2017年7月26日水曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 207日目


                                                                                                                            
 
  本当に困った時は、

  恣意的にあれこれもがくよりは、

  逆的的に「無知の知」アプローチのほうが上手くいくように思える。

   <ひとりごと>




はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 207日目について書いておきたい。 
 
催眠の現実

 「Hypnotic Realities The Induction of Clinical Hypnosis and Forms of Indirect Suggestion(1976)」著者はミルトン・エリクソンとアーネスト・ロッシ+シーラ・ロッシ。

    ミルトン・エリクソン論文全集の第四巻を読んでいる。そこに含まれていて、今回からの範囲に収録されているのは、「Hypnotic Realities : 催眠の現実」だ。個人的には英語で何度か読んでいる。また、書店でぱらぱらとしか確認していないが邦訳が出ている。

 そのため、ここの部分の読み方についてはルール変更して興味深いと思ったメモだけ記載しておくことにしたい。

・・・・・・・・・・・

 今日のところは、以下。ある意味、技法がモザイク状につらつら書かれている。

 直線的因果関係で理路整然と物事を見るのではなく、円環的因果関係で相互に色々関連しているということを考える練習としてはありなのだろう。内容の一つひとつ説明するとウンチクが長くなって、論文そのものより長くなりそうなのでインデックスだけ書いておきたい(笑)。

・Early Learning Set
・Truism as the Basic Form of Hypnositc Suggestion
・Internal Imagery
・Relation of Consciousness and Unconscious 
・Unconscious Functioning: Allowing the Conscious Mind to Withdraw
・Eyelid Flutter: Limiting Internal Responses
・Proving Alterd State
・Downgrading Distractions
・Implication and illusory Freedon in the Dynamics of Suggestion and that can be whatever your unconscious mind desires.
・Not Knowing , Not Doing
・Implication
・Implication and Time
・Rapport
・Sign of Trance
・Ethecal Principle
・Body Orientation on Awakening from Trance
・Perceptual Alterations: Eye-Fogging Phenomenon
・OBSERVATION AND ERICKSON'S BASIC APPROACH
・Exercises in Observation
  
 
随考

 ―― 読みやすさの秘密は何だろう? ――

  ミルトン・エリクソンとアーネスト・ロッシの掛け合い漫才を読んでいるようで非常に面白い。「Hypnotic Realities :催眠の現実」の印象だが、初期のエリクソンの論文と比較すると、格段に読みやすい。そこで、理由を3つ推測してみた。

 理由の一つは、これがダイアローグ形式で行われているからだろう

 やはり双方向のダイアローグというのは簡単そうに見えて深みがある。さらに、ロッシが(心理学はわかっているが、催眠はからっきしの)素人代表のような立場で質問する。それにエリクソンが相手のレベルにあわせて分かりやすい説明をする。相手の言葉から分かる概念を使ったり、相手の生活の中にあるメタファーを使うという具合だ。こういった問答が何回か繰り返される。もちろん、この時のロッシは、既にテンプル大学の心理学の博士号持ちなので、読者の視点から分かりやすいように意図的にそう振る舞っているのは明らかだ。これも後述する「無知の知」アプローチなのだろう。また、技法、特に抽象的な言語パターンが具体的に書いてある(笑)。

 また、二つ目の理由は具体的な技法がモザイク状に書かれているからだろう。

 エリクソンから引き出された、具体的な技法がまるでポスト・イットに書いて、あまり整理されずに壁に貼り付けたような形式でモザイク状に書かれている。反対の言い方をすると、コンサルタントがもれなくダブりなく抽象度を併せてロジック・ツリーで整理するような形式にはなっていない。ただ、モザイク状に展開するのもありだ。冗長である繰り返されるパターンを楽しんだり、自分で新しい関係を見つけられるからだ。これも、ゆるくしか整理されていないモザイク状の構成故なのだろう。エリクソンの技法をビュフェ形式で美味しそうなところから、どんどんつまみ食いするような感じで読んでいける。だから、途中少しくらい分からなくても、飛ばして次のテーマを読みどんどん先へ進める形式になっている。

 また、3つ目の理由は「無知の知」アプローチが示唆されているからだろう。

 「Hypnotic Realities」では、間接暗示がひとつの主題になっている。つまり、意識にのぼらないやり方で示唆をする。それとなくほのめかすというやり方だ。また、色々なところに「無知の知」アプローチが散りばめられているようにも思う。「無知の知」アプローチとは、「私は自分が何も知らないことを知っている」というアプローチだ。つまり、「あなたの意識には分からなくても、あなたの無意識は多くのことを学んでいます」というような暗示でもある。これにより肩の力を抜いて自然体で起こることを観察できるようになる。吉川英治の「我以外皆師」に通じるところがあるだろう。何も知らないことを自覚できていれば、誰からでも、何からでも学ぶことができるからだ。

 この逆のアプローチは、「私は何でも知っている」というアプローチだ。このアプローチも分からないではない。コンサルタントや各種国家資格クラスのプロフェッショナルに相談する時は、クライアントはこれを期待しているからだ。確かに、医者や公認会計士や弁護士に「私は実はよく分かっていないのです」と言われたらクライアントは不安になるだろう。

 しかし、こういったアプローチにも盲点はある。例えば、理論や経験はあっても未来の新しいプロジェクトが実際に100%成功するわけはないからだ。未来に起こることは誰にも分からない。だから、理論的なことを考えるにはよくても、未来が理論や経験の延長上にあり、現実を理論や経験に当てはまるやり方は、不測の事態や不確実性のあるプロジェクトでは案外脆い。もちろん、プロフェッショナルはこれは分かっていて厳密に前提条件や範囲を限定している。逆にいうと直線的因果関係が成立する条件でのみ「私はなんでも知っている」という立場でアドバイスをしていることになる。

 しかし、実務としてのコーチングやプロジェクトやコンサルティングはエリクソンの心理療法に似ている。つまり、今ココから利用できる資源をみつけ、不確実性を含む未来に理想の何かを作り出していく営みだ。だから逆説的だけれど「私は何でも知っている」というアプローチは過去の延長の固定化された枠組みで観察することになり、実は未来の不確実性にしっぺ返しをされるようなことも少なくない。やはり固定化された枠組みでは盲点があるからだ。
 
 そう考えると、「Hypnotic Realities 」は、「私は自分が何も知らないことを知っている」というアプローチで読むのがよいのだろう。たとえ前提の知識があってもだ。そうすることで、現実を現実として観察することができるようになる。この観察による素朴な疑問が大きな発見につながるように思う。エリクソンの著作にはこういった面白さがある。

 以上、勝手に推測してみたが、当たらじとも遠からずというとこではあるだろう。


7月26日の進捗、1632ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 61.6%)


Volume IV
INOVATIVE HYPNOTHRAPY


Hypnotic Realities The Induction of Clinical Hypnosis and Forms of Indirect Suggestion by Milton H. Erickson, Ernest L. Rossi & Sheila I. Rossi With a Foreword by Andre M. Weitzenhoffer



お知らせ:

ミルトン・エリクソンの本質を突き詰めたから分かったことがあります。

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(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html


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