2017年7月17日月曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 198日目


                                                                                                                            
 
  もっと、大風呂敷を広げたような、

  演出にやたら凝ったリフレーミングというのを考えてみるのも

  面白そうだと思ってきた(笑)。

   <ひとりごと>




はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 198日目について書いておきたい。

新しい化粧の枠組みを促す

「Facilitating a New Cosmetic Frame of Reference (1927)」著者はミルトン・エリクソン。発表されなかった原稿。

 これは古い原稿だが、エリクソンの原稿の中でも名作な部類だろう。なかなか良い原稿だ。ある意味、この原稿はエリクソンの凝った演出のリフレーミングということになるだろう。

 クライアントは大学生2年の女性。劣等感に苛まれ心理療法家を探している。子供の頃は幸せに育ったが、家族とドライブ中事故に会い、車から投げ出された。生命に別状はなかったが、口の右側に傷が残ってします。そのため、いつも口の右側に右手をあて、右利きにもかかからず食事中にも左手で食事をするようになる。いつも、口の左側を見られないよう気にしていて性格も変わってしまう。

 整形の医師から両親をバカにされた不信感から医師に対する不信感もある。当然、エリクソンにも不信感を抱く。中々トランス誘導、ということにならない。それでも、紆余曲折を経てトランス誘導に成功すると、自画像を書き始め、顔にコスメティックパッチを描き始める・・・・

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 全部書くとネタバレになるのでこのあたりで止めておく。

 
 
みにくいアヒルの子:セルフイメージを変換する

 「The Ugly Duckling: Transforming the Self-Image(1933)」著者はミルトン・エリクソン。出版されなかった原稿。

    これもプロットが難しい。

 同じクラスの女子高生が2人。2人は友達というわけではない。両方共友達はいない。片方が非常に頑固で堅物。もう一人は非常に気さくで開放的。この2人が同じ1人の男性を好きになった。妊娠三ヶ月が発覚した後で、開放的なほうの女性がこの男性と結婚した。しかし、結婚生活は長く続かなかった。3年の結婚生活の後離婚。その後2年立って。頑固で堅物の女性とその男性が結婚する。さらにその2年後、娘が生まれる。

 しかし、その女性が25歳になった時、エリクソンのクライアントとなる。理由は、清教徒として厳密に育てられたためか、夫の一挙一投足の嘘が許せなくなった。

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 このような感じで物語がはじまる。ここもオチは書かない。


 
 
随考

 ―― リフレーミングの本質 ――

    リフレーミングは、短期療法や家族療法の技法だ。簡単に言うと「認知の枠組みの再構築」あるいは枠組みのもとで行われる「認知プロセスの再構築」となる。

 まずは、局所最適にならないようにクライアント個人に着目する。クライアントの認識の枠組みが転換すると、経験の意味付けのやり方が変化する。意味付けのやり方が変化することでクライアントが無意識に行っている反応が変化する。一般意味論でいう「意味反応」が変化する。例えば、リフレーミングに成功すると、クライアントはそれまで意識ではどうにもならなかった苦手な状況がそう気にならなくなる。苦手な人の前でも物怖じしなくなる。高所や人前でのスピーチが怖くなくなる、といったことが起こる。余談だが、リフレーミングは日常や仕事上の問題解決にも有効だ。普段意識されない常識の枠組みを超えた問題解決に導ける可能性は上がる。イノベーションを指向した解決技法の一つとなる。

 リフレーミングと最初に命名したのは、MRI(Mental Research Institute)のポール・ウオツラィック、ジョン・ウィークランド、リチャード・フィッシュたちだ。ミルトン・エリクソンらの心理療法を研究し体系化を試みた中で出てきた技法だ。このあたりは、『“Seeing Things in a New Light” Reframing in Therapeutic Conversation』を読むと時系列で比較的詳しく書かれている。エリクソンに関して言えば『催眠における生活構造におけるリフレーミング』が日本語で読める。

 さて、ネットの情報を読むと、コップ半分の水を見て、「半分しかない」を「半分もある」に変えるのがリフレーミングだと書かれていたりする。しかし、実は、こういったことはどうでもよい話だ。もし、クライアントが「半分しかない」と言ったら、セラピストは「何か気になることでも?」と尋ねればよいだけの話だからだ。そもそも、状況や意図が分からなので、それを明確にするところから始めないと何も始まらない。

 さて、本当のところ、日常生活でも仕事の場面でもリフレーミングは人との関わりの中で考えたい。理由は、ほとんどの問題は人間関係の中で起こっているからだ。より全体最適を指向したリフレーミングだ。

 本質的なリフレーミングの話をするのに丁度よい教材が SlideShareにアップロードされている。このスライドは、家族療法の中でもサルバドール・ミニューチンの構造派家族療法について説明しているが、人間関係におけるリフレーミングについて参考になることが多い。

 スライドを読んでみる。


 
 まず、「全体」としての(家族)システム、それと「部分」としての個々人の振る舞いを考える。ここでのシステムとは、関係性を含む家族やグループのことだ。また、都合の悪い振る舞いは五感で観察できる。ここで、都合の悪い振る舞いをする家族のメンバーをスケープゴードとしていけないということだ。不都合な振る舞いはそのメンバー個人の振る舞いを(家族)システムの一部として見る支援をセラピストが行う。これがリフレーミングというわけだ。つまり、家族というシステム「全体」における「部分」としての不都合な振る舞いが関係している、と示唆する。

 簡単に言うと、「問題はシステムとの関係性にあり、個人の振る舞いではない」「同じ状況、同じ立場になれば誰で同じようなことをするだろう」「システムを維持するために(よかれという意図で)その振る舞いが行われている」.を伝える。余談だが、まともな会社だと同じような発想で業務をやってもらっているだろう。「問題はシステムとの関係性にあり、個人の振る舞いではない」、「だから関係性を見直すことでシステムを改良しなければ」と。こういう発想の文化をつくることが特定の人のいじめを防止することにもなる。

 上の例では、家族の一人であるロビーという男の子が出て来る。そして、「ロビーが四六時中怒っている」、と報告される。それに応えてセラピストは、「家族に起こっている何かで、ロビーが行き詰まっていると感じている時にそうしているのかもしれませんね」と家族システムと個人の振る舞いの関連性を示唆する。これがリフレーミングだ。ここには暗に家族のメンバーの何らかの振る舞いの連鎖が、ロビーの振る舞いに関連していることが示唆されている。例えば、父と母が喧嘩を始めそうになると、それを止めようとしてロビーが怒り始めるというのが分かってくることもあるだろう。ここでは円環的因果関係が示唆されている。Youtubeに円環的因果関係を説明した映像がみつかる。



 組織は、それを維持しようとする恒常性が働く。家族の場合もそうだ。そして問題行動を起こしているIP は組織を維持するために問題を一人で引き受け、一見よくない振る舞いをしているようなところがある。もっとも、最近はIPという用語はあまり使わなくなっているようだ。このあたりで書いた。

 さらに、関係性についてベイトソンの概念を持ち込んでみる。恒常性を保てない状態にある場合が2つある。一つは、コンプリメンタリーな関係が弱まって、お互い興味がないという関係になる場合。もう一つは、シンメトリカルな関係がエスカレーションして組織が分裂する場合だ。前者の場合は、磁石の力は弱まるように無関心で組織の関係が弱まる。後者の場合は、ケンカ別れして分裂する。恒常性を保つということは、こうならない状態を保つということだ。IPはこうならないため問題行動を行っている、と仮定される。

 もっとも、実際は関係性にパラドクスがあるので一筋縄ではいかない。現状の枠組みを超えて大きく変化するには、パラドクスを伴った二項対立を弁証法的なロジックで対立を解消する必要がある。逆に言うとパラドクスが見つかったら現在の枠組みを超えて変化できるチャンスでもある。

 ウオツラィックらは、「パラドクス」の状況設定と、それを解消する質問による「リフレーミング」を使うことで、既存の枠組みを超えた第二次変化(Second-Order Change)と呼ばれる心理療法上の認識や枠組みの変化が得られることを実証した。もちろん、この場合催眠を使わないでも催眠を使った時と同じ効果が得られる。このあたりで書いた話だ。また、パラドクスへの対処については、このあたりで書いた。

 何れにせよ、問題構造を(家族)システムの一部と見る支援から始めるとよいだろう。少なくとも、短期療法や家族療法のリフレーミングは問題行動とより大きなシステムとの円環的因果関係を見るべきであり、単純にポジティブ/ネガティブや長所/短所といった見方にはならにことが分かるだろう。

 リフレーミングを支援するには、セラピスト側はシステム思考ができなければならないが、これはちゃんとしたリフレーミングが日常や仕事の場面でも威力を発揮する証左ということでもある。まとめると以下になるだろう。

リフレーミングは、
・全体と部分、システム全体と個別振る舞いの関係をよく観察する。
・直線的因果関係ではなく円環的因果関係で見る。
・部分と全体の関係、システムの円環的因果関係を変えることで起こる。
・パラドクスを利用して枠組みの外に出ることを考える。
・セラピストは冷静にシステム思考をしてシステムを観察する。

 
7月17日の進捗、1560ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 59.0%)


Volume IV
INOVATIVE HYPNOTHRAPY

Facilitating a New Cosmetic Frame of Reference
Milton H. Erickson Unpublished manuscript, 1927.


The Ugly Duckling: Transforming the Self-Image
Milton H. Erickson Unpublished manuscript, 1933.




お知らせ:

ミルトン・エリクソンの本質を突き詰めたから分かったことがあります。

 組織のパラドクスを解消し、組織の認識、行動の変化を支援する、
「変化・創発ファシリテーション」のオンデマンド、オンサイト講座を開始いたします。

詳細は、こちらから。


(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html


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