2017年7月16日日曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 197日目


                                                                                                                            
 
  日本で昔から言われている『ケンカ両成敗』なども

  ベイトソンの円環的因果関係のシステム論で考えると

  面白いことが分かってくる(笑)。

   <ひとりごと>




はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 197日目について書いておきたい。

心理療法における心理的ショックと創造の瞬間

「Psychological Shocks and Creative Moments in Psychotherapy (1973)」著者はアーネスト・ロッシ。

 この論文は、アーネスト・ロッシがミルトン・エリクソンやエリクソンの妻のエリザベス・ムーア・エリクソン(略称ベティ・エリクソン 、次女のベティー・アリス・エリクソンは、ベティ・アリスと呼んで区別する)から録音機を駆使して聞き取り調査を行いそれをまとめた論文だ。

 あまり大きな声では言えないが、初期にエリクソンが書いた論文はかなり小難しいことがダラダラ書いてある印象だ。しかし、ロッシと組むようになってからは、要旨が整理されてかなりムダな部分がなくなっているように思われる。要は、ロッシは読者が知りたそうなエリクソンの秘密を引き引き出してまとめるのが非常にうまい。

 この論文は1972年にロッシがエリクソンの元を訪れ、過去50年間にもおよぶエリクソンの心理療法についての考えや事例などを録音し、それを論文としてまとめた内容だ。

 ここでのテーマは、心理的ショック。これが何も悪いわけではなく、エリクソンはクライアントの認識や行動のパターンを変えることを支援するために意図的にクライアントを驚かせるようなことを行った。もちろん、クライアントの安全や倫理には考慮する必要がある。ここでは、その事例がいくつか紹介されている。かなり面白い。
 
・・・・・

 関連にメモ。論文の中にエリクソンとハーバート・スピーゲルが催眠について議論する場面が出て来る。スピーゲルはおそらく当時コロンビア大学の教授。

もう一つは、エリクソンが心理療法はドミノ倒しのようなものだ、といっている点は印象的だ。
 
随考

 ―― システミックセラピーの背景にあるベイトソンの思想 ――
 
 SlideShareに「CORE CONCEPTS IN SYSTEMIC THERAPY」(システミックセラピーにおけるコア・コンセプト)というタイトルのスライドがあったので読んでみた。実はこういうのが好みだ(笑)。システミック・セラピーは、エリクソン→MRI(ベイトソン)→・・・戦略的家族療法、ミラノ派家族療法・・・という感じで進化している心理療法の一流派とも言えるが、生き物である家族や組織を扱う場合には必須の知識だ。

 戦略的家族療法やミラノ派家族療法につながるエリクソンの技法は色々な要素やそのつながりをシステミックに考慮して局所最適ではない形式でクライアントを支援していた、ということになるだろう。もちろん、このあたりはエリクソンはあまり難しいことは考えておらず単に経験と無意識からのインスピレーションにしたがって介入をした結果、全体最適化が実現していただけなのかもしれないが・・・

 ただ、エリクソンのやっていたことをコトバで説明しようとすると骨が折れる。ベイトソンのような理屈が大好きな爺さんの知恵が必要だということになる。こういったことを考えながらスライドを読んでみると、かなり面白い。


 スライドの内容は、単なるお勉強という範囲には留まらない。特にグループや組織の問題を考える場合に役立つ考え方だ。具体的な内容は以下、

・家族のライフサイクル
・直線的因果関係から円環的因果関係への転換
・ベイトソンの影響
・システミック・セラピーのコア・コンセプト

 家族のライフサイクルの話は、普通の企業組織でも応用可能だ。今平均年齢30歳の会社でも若い人財が入って来ないと20年後には平均年齢が50歳の会社になる。落ち着いた会社にはなるだろうが、市場が大きく変化したりすると常識を超えた新しい発想で追従するのは難しくなるかもしれない。このあたりはアラン・カーの家族療法の本からの引用だ。このあたりで紹介した。後で確認しておきたい。

 さらに、大きなテーマは、組織を扱う場合には、直線的因果関係ではなく円環的因果関係で観察する重要性だ。スライドではポールという12歳の男の子の例が出て来る。直線的因果関係ではこの子のフラストレーションが貯まると怒りが湧いてくると、直線的因果で、個人に閉じている問題として考えている。しかし、円環的因果関係ではポールとポールの父と母の言動が相互作用する中でこの怒りが起こっていると考えている。

 円環的因果関係で考えることで、物事がより全体論的にシステミックに理解できるようになる。要は、ポールの怒りを止めたかったら家族全体を見て、関係性を変えるように、なんらかの言動を変える必要があるということだ。そう考えるとシステムとしての家族に介入する場合、単純に都合の悪い現象だけを見てそこに直接介入すると、単なるモグラ叩きに終わってしまうことも理解できる。ポールだけを見て怒るのをやめろといっても無理スジの話だからだ。

 これから、ミラノ派家族療法の円環的質問にしても、エリクソン的な臨床催眠による介入にしても、円環的因果関係を考慮して全体を見た上で、変化のレバレッジ・ポイントに働きかけていたのだろうな、ということが分かってくる。実際、『ミルトン・エリクソン心理療法:〈レジリエンスを育てる〉』の中に、エレベーターを怖がる男性に、エレベーターガールに頼んで誘惑してもらって、恐怖から気をそらしてもらう介入があった。これは円環的因果関係を考えた介入だと言えるだろう。

 余談だが、これができると心理療法には関係なく組織のマネジメントがうまくなる、と思っている。書いていて思ったが欧米のMBAの組織マネジメントは行動主義、あるいは認知主義のとちらかで、案外システム学派、あるいはシステミック学派というのはまだマイナーではないのかと気づいた。たしか、ヘンリー・ミュンツバーグの『戦略サファリ』の中にもシステム学派、システミック学派というのはなかった記憶がある。

 そして、真打ち登場、ベイトソンの組織に対する考慮点が12ほど書かれている。技法がないと単なるウンチクで終わるのだが、技法があるとガイドライン的に使える。この考慮点はこのあたりのアラン・カーの著作の引用ところで書いた。

 さて、このあたりのことが分かって、なんらか技法として実践できると何がよいのか?という話になるが。これはこのあたりで書いた、「バカとは何か?」が参考になるだろう。もちろん、ここでのバカはシステム思考ができずに、現象に感情的に反応してしまうような人と定義した。反対に、ここでのねらいは、これをやめて世の中、もう少しつながりを考えて色々なことがシステミックに対処できること、となる(笑)。

 
7月16日の進捗、1552ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 58.7%)


Volume IV
INOVATIVE HYPNOTHRAPY

Psychological Shocks and Creative Moments in Psychotherapy Ernest L. Rossi This paper was written by Ernest L. Rossi who expresses his appreciation to Milton H. Erickson for providing the case material and inspiring the discussion of its theoretical issues. He and his wife, Elizabeth Erickson, have generously contributed time, effort and editorial experience in its preparation. Reprinted with permission fromThe American Journal of Clinical Hypnosis, July, 1973, 16, 9-22.





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(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html


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