2017年7月8日土曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 189日目


                                                                                                                            
 
  モノローグ、ダイアローグ、トライローグ、メタローグ

  これをつかって多重記述する。

  物事が全体論的かつシステミックに見えてくるのは面白い経験だ。

   <ひとりごと>




はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 189日目について書いておきたい。

潜在的な同性愛:催眠よる人格の探求

「Latent Homosexuality: Identity Exploration in Hypnosis (1935) 」著者はミルトン・エリクソン。発表されなかった原稿。

   クライアントはソーシャルワーカーのX嬢、仕事でエリクソンの配下にある、そして催眠のデモンストレーションの被験者として手伝いをしていた。この女性が(エリクソンとは別の人の元で)性格の問題で精神分析の治療を行うことになった。この女性は、敵対的で周りとうまくやっていけず、ウツ傾向にあった。

 その「古典的」精神分的を毎週5時間、1年間受けた後、この女性は、土曜日の朝にエリクソンとの面接を求めた。理由は、この女性が分析にかけた1年をばかな抵抗をして浪費したということだった。この女性は、エリクソンに強制的に催眠導入してもらって、仕事に戻れるように暗示をかけてもらうように言った。資金が枯渇してきたからだ。

・・・・・・

 このような感じでこの少しややこしいストーリーが始まる。結構初期の論文でもあり、エリクソンも30代半ばの駆け出しのころだ。

精管切除:心理療法による再方向付けの詳細

「Vasectomy: A Detailed Illustration of a Therapeutic Reorientation (1950s)」著者はミルトン・エリクソン。発表されなかった原稿。

 クライアントは30代の大卒女性。専門職の男性と結婚しており3人の子供がいる。

 この女性は心理療法を求めた。理由は、夫が「性的強迫観念」と読んでいるものが2年ほど前から生活を支配するようになっていたからだ。この脅迫案件は彼女が新聞、雑誌などを読んで知っていた飽くなき好奇心から起こっていた。

 この夫は夫婦生活を送るようになってからこの妻による「絶えず話される話」を理解することができなかった。夫の結婚前の経験も聞いており、妻であるこの女性は夫に不倫の疑いを持っていなかったし、自ら不倫をしたとも思っていなかった。


 しかし、妻は何人かの女性が夫に関心を持っていることを夫を通して確信した。そして、外で浮気をしているのではないかと示唆されていた・・・・・つまり、夫がどこか外に女をつくって浮気をしているに違いないというのがこの妻の「性的脅迫観念」だ。

・・・・・・・・
 こんな感じで話がはじまる。

 個人的にはこのブログのテーマからは離れるような感じがしないでもない。谷崎潤一郎や渡辺淳一がこのプロットで小説にしたらきっと面白い少し倒錯した恋愛ものに仕上げるのだろう。
 
随考

  物事を全体論的かつシステミックに観察し、理解することに興味がある。
 
 もちろん、 物事といっても、家族、グループ、あるいはチームなど生命を持った人間が関係した組織の問題なので案外ややこしい。この問題を観察、記述し、解決のために介入するためにミラノ派家族療法の円環的質問に行き着いた。ミルトン・エリクソンやMRIから派生した方法論だ。企業組織の問題や課題を解決するのに必須である人類学的知見も得られる。地味だが、そら恐ろしいほど役に立つ。逆にいうと派手な方法論は所詮格好だけで終わってしまっていることが多いようにも思う。

 ミラノ派家族療法の影響のためか、対話や質問を考える際の序数を少し意識するようになった。具体的には1を表す Mono、2を表すのDia 、3を表すの Tri、超越した視点を表す Meta の4種類だ。




この関係性における会話を考える。具体的には以下だ。

  ❶モノローグ   (Monologue)
  ❷ダイアローグ (Dialogue)
  ❸トライローグ (Trilogue)
  ❹メタローグ (Metalogue)

❶モノローグは、舞台の上でのひとり語りのように、自分で自分に質問、対話する形式だ。問題や課題を自分のこととして状況を身体感覚を持って経験している。これを主観的に語り始めるのがモノローグだ。経験していることと、経験したことをコトバで記述するのは違うモードの話になる。一般意味論でいう領土(実態)と地図(コトバ)の違いだ。その意味、ここでは実態とコトバの齟齬に気づくのは重要だ。構成主義的には、「コトバが世界をつくっている」ところがあるが、実態を反映せずにコトバだけで妄想しすぎるのは問題がある。

 さらに、関係性について考えるとここにはモノアディック(Monoadic) な関係がある。ミラノ派家族療法では、自分で何を問題と思っているのかの質問で始まる。できるだけ感覚や気持ちに正直に答えるのもポイントだ。視点は低いがそれだけに臨場感はましてくる。余談だが、ここには自分の意識ー無意識の関係が入ってくるだろうが、ひとりでも意識ー無意識の2つの関係が現れるので、下のダイアローグということになるのだろう。

❷ダイアローグは相手との対話だ。相手の話の内容に同意できなくても自分と違う枠組みで違うことを考えていることくらいは分かるだろう。元々コトバによるコミュニケーションは混乱との戦いであるのは言うまでもない。同じコトバを使っていてもそれに対する解釈や反応はひとそれぞれだ。

 話の内容以上に、お互いの関係性というのが重要になってくる。関係性について考えるとここにはダイアディック(Diadic )な二者間の関係がある。忖度(Mind Reading)をして相手の視点に立つことも入ってくるだろう。相手の視点はあくまでも推測でしかないが、あえて推測を言挙げすることで見えてくるものがあるということだ。

 さらに、ベイトソン風に言えば、この2者の関係として、コンプリメンタリーとシンメトリカルという基本的には2つのパターンの関係性が入ってくるだろう。一般的にコンプリメンタリーが弱まると、お互い「興味がない」という無関心が強まり、シンメトリカルがエスカレーションすると「売り言葉に買い言葉」のように熱い戦争になる。過ぎたるは及ばざるが如し、普通の人間関係はおおよそこの間で収まっていることが多い。この関係性を理想的にはどのようにしたいのか?案外これが鍵になってくる。ミラノ派家族療法では、ダイアディックな円環的質問でこれを扱う。

❸トライローグは鼎談での自分の視点、関係性について考えるとトライアデック(Triadic)な関係がある。これも、問題や課題を自分たちのこととして状況を身体感覚をもって経験している状態だ。主役、準主役、脇役とキャラクターが動き出し、よくも悪くも経験が臨場感を伴って非常に生き生きしたものとなってくる。

 もちろん、この場合は、三人寄れば文殊の知恵という具合に自然に知恵が湧いてくることもあるだろうし、別の切り口として、他の2人の会話を(意識していない)観察者として(間接的に)観察することで無意識に「人の振り見て我が振り直せ」ということに気づくこともあるだろう。ミルトン・エリクソンのマイフレンド・ジョン・テクニックもトライアローグの視点から見ると、また別ののもが見えてくる。さらに、ミラノ派家族療法ではトライアディックな円環的質問でこれを扱う。

メタローグは、グレゴリー・ベイトソンのように課題や問題について、その枠組みを飛び出したメタの観察者の視点から説明している形式になる。『風姿花伝』の離見の見のような視点だ。もちろん、第一次サイバネティクスの無機的な観察者のように観察している方は、観察されているほうに影響を及ぼさないと考えるか、あるいは第二次サイバネティクスのように観察者は生きていて、観察されるものは相互作用して影響を及ぼすと考えるかは面白い違いだろう。前者は映画の観客で、後者はライブの舞台の観客のようなイメージだ。さらに、ミラノ派家族療法では、意味/説明を尋ねることでメタローグを扱う。

   それで、どれがよいのか? 

 いやいやそういった二項対立的な考えはよくない。要は同じ状況でもいくつかの形態をつかってベイトソン風に二重記述、多重記述してみるというのがよいのだろう。同じ状況をモノローグで表現してみる。ダイアローグにしてみる。トライローグにしてみる。そしてメタローグにして多重記述してみるという具合だ。おそらくそれぞれの細かい違いに気づいてくるはずだ。もちろん、こういった視点の切り替えと主観的経験あるいは関係性の変化について、あまり意識しないで記述してもらうのがミラノ派家族療法の質問方法ということになる。

 同じ物事も二重記述、多重記述してもらうことで、より全体論的によりシステミックに身体感覚をもって腑に落ちる形式で理解できるようになることを助ける。また、ミルトン・エリクソンのように催眠を使わなくても組織に対する見立てや介入が可能になる。
 
 
7月8日の進捗、1492ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 56.3%)


Volume IV
INOVATIVE HYPNOTHRAPY

Latent Homosexuality: Identity Exploration in Hypnosis Milton H. Erickson Unpublished manuscript, 1935.

Vasectomy: A Detailed Illustration of a Therapeutic Reorientation Milton H. Erickson Unpublished manuscript, circa 1950s.




お知らせ:

ミルトン・エリクソンの本質を突き詰めたから分かったことがあります。

 組織のパラドクスを解消し、組織の認識、行動の変化を支援する、
「変化・創発ファシリテーション」のオンデマンド、オンサイト講座を開始いたします。

詳細は、こちらから。


(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html


記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com

https://www.facebook.com/Okirakusoken-236949276723679


――

0 件のコメント:

コメントを投稿