2017年7月4日火曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 185日目


                                                                                                                            
 
  7月4日は、ベイトソンの命日。

  今日は、ベイトソンの著作でも読もうと思う。

   <ひとりごと>




はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 185日目について書いておきたい。

神経プロセスの反転による早漏の催眠療法

「Psychotherapy Achieved by a Reversal of the Neurotic Processes in a Case of Ejaculatio Praecox(1973) 」著者はミルトン・エリクソン。

 早漏のクライアントだが、用いた方法は頻尿の農夫のそれと非常によく似ている。エリクソンの療法のパターンを少しメタの視点で観察してみると、それぞれの事例ので共通点が見えてくるという具合だ。

 この論文でエリクソンは、心理療法におけるクライアント症状や行動の一般的なパターンを利用することを利用することの重要性を繰り返し強調している。この実際の病状を含むクライアント自身の反応パターンおよび行動を使用することにより、治療への抵抗が大幅に排除され、治療の受け入れが促進され、より迅速かつ十分に治療に影響を及ぼす可能性がある、と述べている。実際、クライアントの治療を試みる場合、行動の変化や矯正ではなく、努力の方向転換である時に、クライアントがそれを不合理に思うことが多い。興味深い洞察だ。

 さて、「Hypnosis in Clinical Practice: Steps for Mastering Hypnotherapy」は非常に良い本だ。著者の一人のモーリー・ディレイニーは本書でエリクソンから直接指導を受けたと書いているが、この本をこの論文を見てみるとエリクソンのメタ・パターンというのが見えてくる。

 エリクソンは普通に面談をする。要は何が気になっているのか?を普通の質問として聞くという具合だ。ここで、クライアントが意識的に話した症状というのが浮かび上がってくる。主に、行動や感情の問題だ。

 次にクライアントを軽いトランス状態に誘導する。恣意的に退行させるとかそういったやり方ではなくごく自然にということだ。そうすると催眠現象が出て来る。カタレプシーや乖離とかそういった現象ということになる。過去のある出来事が気になっていると退行してそれを思い出す場合もある。これが無意識に対する見立てということになる。要は、恣意的な意識を弱めて無意識の反応を見立てるという具合だ。

 次に、エリクソンは自然に引き出された催眠現象に当てる別の催眠現象を引き出す。例えば、過去の嫌な記憶の健忘などを引き起こす現象だ。この事例ではこの健忘を使う。今度は健忘を意図して引き出すように試みる。原因を分析するというよりは、よくない症状を緩和するための別の症状を当てるという感じになる。ここでは、健忘をリソースとして使う。また、後催眠暗示を使いトランスが覚めた後も効果が継続するように試みる。

 おおよそ全体の流れはこのような感じになる。こういった枠組みで今日の論文を読むとまた色々なことが分かってくる。

 これが何の役に立つのか?一般的な問題解決でも原因分析を行うより、そこで有効なリソースを見つけて、それを問題にぶつけてみるのもありだと分かってくるのは面白い。特に、人の認識や行動に起因する問題の場合はこういったやり方は有効だろう。


随考


――7月4日の独立記念日に――

  7月4日といえば、米国の独立記念日だ。普通の日本人は関係ない話のようにも思う。うっかり強調するとアメリカかぶれと思われるリスクもある(笑)。

 しかし、興味深い話もある。幕末の志士である久坂玄瑞や中岡慎太郎らは、米国初代大統領のジョージ・ワシントンを「攘夷の志士」であり、仲間と思っていたことだ。つまり、独立戦争は英国への攘夷戦争であり、米国人のワシントンは攘夷の志士である、という具合だ。その意味、人間は共通する物語を見出すと共感が芽生える生き物なのだろう。

 だから、米国の独立戦争は攘夷の志士、ひいてはその後の日本の歴史に少なからず影響を与えている、といっても良いだろう。

 江戸幕府が英国でもフランスでもロシアでもなく米国と最初に日米和親条約を結んだのは不平等と分かっていても意味がある話だ。最初の条約が英国だったら身ぐるみ剥がれている恐れもあったからだ。だから発展途上にあってノコノコと日本にやってきた米国と条約を結ぶ。その後、他国とも条約を結ぶが、外交上の不平等条約の解消がその後日本の外交テーゼとなる。また、米国とは、日露戦争後の調停にセオドア・ルーズベルト動くなど比較的よい関係が継続することになる。

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―― 7月4日はベイトソンの命日 ――

 さて、7月4日は英国人の人類学者のグレゴリー・ベイトソン(1904-1980)の命日でもある。心理療法家で精神科医のミルトン・エリクソン(1901-1980)の心理療法の技法に第二次サイバネティクスを持ち込み、その後のエリクソン派生の短期療法の発展に寄与した。

 暗黙知としてのミルトン・エリクソンの「治療的ダブル・バインド」をグレゴリー・ベイトソンは「統合失調症的ダブル・バインド」として形式知化、理論化した。ミルトン・エリクソンとグレゴリー・ベイトソンはある意味二重らせんのDNAのように表裏一体の関係でもある。

 エリクソンの技法が家族療法へ応用されているのもベイトソンの功績でもある。要は、家族を生命を持ったシステムとして捉えこの中にある結ばれあうパターンを変えることで無関心をよい方向に導いたり、対立による分裂を防ぐ方法に理論を与えたということだ。もとは、1930年代にニューギニアで行ったイアトムル族へのフィールドワークがベースになっている。この枠組みを通してみるとエリクソンも最終的にクライアントを取り巻く人間関係の強弱を見ていることがわかる。

 時は流れて、ベイトソンは、1970年代はカリフォルニア大学サンタクルーズ校のクレスギー・カレッジで教鞭をとった。同地の旅行記についてはこのあたりで書いた。

 晩年は、サンタクルーズから南のビッグサーにあるエサレン研究所で過ごし、病状が悪化した後に1980年7月4日にサンフランシスコの禅センターに移送され、そこで亡くなる。同年の3月25日にはエリクソンがなくなっているので、その後を追うようなかたちで2人の巨人は巨大な足跡を残してこの世から居なくなった。

    ベイトソンの家系は英国ケンブリッジあたりに生息する無神論の家系である。これは英国がキリスト教の影響を受けない人に自由に研究させるという知恵でもあるのだろう。だからベイトソンが禅センターでなくなったという関連もある。ベイトソンがキリスト教の影響を受けずに自由気ままに様々なことを研究できたのはこのあたりに秘密がありそうでもある。

    ベイトソンは第二次大戦中は、CIAの前身のOSSに勤務し、ナチスのプロパガンダや日本人の性格などについて研究したと言われている。このあたりは、現在も情報が機密扱いになって公開されていないために詳細は不明である。このあたりはルース・ベネディクトの「菊と刀」からその片鱗を推測することが可能だ。

 つらつらと書いたが、ベイトソンの功績を振り返るという意味で7月4日があるように思えてくる。独立記念日という意味では、エリクソンの技法を旧来の精神分析派からまったく独立させた枠組みと理論を与えたということだろう。ベイトソンの功績を俯瞰するにはピーター・ハリス・ジョーンズの著作がおすすめだ。このあたりで書いた。  
 
7月4日の進捗、1460ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 55.1%)


Volume IV
INOVATIVE HYPNOTHRAPY

Psychotherapy Achieved by a Reversal of the Neurotic Processes in a Case of Ejaculatio Praecox Milton H. Erickson Reprinted with permission from The American Journal of Clinical Hypnosis, April, 1973, 15, 217-222.




お知らせ:

ミルトン・エリクソンの本質を突き詰めたから分かったことがあります。

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詳細は、こちらから。


(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html


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