2017年7月5日水曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 186日目


                                                                                                                            
 
  システムの一部としての現象にいちいち反応することは得策ではないが、

  システム全体を捉まえる手がかりにはなる。

   <ひとりごと>




はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 186日目について書いておきたい。

謙虚:ファンタジーによる再調整を可能にする権威主義的アプローチ

「Modesty: An Authoritarian Approach Permitting Reconditioning Via Fantasy (1950s) 」著者はミルトン・エリクソン。発表されなかった原稿。

 内科医が妻を心理療法に連れてきた。この女性は病的なほど謙虚だ。自己主張をすることがないが、かといって人に従うわけでもない。そのため夫の内科医が妻についてこれまでの経緯について語り始めた。

 内科医は、自分の練習で催眠術を使用していたと述べ、それが有用であると判断したが、他の方法にもっと精通していたという理由から治療では使っていない。しかし催眠に対する理解はある。内科医は、妻が催眠療法を必要としていると確信していたので、これはエリクソンにとって都合が悪いことではないと考えた。

 要約すると、彼の妻は登録された看護婦であり、12年間結婚していたにもかかわらず、妻は非常に控えめであった。この謙虚さは、夫がベッドに入った後でなければ眠るために服を脱がないというものだった。それから妻はすべてのライトを消し、暗闇の中のゲストルーム行って、パジャマを着て、暗闇の中で寝室に入る、という具合だ。

 2年ほど前にこれをやめさせようとして夫が服を脱がせようとしたが、妻はパニック状態になり、頻脈がみられ、無呼吸になり、その後呼吸困難に陥った。多くのヒステリックな行動が続き、私は彼女を鎮静させなければならなかった。夫は妻に謝ったが、症状は続いている。

 ・・・・・・・・

 そのような感じでエリクソンのもとにやってくる。


随考


――催眠現象の見立てと介入――

 ネットにエリクソン財団のディレクターを務めるブラント・ゲアリーの「ASSESSMENT IN ERICKSONIAN PSYCHOTHERAPY AND HYPNOSIS」という論文が落ちていたので読んでみた。ブリーフ・セラピーカンファレンスでの資料だ。内容は、エリクソニアン・アプローチの見立てのやり方ということになる。

 ちゃんとしたエリクソニアンの人が書いた論文なので内容がちゃんとしている。と、いうトートロジーで褒めるループに入ってみる(笑)。本当は当たり前のことしか書いていない。しかし、この当たり前が最も重要だ、ということだ。

 特に面白いと思ったのは、クライアントの問題に関する催眠現象を利用する方法として2つあると述べている点だ。一つは、「コンプリメンタリー」でもうひとつは「アイソモルフィック」だ。

 この前提を考える。エリクソンはクライアントを見立てる時に、腕浮揚などの技法を用いて自然にトランス誘導をする(ことが多い)。もっというと、ここでエリクソンは、恣意的に退行させようとか、恣意的にカタレプシーを引き出そう、と特定の催眠現象を引き出すことはしない、ということだ。結果、これによりクライアント自身の抱えている問題や課題に関連した催眠現象が引き出されるということになる。あくまでも自然にだ。

 この論文にある「コンプリメンタリー」の一つの例として、トラウマ的な経験に関する《年齢退行》が引き出されるという具合だ。《年齢退行》は催眠現象の一つだが、セラピストがそこに恣意的に誘導しているわけではない。《年齢退行》が引き出されているというのが、このクライアントに対する見立て(のひとつ)になる。

 ここで、「コンプリメンタリー」な介入の例があげられている。自然に誘導すると、過去に退行するクライアントに対して、反対(あるいは相補的な)《年齢進行》の催眠現象を引き出すように介入するという具合だ。要は、自然に引き出された催眠現象と相補的な催眠現象を引き出す。こんどは恣意的にだが、これが介入となる、という具合だ。

 もっというと、これ以外に、健忘でトラウマ的な経験を思い出し難くしたり、後催眠暗示で、《年齢退行》ではなく、今ココに集中するような暗示を使うということも介入となる。ここでは、《年齢進行》といった相補的な催眠現象を引き出しているので「コンプリメンタリー」な介入と呼ばれることになる。

 一般的に、催眠というと猫も杓子も「過去へ退行」すればよいという誤ったイメージがある。しかし、少なくともエリクソニアン・アプローチにはこれは当てはまらないということだ。もっとも、現代的な臨床催眠は普通こうなのだが。逆に、見立てをしないで、いきなり恣意的な《年齢退行》を行うような催眠は要注意ということだ。トラウマ的な経験を強化してしまう可能性がある。

 さて、もう一つは、「アイソモルフィック」の例があげられている。この例は催眠現象のひとつである《正の幻覚》としての嫉妬という感情が上げられている。催眠誘導すると日常のある状況をイメージしてこの嫉妬が増幅するという具合だ。ここで、同じ《正の幻覚》の感情として、冷静や落ち着きを引き出してこれに介入しているのが「アイソモルフィック」ということになる。要は、同型のパターンが「アイソモルフィック」ということになる。もっというと、この後、催眠中行ったことを健忘で忘れさせたり、これを後催眠暗示で定着させていくようなことを行う、という具合だ。

 当たり前だが、これは単なる神経現象の話であって、オカルトとはまったく無縁の話だ。ネットにありがちな例として、仮に100歩譲って、自然な催眠現象を引き出した時に、クライアントが前世に居ますと言い張ったとしても、エリクソニアンの場合は、「では、今ココに戻ってきましょう」とか「今ココにもどって少し未来のことを考えてみましょう」というような「コンプリメンタリー」な介入にしかならないことを意味している。

 さらに、システム論から、なぜエリクソンが催眠を使ったのか?を考える。これは、催眠現象を背景にあるもっと大きなパターンを見るための「手がかり」として利用していたのではないか?という推測は可能だ。直接何かの原因分析をするわけではないが、個々のクライアントの催眠現象のパターンを見立てることで、症状に対する間接的な対処方法や介入方法はわかるという具合だ。催眠を介することで利点もあるということだ。

 もちろん、催眠をメタファーと考えれば、機械的でない人間を対象として一般的な問題解決にも応用可能だと考えられるところではある。
 
7月5日の進捗、1468ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 55.4%)


Volume IV
INOVATIVE HYPNOTHRAPY

Modesty: An Authoritarian Approach Permitting Reconditioning Via Fantasy Milton H. Erickson Unpublished manuscript, circa 1950s.



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(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html


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