964, 6, 361-362.

Application of Implications of Lashley’s Researches in a Circumscribed Arteriosclerotic Brain Condition Milton H. Erickson Reprinted with permission from Perceptual and Motor Skills, 1963, 16, 779-780.

Experimental Hypnotherapy in a Speech Problem: A Case Report Milton H. Erickson Reprinted with permission from The American Journal of Clinical Hypnosis, 1965, 7, 358-360.



お知らせ:

ミルトン・エリクソンの本質を突き詰めたから分かったことがあります。

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詳細は、こちらから。


(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html


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