2017年7月18日火曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 199日目


                                                                                                                            
 
  催眠って、

  単に心身状態を引き出して利用することだからだ、

  催眠現象を引き出してなんぼ、役立ててなんぼ、ということだな(笑)。

   <ひとりごと>




はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 199日目について書いておきたい。 
 
母親支配の衝撃的な打破

 「A Shocking Breakout of a Mother Domination(1936)」著者はミルトン・エリクソン。出版されなかった原稿。

 家族療法の元型として見ると更に面白い。

 クライアントはX医師。精神分析を受けたが拉致があかないのでエリクソンのもとを訪れる。簡単に言うと、X医師は結婚してからも母親が異常なほど世話を焼き、X医師の家族のルールを決めている。要は、少し異常なほどの子離れ出来ない母親に手を焼いているというような状態だ。

 この子離れ出来ないできなくて困り果てているX医師にエリクソンが手を貸す。

 おおよそこんな物語だ。
 
 
随考

 ―― 催眠の誤解 ――

 エリクソンの論文を読んでいて中学2年頃のことを思い出した。それは、学校のテスト中に、ベートベンかバッハのある特定の曲を頭の中で想像で鳴らすと少し深いトランス状態に入れるようになったことだ。もちろん、音楽は想像であって、実際の音楽を聞いているわけではない。これは、サジェストペディア関連の本に書いてあったことを試していた時の出来事だ。当時、エリクソンの存在など知るよしもない。だから、現在から振り返ってこの時のことを思いだすと、偶然にも自己催眠による催眠現象が引き出されていたことが分かる、という具合だ。もっとも、本来はサジェストペディアでは自己催眠に入らないように行わなければいけないらしいが・・・・(笑)。

 風邪を引いて腹痛や偏頭痛で試験受けたことがあった。この時もこの方法を試したところ、テスト中に痛みはほとんど気にならなくなった。催眠現象としては感覚消失が引き出されていたということだ。また自然と時間歪曲を使っていたようにも思う。点数は良かったがテスト時間がとにかく長く感じた。その意味で、エリクソンの定義からするとトランス状態は日常で誰でも経験する催眠現象を伴った心身状態ということだ。

 トランス状態によって引き出される催眠現象は日常でも仕事の場面でも活用可能だ。例えば、本を読む時、記憶増進の状態を引き出す、臨場感を上げるには正の幻覚(Positive Hullsination)でその場面を想像してみる。あるいは、出張で新幹線に乗っている時、その時間を短く感じたければ時間歪曲の時間圧縮の状態を引き出す、長く感じたければ時間延伸の状態を引き出す、という具合だ。もちろん、催眠を何か魔法のようなものだと思ってはいけない。単に、催眠下の心身状態で引き出される催眠現象を利用するだけだ。

   ネットに落ちている「Stages of Hypnosis」というドキュメントのマイケル・ヤプコの引用で―――「催眠についての13の誤解」―――というところを参照すると面白い(文中では14となっているが、内容は13しか書かれていない)。

 ヤプコは学術系の人なので、ネットで吹聴されている大げさな表現と比べると実証にもとづいているために案外冷淡だ(笑)。要は、心理療法のように恒久的に認識や行動を変化させるには別途、催眠とは違う正真正銘の心理療法の介入が必要だということだ。エリクソンの場合は、意識を低下させた状態でのクライアントの見立て、自然と出て来る催眠現象の観察、その催眠現象のカウンターとなる別の催眠現象の引き出し、のような形式で催眠を使っていることが多いように思う。当然、そこで認知あるいは行動介入を行う。

 以下を読んでみる。

誤解1:催眠は良いものである。
答え1:催眠はよいものではない。(悪いものでもない)。催眠それ自体は人を治すこともない。ただし、苦痛を減らし、治療を促進できる強力な可能性を秘めている。

誤解2:催眠術は催眠術師のパワーが必要である。
答え2:催眠療法は催眠術師とセラピストの協力的な取り組みである。また、クライアントの協力なしには催眠は起こらない。

誤解3:特定のタイプの人たちだけが催眠にかかる。
答え3:人が催眠にかかっているかどうかの議論があるが、一般的に低い催眠感感受性の人から高い催眠感受性の人まで居ることが知られている。誰でもなにがしかの催眠状態は経験できるが、個々人のすべてが同じ深いレベルの催眠状態を経験することはできない。

誤解4:催眠にかかる人は心が弱い。
答え4:この誤解は小説や映画な描かれている催眠術師のイメージに基づいている。催眠療法を受ける能力は、特定の性格の欠陥または負の属性とは関係ない。さらにクライアントはそれぞれの意思を持ち、事実上すべての人が自発的または非公式に催眠状態に定期的に入る能力を持っている。

誤解5:一旦催眠がかけられるとそれに抵抗することはできない。
答え5:この誤解は、催眠術師がクライアントの意思を支配し、その能力に一度負けてしまうと無慈悲にも永遠に眠れるという誤解にもとづいている。
 催眠療法は、クライアンと催眠術者との間の相互作用であり、ある望ましい治療のゴールを達成するための相互の力と信頼に基づいているため、クライアントは催眠か覚醒の何れか経験するか否かを自ら選択することができる。

誤解6:催眠では自分の意思に反して何かを言うか、行うことができる。
答え6:洗脳やその他不都合なことに催眠が使用されているのは事実だ。しかし、臨床催眠においては、臨床家とクライアントの関係は相互責任と説明責任によって結ばれている。実際には、臨床家はクライアントが受け入れても拒否してもどちらでも問題ないように暗示を行う。

誤解7:催眠をかけられることは危険である。
答え7:催眠それ自体は有害ではない。ただし、セラピストの能力不足で、クライアントの心の複雑さを理解していないか、治療されつつある状態をしらないか、クライアントへの尊敬の念がないことが有害になることはあり得る。

誤解8:クライアントは催眠療法士に依存するようになる。
答え8:治療ツールとしての催眠それ自体はセラピストへの依存を促進しない。優れた臨床家は、治療の最終的な目的が、クライアントの自立と非依存を助けることを知っている。

誤解9:催眠は行き詰った状態である。
答え9:催眠は(知覚の)注意が集中した状態で、クライアント自身によって制御され、クライアントはいつでもその経験を終了することを決めることができる。

誤解10:催眠状態にあるとき、眠っているか意識のない状態にある。
答え10:トランス状態にある時クライアントは一般的にリラックスしている状態を経験するかもしれないが、その人は眠ってもいないし、意識がない状態でもない。催眠状態にある人はトランスの深さにかかわらず、ある程度の意識を持っている。

誤解11:催眠自体が心理療法である。
答え11:催眠それ自体は治療ではない。それは、他の治療法の補助として使われるツールである。催眠が補助的介入として使われる時、臨床催眠もしくは催眠療法と言われる。その名前にもかかわらず、催眠自体は治療法ではなく特定の学派に属しているわけではない。治療効果を高めるための補助として使用される。

誤解12:催眠を経験するためにはリラックスしなけれならない。
答え12:催眠は(知覚の)注意が集中して状態である。身体的なリラックス状態は催眠が起こる前提条件ではない。ある人は、バイクに載っているような身体が活動している間も催眠状態にある。

誤解13:催眠で記憶をすべて正確に思い出せる。
答え13:心は、コンピュータのように経験をすべて記憶し、後でそれを正確に思い出す、という形式では機能しない。記憶は動的に(あることないことを)再構築するプロセスで動く、したがって記憶は信用できない可能性がある。催眠で事実に正確な記憶を思い出せるわけではない。

 最近の The American Journal of Clinical Hypnosis に寄稿することを考えると、「エリクソン催眠、あるいはエリクソン派催眠」という用語は定義をしてそれを使う必然性がない限り受け付けない。また、「催眠療法 Hypnotherapy」という用語は催眠は心理療法ではないので受け付けない、といって制限があったと記憶している。

 何れにしても催眠は催眠現象を引き出し利用するのが目的であって、催眠それ自体に心理療法的な効果を求めてはいけないということなのだろう。最近、米国だと認知行動療法の介入を催眠下で行ったりということがあるようだ。このあたりに書いてある。

 もっとも、日常の場面でも仕事の場面でも、自分でトランス状態を引き出しその催眠現象を都合よく使う分には自由だし、結構役に立つ。

 
7月18日の進捗、1568ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 59.3%)


Volume IV
INOVATIVE HYPNOTHRAPY

A Shocking Breakout of a Mother Domination
Milton H. Erickson Previously unpublished manuscript, circa 1936.




お知らせ:

ミルトン・エリクソンの本質を突き詰めたから分かったことがあります。

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(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html


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