2017年7月10日月曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 191日目


                                                                                                                            
 
  たかがメタファー、されどメタファー。

  問題解決から創造性の発揮まで、

  使えるか使えないかの違いによる結果の違いは案外大きい(笑)。

   <ひとりごと>




はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 191日目について書いておきたい。

催眠療法の手順における時間の疑似的方向付け

「Pseudo-Orientation in Time as a Hypnotherapeutic Procedure(1954)」著者はミルトン・エリクソン。

 この論文はさり気なく深いことが書いてある。行間を読む必要がある。もっというと非常によい論文だ。

 エリクソンは、「心理療法におけるすべての試みは常に日常のさりげない経験を利用する必要がある。そして、日常生活に浸透しているクラアンとの言動や他人とのやりとりのパターンを理解し、クライアントひとり一人にユニークなニーズに合わせた形式でそれを利用する必要がある」と述べている。

 これは案外重要だ、クライアントは花を育てていたり、山登りを趣味としていたり、読書が好きだったりする。また、人との関係では、子供の世話をしていたり、家族と食事をしたり、くつろいだりということだ、あるいは極端に人付き合いが悪いといったことも。エリクソンはこういった日常の経験をよく観察し、そのさりげない経験を利用する必要があると言っている。別に突拍子もないメタファーを使う必要はない。極端な話、UFOに拉致される必要もないし、前世のようなオカルト話をする必要もないということだ。エリクソンの格好よさは、こういった日常の経験の話をしているようで、行間にきちんとメタ・メッセージやメタファーを詰め込んでクライアントに話している点だ。

 また、心理療法は実験的な側面を備えている。当然、社会科学的な分野であるため、実験室で有効だった理論を万人に当てはめたからといって万人に有効というわけではない。その意味、一期一会で、そのクライアント一人ひとりの状況に合わせて処方とこの実験的試みを続けていかなければらないということだ。

 そして、エリクソンが過去15年間に渡って効果を検証してきた技法がここで示されている。具体的には、催眠における「未来進行」だ。もちろん、上で書いた日常のさりげない経験を利用する形式で行われる。簡単にいうと、現在抱えている問題の治療上のゴールが未来のある時点ですでに達成されていると経験できるように催眠下で未来を疑似体験する技法だ。

   ただし、重要なポイントがある。催眠下で未来を疑似体験する際に、第三者的な視点で、乖離された状態で、自分がゴールを達成している様子を経験するということだ。つまり、認知科学でいうメタ認知した状態で未来のゴールを達成している様子を経験するということだ。案外、これは重要なことだ。これを無視してしまうとあまり効果はない。理由はメタ認知できるということは、現状の枠組みの外から未来のゴールを見ることができているということだからだ。

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 昨日のつづきをつらつら読む。 

 
随考

 ―― メタファーについての考察――

   ミルトン・エリクソンは心理療法にメタファーを使った。人の認識や行動の無意識レベルでの変化を(抵抗を抑えて)間接的に支援するためだ。あるいは、クライアントの無意識から変化のための資源・資質(リソース)を間接的に引き出すためだ。エリクソンのメタファーについての全体像は 「Metaphoria 」、一般的な臨床催眠のメタファーとしては「Handbook of Hypnotic Suggestions and Metaphors」を読めばよいだろう。何れも良書だ。

 もちろん、メタファーは心理療法に限った話では終わらない。マーケティング組織のマネジメントをはじめとした、人の認識や行動がある限り、問題解決から既存の枠組みを超えた創造性の発揮まで、どこででも応用可能だ。それは、メタファーが人間の無意識までを含む認識(の枠組み)や行動に働きかけるものだからだ。

 一般的にメタファーは、AはBのようである。(例、人生はジェットコースターのようである。時間は金である。など)というフォーマットの表現になる。しかし、The American Journal of Clinical Hypnosis の「Men Are Grass: Bateson, Erickson, Utilization and Metaphor」を読むとエリクソンの臨床上のメタファーは、より即興的でダイナミックだ。

 ここでは、メタファーというのがロジック的にはアブダクションであることが分かる。いわゆるベイトソンの「草三段論法」がチャールズ・サンダー・パースの唱えた「アブダクション」のロジックであるということだ。

 非常に簡単にいうと、AとかけてBと解く、その心は?というロジックだ。この場合、人間とかけて草と解くその心は?になる。人と草の間に帰納法でもない、演繹法でもないアブダクションのロジックでより即興的にその状況から無意識に関係を見つけていく補助線がメタファーということだ。笑点のなぞかけのように無意識が勝手にリソースとしての関係性を探し始める。

 さて、メタファーと言えば、それを理論の中心においた認知言語学がある。認知言語学は1980年以降から盛んになるので比較的新しい分野だ。ちなみに、認知言語学を意識した形式でメタファーをつくってみるというのも面白い取り組みだ。エリクソンやベイトソンが生きていた時代に比べると、理解を助ける補助線として認知科学の道具立ては格段によくなってきている。余談だが、カテゴリー化とプロトタイプの理論あたりからはじめ、ソース(ドメイン)とターゲット(ドメイン)の粒度と関係性がどうなっているのかを考えてみるのも面白い。

 SlideShareに認知言語学ベースでのメタファーのつくり方が解説されている資料が見つかる。9つのステップで、インパクトの大きいメタファーをつくる方法だ。


 このスライドでは、企業活動における製品やサービスをどのようなメタファーでアピールすればよいのか?という視点で書かれているが、これはこれで面白いところだ。

1. (ターゲット・ドメイン)対象となる製品やサービスを決める
2.どんな利点があるのかを考える
3.(ソース・ドメイン)を決める
4.(ソース・ドメイン)が害を及ぼさないことを確認する
5.(ソース・ドメイン)と(ターゲット・ドメイン)が別の範疇にあることを確認する
6.モードを決める
7.コンテクストを確認する
8.対象者でメタファーをテストする
9.クリエイティブになる、使い古した慣用句は避ける

 おおよそこんな感じになる。会社の仕事にもメタファーを使う方法を取り入れれば、また違ったものが見えてくるだろうし、たとえそれがつまらない仕事であっても創造性を発揮できる余地はあるしユーモアも入れ込むことができる。

 たかがメタファー、されどメタファー、知っているか知らないかは無意識のリソースをどれだけ有効に活用しているかの指標になるし、得られる結果もかなり違ってくるだろう。

 
7月10日の進捗、1508ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 56.9%)


Volume IV
INOVATIVE HYPNOTHRAPY

Pseudo-Orientation in Time as a Hypnotherapeutic Procedure Milton H. Erickson Quoted from the Journal of Clinical and Experimental Hypnosis, 1954, 2, 261-283. Copyright by the Society for Clinical and Experimental Hypnosis, 1954.



お知らせ:

ミルトン・エリクソンの本質を突き詰めたから分かったことがあります。

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(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html


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