2017年7月11日火曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 192日目


                                                                                                                            
 
  心と体は一つのシステム、2つの現れ。

   <ひとりごと>




はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 192日目について書いておきたい。

催眠療法の手順における時間の疑似的方向付け

「Pseudo-Orientation in Time as a Hypnotherapeutic Procedure(1954)」著者はミルトン・エリクソン。

 この論文はさり気なく深いことが書いてある。行間を読む必要がある。もっというと非常によい論文だ。

 エリクソンは、「心理療法におけるすべての試みは常に日常のさりげない経験を利用する必要がある。そして、日常生活に浸透しているクラアンとの言動や他人とのやりとりのパターンを理解し、クライアントひとり一人にユニークなニーズに合わせた形式でそれを利用する必要がある」と述べている。

 これは案外重要だ、クライアントは花を育てていたり、山登りを趣味としていたり、読書が好きだったりする。また、人との関係では、子供の世話をしていたり、家族と食事をしたり、くつろいだりということだ、あるいは極端に人付き合いが悪いといったことも。エリクソンはこういった日常の経験をよく観察し、そのさりげない経験を利用する必要があると言っている。別に突拍子もないメタファーを使う必要はない。極端な話、UFOに拉致される必要もないし、前世のようなオカルト話をする必要もないということだ。エリクソンの格好よさは、こういった日常の経験の話をしているようで、行間にきちんとメタ・メッセージやメタファーを詰め込んでクライアントに話している点だ。

 また、心理療法は実験的な側面を備えている。当然、社会科学的な分野であるため、実験室で有効だった理論を万人に当てはめたからといって万人に有効というわけではない。その意味、一期一会で、そのクライアント一人ひとりの状況に合わせて処方とこの実験的試みを続けていかなければらないということだ。

 そして、エリクソンが過去15年間に渡って効果を検証してきた技法がここで示されている。具体的には、催眠における「未来進行」だ。もちろん、上で書いた日常のさりげない経験を利用する形式で行われる。簡単にいうと、現在抱えている問題の治療上のゴールが未来のある時点ですでに達成されていると経験できるように催眠下で未来を疑似体験する技法だ。

   ただし、重要なポイントがある。催眠下で未来を疑似体験する際に、第三者的な視点で、乖離された状態で、自分がゴールを達成している様子を経験するということだ。つまり、認知科学でいうメタ認知した状態で未来のゴールを達成している様子を経験するということだ。案外、これは重要なことだ。これを無視してしまうとあまり効果はない。理由はメタ認知できるということは、現状の枠組みの外から未来のゴールを見ることができているということだからだ。

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 昨日のつづきをつらつら読む。 
A,B,C,DおよびEの事例が登場するが、要点だけをまとめると以下になる。地味だが重要だ。


For these patients, apparently, the establishment of a dissociated state, in which they could feel and believe that they had achieved certain things of benefit to them, gave to them a profound feeling of accomplished realities which, in turn, resulted in the desired therapeutic reorientation. 

これらの患者について、明らかに、彼らに利益の特定の物事を達成したと感じ、信じている可能性がある中で解離状態の確立は、今度は、望む治療的結果に対する再方向づけの結果をもたらした。


 
随考

 ―― 催眠と健康、心と体は相互作用する――

     Youtubeに興味深い映像がアップロードされていた。タイトルは「Transformation : Hypnosis and Health (変容:催眠と健康)」。おそらく映像は2005年くらいの撮影。

 内容は、スタンフォード大の教授のデビッド・スピーゲルがダライ・ラマ猊下にプレゼンテーションを行っている内容だ。デビッド・スピーゲルはThe American Society of Clinical Hypnosis などでもお馴染みの臨床催眠の研究者で、父親の故ハーバート・スピーゲルとの共著については、ここで書いた。学術的で読み応えのある著作だ。


 映像に戻ると、ガン患者の(現代医療による)標準的な治療に併せて、メンタルを平静に保つために自己催眠を使った結果が統計で示されている。ストレスや痛みを催眠でコントロールし、メンタルを平静に保ったほうがより長くサバイバルできるという結果になっている。ここで、患者が医師やサポートグループの支援を受けて患者自身が(標準的な)自己催眠を使えるようになっている、というのがミソだろう。難しい技法をマスターする必要があるわけではない。また、神経系の話なので何かスピリチュアルなものを信じる必要もない。

 ポイントは、「心と体は一つのシステム、2つの現れ」ということだ。日本人であれば、「健全な身体に健全な心が宿る、健全な心は健全な身体をつくる」は当たり前の概念だが、これが統計的に検証されている様子というのが案外面白い。

 もちろん、催眠が直接何か健康によいといったことを言っているわけではない。心と体は相互作用し、心の状態をよい状態に保つことで体にもよい影響を与えることができる。この心をよい状態に保つために間接的に催眠が役立つということを述べてることに過ぎない。ここで言っている、(標準的な)自己催眠は、日常や仕事の場面でもメンタルを平静な状態な保つことにも応用可能だろう。

 スタンフォードの当該記事を読むと、現在進行中のことのようだ。
 当たり前だが、説明が論理的かつ科学的で非常に面白い。
 
7月11日の進捗、1516ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 57.2%)


Volume IV
INOVATIVE HYPNOTHRAPY

Pseudo-Orientation in Time as a Hypnotherapeutic Procedure Milton H. Erickson Quoted from the Journal of Clinical and Experimental Hypnosis, 1954, 2, 261-283. Copyright by the Society for Clinical and Experimental Hypnosis, 1954.



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(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html


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