2017年7月6日木曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 187日目


                                                                                                                            
 
  実行も説明も不可能なスーパーマンの知識や能力も

  SECIモデルを回せば、みんなで、そこそこできるようになる(笑)。


   <ひとりごと>




はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 187日目について書いておきたい。

性的満足への治療的再方向づけ

「Sterility: A Therapeutic Reorientation to Sexual Satisfaction (1950s) 」著者はミルトン・エリクソン。発表されなかった原稿。

 以下からはじまる。

 大学教授の夫と妻は、幸せな結婚の5年目を迎える。お互い愛していたが、子供は忌まわしく持ちたくないと考えていた。彼らはセックスを頻繁にしていた。偶然、男性の精子の研究をしている男性から精子を提供してもらうように依頼された。友人は夫に精子の細胞をつくる機能が欠落していることを告げた。教授は再検査を依頼し再検査をしても同じ結果だった。教授と妻は、そのニュースに喜んで避妊をすることをやめた。

 しかし、教授と妻はますます苛立つようになって、性的な関係が著しく減少した。最後には6ヶ月間に渡り全く性的関係がまったくない状態が続いていた。今日は、エリクソンに心理的な助けを求めた。

・・・・・・

 人間というのは複雑だ。機械と違って機能の有無だけでは説明することはできない。


中絶問題:本当の選択を可能にする無意識の動力学を促進する

「The Abortion Issue: Facilitating Unconscious Dynamics Permitting Real Choice (1950s) 」著者はミルトン・エリクソン。発表されなかった原稿。

 概要は以下、

 クライアントは20代前半の若いカップル。どちらも大学に通っていて、付き合っていた。女性に妊娠2ヶ月であることが発覚する。両者の両親は怒り狂っていて、とても許しがたいと主張している。主張は、「中絶しなさい、さもなければ大学を辞めなさい」。お互い卒業まで1年を残していた。親戚や友人はこのことを恥に思っていて、色々極端な主張がなされた。2人は結婚を予定していたが、大学卒業まではそれを予定していなかった。

 ここに親戚を巻き込んだすったもんだが始まるのだが、両親はエリクソンを巻き込ん中絶をして大学を続けるように頼む。

 これで、エリクソンがどうしたのか?詳細は書かない。
 
随考


 定期的に読み返すと面白い文章というのがある。

 ミルトン・H・エリクソン財団のサイトにあるトレーニングのガイドラインについて書かれた「Guidelines for Training in Ericksonian Hypnosis and Psychotherapy」も定期的に読み返すと面白い文章だ。この文章概要は、このあたりで書いた。

――暗黙知だけ残したエリクソンをどう学ぶのか?――

 前提がある。エリクソンは自身の心理療法の技法を理論化も体系化もしなかった。だから、今でも暗黙知の一部だけが残っているだけだ。つまり「エリクソン派の催眠と心理療法」はほとんど暗黙知でできている。掴みどころのない暗黙知を、何をどんなステップで学べばよいのかを考えるとかなり難しい側面があるという具合だ。ましてや、トレーナーとしてこれをどのように教えたらよいのか、を考えると頭を抱えることになるだろう。

――エリクソンはSECIモデルで学ぶ――

《共同化》からはじめるパターン
エリクソンの知識を獲得する出だしとして、一番良いのはエリクソンの暗黙知の一部を直接学んだ人(たち)から習うことだ。これは、暗黙知を暗黙知として学ぶというやり方だ。簡単にいうと、見よう見まね。伝統芸能の内弟子のように師匠の箸の上げ下ろしから言葉遣いまで、四の五の言わずに徹底的に手本としてみるというような感じになる。SECIモデルではこのプロセスを共同化と呼ぶ。

《表出化》からはじめるパターン
 共同化には劣るのは明らかだが、もう一つは、暗黙知を形式知に還元して学ぶというやり方だ。もちろんこれには前提があってエリクソンの暗黙知が表出化された形式知を学ぶ、ということになる。表出化もSECIモデルのプロセスの一つだ。本来の表出化は暗黙知を形式知化することだが、エリクソンの初心者には難しいためここでは、誰か他のエリクソニアンによって表出化された文章やフレームワークなどの形式知から学ぶ、のように形式知を形式知として学ぶことを出だしとして考える。学校の勉強というのがこれだ。

 形式知に分解すると良いことがある。一つは、学ぶ範囲がある程度確定できることだ。それにより誰でもステップ・バイ・ステップで学べるようになることだ。さらに、教える側のほうも形式知として言葉やフレームワークとして教えられるので都合がよいということになる。もちろん、悪いところもある。これは要素還元主義であり、単なる「お勉強」になってしまう危険があることだ。「お勉強」した気持ちにはなれる、しかし役に立たない知識だけが増えていくことにもなりかねない。もちろん、SECIモデルを回すことでこれを防ぐことができる。

《連結化》へ進む
 文章やフレームワークのような形式知があると、その知識と知識が簡単に組み合わせられるようになる。SECIモデルの連結化だ。人は言葉や記号を用いて抽象的な記号操作が可能になっている。ある意味、思考を深めることにもなり、反対に思考をこねくり回すことにもなり得る。このあたりは案外センスが必要だ。
 
《身体化》へ進む
 こういった技法はおおよそコンテクスト依存になっている。つまり、その状況で何をどのように使えばよいのかの判断を実践で身につける必要があるということだ。要は身体を使い練習し実践してみるということだ。これは、形式知を身体化して暗黙知にするSECIモデルで言う身体化して現場であれこれ使ってみることで可能だろう。知識は身体化して実践することで初めて自分のものとなる。また、実際に現場で役に立たないフレームワークを振り回すことを防ぐことができる。

《共同化》へ戻る
 共同化に戻って、身体化された暗黙知を暗黙知として共有するプロセスということになる。SECIモデルの共同化に戻ってくる。これは、グループで言うと「阿吽の呼吸」で何かを行っているというような状態になる。これによって暗黙知を暗黙知として学ぶことが可能になる。


   さて、色々書いてきた。ここで、「暗黙知を暗黙知として学ぶほうがよいのか?」あるいは「暗黙知を形式知として学ぶほうがよのか?」と二項対立で聞いてはいけないことが分かるだろう。要は、出だしはどちらからでもよく、重要なことは SECI の知識獲得のプロセスを回すことだからだ。知識は場があり、人と人との関係の中で暗黙知と形式知をいったり来たりすることが生まれる、ということだ。

 ある意味、暗黙知を暗黙知して学ぶことだけに閉じてはいけない、案外学びは浅い。逆にいうと、暗黙知も一度言語化して、知識を連結して、そしてさらに身体化するというように言葉やフレームワークを介することでその知識は急速に進化していくことも分かる。その意味、エリクソン財団の形式知化された技法のガイドラインの役割は案外大きい。一人のスーパーマンの知識や技法だったにしても、おおよそのところは誰にでも学べるようにできるからだ。

 さて、昔話になるが、総務省のCIO育成のプロジェクトを行っていた時に、同じようにな理屈でキャリアのお役人にSECIを提案した記憶がある。いずれにしても、SECIは一般的な人財育成でも使えるし自分や自分のチームが知識を得ながら成長していくモデルだということでもある。
 
7月6日の進捗、1476ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 55.7%)


Volume IV
INOVATIVE HYPNOTHRAPY

Sterility: A Therapeutic Reorientation to Sexual Satisfaction Milton H. Erickson Unpublished manuscript, circa 1950s.

The Abortion Issue: Facilitating Unconscious Dynamics Permitting Real Choice Milton H. Erickson Unpublished manuscript, circa 1950s.


お知らせ:

ミルトン・エリクソンの本質を突き詰めたから分かったことがあります。

 組織のパラドクスを解消し、組織の認識、行動の変化を支援する、
「変化・創発ファシリテーション」のオンデマンド、オンサイト講座を開始いたします。

詳細は、こちらから。


(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html


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