2017年7月21日金曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 202日目


                                                                                                                            
 
  今日の事例は、「ビリギャル」と「すきっ歯」。

  分かる人には分かる暗号通信(笑)。  

   <ひとりごと>




はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 202日目について書いておきたい。 
 
心身症を伴う歯科の問題の催眠療法

 「The Hypnotherapy of Two Psychosomatic Dental Problems(1955)」著者はミルトン・エリクソン。

 今日は、歯にまつわる事例が2つ。

 一つは、「ビリギャル」もう一つは有名な「すきっ歯の女性」。

 前者は、女子高生、授業で催眠のことを知ってエリクソンのもとに押しかける。この女子高生の悩みは成績が悪いことに加えて、巨大な前歯が1本しかない。それを気にして、カフェテリアでは食事をしない、人前で笑わないなど悩みを抱えている。エリクソンとのセッションの内容は、催眠下で歯にまつわるスラング、寓話、物語、冗談など1本しかない歯のことをおもしろおかしく表現する。これが、英国風の英語、スコットランド風などという感じでやっていく。何回かエリクソンとセッションを重ねた後で、高校の先生も驚くほどの「国語力」を身につけていく、いつしか歯のことも気にならなくなっていくという感じになっている。

 もう一つは、秘書として雇われている有名なすきっ歯の女性の話。一人暮らし。この論文ががオリジナルで実はコンサルティングの問題解決のような感じで記載されているだけでも13回ほどのセッションが実施されている。その意味では1回やそこらで問題が解決したのではなくステップを追って進めていることが分かる。

 この女性の目標は、結婚すること、家を持つこと、子供を持つこと。ただし、自分ではそれは絶望的だと思っている。

 また、悩みもすきっ歯だけの問題ではない、本人からの聞き取りで、箇条書きされているのを読むと、本人には申し訳ないが、本当に絶望的になる(笑)。それは、以下だ。

1.上の前歯に間があるすきっ歯
2. 明瞭に話せない(すきっ歯の上唇を気にして)
3.髪が黒く、荒く、まっすぐで、伸ばしっぱなし
4. 貧乳、小さいお尻
5. 太い足首
6.鷲鼻(ローマン・ノーズ)
7.ユダヤ人
8.両親から望まれていない子供として生まれた

 おそらく初対面の印象は、「ダサい!」だ。
 もちろん、エリクソンのすごいところはこれを欠点として見なかったということだ。クライアントの状況を聞き、そして、ゴールの達成のための資源・資質(リソース)としてどのように使えばよいか、というのをクライアントと一緒に考え抜く。

 最終的にはおめかしして職場に生き、水飲み場で気になるあの男性にすきっ歯を利用して水をかけてみなさい、が打ち手になったが、案外そこに至るまでのプロセスは色々あったということだ。その打ち手がきっかけになってすきっ歯の女性とこの男性は恋に落ちる。

 余談だが、実際、初回を除く続く4回のセッションではエリクソンはクライアントから「単におシェべりしているだけでお金が稼げるのですねぇ」とかクライアントから嫌味を言われている(笑)。しかも、このクライアントは極軽いトランスにしか入れない。

 何れにしても面白い打ち手にだけ焦点があたりがちな事例だが、そこに至るまでの解決のプロセスでは色々努力する必要があるということだ。

・・・・・・・・・・・


 
随考

 ―― ミルトン・エリクソンの治療的ダブル・バインド ――

 Youtubeに9ヶ月ほど前にアップロードされたエリクソンの映像があったので見てみた。タイトルは――希望を失った難事例クライアントへの対処に対する答え――。



 エリクソンの論文を読んでいると比較的よく出て来るパターンがある。それはこの映像にもあるように別の医師にかかっており、特に精神分析を続けているクライアントの事例だ。ここでは週5回、5年間精神分析を続けたが、まったく効果がなかったと話されている。 事実だから仕方ないが、個人的にはドヤ顔で間接的に精神分析をディスっているのではないか?と思わないでもない(笑)。 

 さらに続ける。

 クライアントには十分な時間があったにもかかわらず治療がうまくいかなかった、とエリクソンが語りかける。そしてそこからがエリクソンの格好のよいところだ。

 意識ー無意識の治療的ダブル・バインドのパターン―― 意識では誠実だが、無意識では果たしてそうだろうか? ―― をクライアントにつぶやく。このダブル・バインドが禅問答になっていて、クライアントの現状の枠組みを超えた変化を支援するキモになる。

 このあたり今までは日本語の解説書がなかったが、『催眠の現実』が邦訳され、この中に解決があるので、興味があれば一読するとよいだろう。英語だとスティーブン・ランクトンがエリクソン派国際会議で行ったプレゼンテーション資料の中にちょっとした解説がある。

 個人的には、このいぶし銀のような渋い技がエリクソンの真骨頂だと考えているが、相当注意深く観察しないと意識にのぼらないので見逃してしまう。もっとも、本来は抵抗を回避するために意識にのぼり難くしているので、これはこれでよいのだろう。

 余談だが、ある意味弁証法的な治療的ダブル・バインドの理屈やプロセスは日常や仕事の問題解決のコーチングやファシリテーションでも大いに役立つ手法であることは間違いない。


7月21日の進捗、1592ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 60.1%)


Volume IV
INOVATIVE HYPNOTHRAPY

The Hypnotherapy of Two Psychosomatic Dental Problems Milton H. Erickson Reprinted with permission from the Journal of the American Society of Psychosomatic Dentistry and Medicine, 1955, 1, 6-10.


お知らせ:

ミルトン・エリクソンの本質を突き詰めたから分かったことがあります。

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詳細は、こちらから。


(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html


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